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納豆
2020-06-27 23:05:58
3015文字
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ポニーテール
あらダンデくんこんにちは。
ふふっ、今日もいつものお願い、ね。
わかってます、わかってます。
深掘りはしない、でしょ。
ちゃんと約束は守るわよ。
もぉ、折角やってあげてるのにさぁ、いつもお相手さんのこと何も教えてくれないのずるいよねぇ。
今日はどんなの貰ってきたの。
ふむふむ、うわ、え、これ、いやまぁうん、オッケー、凄いのまた貰ってきたね。
お相手さん、貢ぎ方えげつなくない?
これ何かわかってないでしょ。
ずっと思ってたけど、また今回もやってくれたね。
本物の琥珀使ってるし、この細工、半端な職人仕事じゃないからね。
値段聞いたらきっとダンデくん、スタジアムの修繕費に当てたがるだろうね。
ほんとほんと、調べないほうがいいと思うけど、まず0の数が想定外。
もうさぁ、本当に大丈夫なのぉ?
変な人に貢がれてるんならちゃんと断りなね、危ないんだから。
あー、はいはいそんなんじゃないって?
嬉しそうな顔しちゃってさ、ダンデくんもぞっこんなんでしょ、知ってます。
はぁ?ぞっこんじゃないって?
んなわけないでしょ。
何を今更そんな慌ててるのよ。
毎度毎度、こんなに綺麗な髪飾り貰ってきてさぁ、健気に会いに行く度にそれ着けてさぁ、飾り付けて見せに行くんでしょ?
そんなの貴方のために仕立ててきたんですよって言ってるようなものじゃない。
ベタ惚れ、そんなんされちゃ勘違いしちゃう。
相手は堪らないだろうね。
しかもそれを下心なしでダンデくんやっちゃうんだもん。
いっそ可哀想になってくるわよ。
…
ほーらやっぱり自覚なかった。
ほんと、今更だけど照れるの遅いからね。
あっは、ダンデくん耳まで真っ赤。
なぁにぃ?自分のやってる事の重大性がわかってなかったんだぁ。
やっぱりねぇ。
きっとお相手さんは生殺しで毎回お食事誘ってたんでしょうね。
……
え、つけるのやめるの?
やだごめん、揶揄いすぎた、ダメダメダメ、ちゃんと結い上げていこう?
お相手さんきっと残念がっちゃうよ。
えー、恥ずかしいの?
これまで何回飾り付けて会いにいってたくせに、いっそ呆れるわ。
髪飾りをつけていくと喜んでくれるんだってにこにこしてたのは何処のどなたかしら?
うん大人しく挙手していい子ね。
そうよ、ダンデくんよ。
喜ばせてあげたいんじゃないの?
髪アップにするのが特に嬉しいみたいだし、今日もトップにまとめましょ。
はいはぁい、もう聞きませんし揶揄いませんので、私がしたいから最後まで仕上げさせてくださいオーナー様。
怒らないでよダンデくん可愛いんだから。
でもさぁ、ダンデくんも嫌じゃないんなら答えてあげたらいいのに。
彼はそんなつもりないだろうって?
ふぅん、そうかなぁ、こんなもの贈り物しておいて何もないなんて思えないけどねぇ。
ダンデくんは知らないんでしょうけど、髪飾りを送るのってねちゃんと意味があるのよ。
これからも長く一緒にいたい、って意味で贈られることが多いんだって。
ダンデくんは違うの?
……
ふっ、く、っあっはっはっ!なぁにその顔、真っ赤で可愛い!しかもちょっとにやけてない?
やぁだぁ!ごめんってば!ほんとにもう揶揄いません!ほら、髪型もバッチリ!とっても凛々しいね!いい出来!
まぁ、ダンデくんがこのままでもいいって言うなら構わないけど、少しぐらい勇気出してもいいんじゃない?
少なくともお相手さんは、形として好意をわかりやすく伝えて待っててくれてると思うなぁ。
よし、じゃあいってらっしゃい。
今日も素敵よダンデくん。
貴方に似合いの髪飾りだわ。
◆◆◆
待ち合わせに訪れた駅構内、時計台の下に待って寄り掛かっていた。
どっどっと変に脈拍がずれ込む。
ソニアが変なことを言うから妙に意識してしまうではないか。
悶々ぐるぐる脳内を巡る先程までの会話に、ぽっぽっと体が照れに火照っていた。
キバナは、俺との食事の約束を取り付ける度、髪飾りを贈ってくれた。
これをつけたお前が見たいな。
そんな事を素直に懇願してくるから、俺は毎度言葉通りに身につけて行った。
俺はうまく髪をまとめられないからソニアにいつも頼みにいく。
そうして綺麗に整え飾られた姿を前に、キバナはふにゃふにゃ解けた笑みを溢して満足そうに頷く。
彼が全身で喜び花を飛ばす様はひどく可愛くて、それが見たいから俺はいつもいつも最高な状態に整えて会いに行きたくなる。
キバナに喜んでほしい。
俺の行動一つでキミがわかりやすく喜色満面を浮かべることが、こんなにも嬉しい。
キバナの感情をふやかすものが、俺である充足感は果てがない。
深く考えてこなかった。
だから、何も緊張なんてしてなかった。
なのにソニアがあんな事を言うから。
ぽっぽっと熱を持つ頰を両手で抑えた。
引かない熱に、うぁっと変な呻き声が漏れてしまう。
ぎゅうぎゅう引き絞る眉は、眉間に深く溝を刻んで額のあたりまで皺だらけにする。
酷くくしゃくしゃだろう顔に、そうなってしまう現状に羞恥は更に膨らんだ。
キバナが来るよりも前に落ち着かなければ。
ふんすと鼻を膨らませ一気に息を吐き出す。
そうして、ぺちぺち軽く頰を叩いていた。
「だぁんで」
「わっ!」
ひょいっと俺の前に見慣れた穏やかな微笑みが入り込む。
驚き声を上げて諸手をあげる。
万歳状態になった俺を前に彼は、キバナはきょとっとしてから噴き出した。
何その反応、なんて柔らかく声を立てて口元に手を当てる上品な笑みがある。
頭を埋めていた張本人がいる。
いつもなら今日もつけてきたぜなんて俺から声を掛けるのに今はなんだか緊張して声が出ない。
あわあわと唇を慄かせた俺に、キバナは目を瞬かせた。
それから体を離して俺の全身をくまなく眺めてから、ほにゃほにゃ弛み始めた表情にじわじわと体温が上がる。
なるほど、これは、本当に、俺は何も考えてこなかったのか。
腹の奥がもぞつく。
落ち着かない。
キバナはぱやぱやと喜色いっぱいの空気を膨らませる。
うんうんと嬉しそうにも満足そうに頷いて、ゆったり下がる眦は蕩けて甘い蜜にもできていた。
ぶわっと広がる痺れのような感覚は、俺の動きを全部止めてしまう。
「思った通り、ダンデによく似合う」
そんな甘やかな声は、いつものものなのにいつもよりも色付いて聞こえてしまう。
目を見開いてかっと一気に染まる顔にキバナが首をかしげる。
いつも、キミは自分が贈ったもので飾り立てる俺に、どんな気持ちでいたのだろう。
改めて考える内側に俺は俯いた。
正面から見るのが何故だか照れ臭くて、俺は掠れた声に尋ねてしまっていた。
「き、みは、俺をどうしたいんだ」
キバナはそんな俺の言葉にしばし沈黙。
それからふっはと噴き出し俺の顎を指先で恭しい仕草のまま掬い上げた。
くいっと持ち上げられて見つかる赤面のしわくちゃな造りにキバナはどこか満足そうににんまりとした。
そうしてそっと耳元に寄せられる唇は俺だけのために囁く。
「そういう反応、ずっと待ってた」
思い切り反射でその肩を押しのける。
離れた先、キバナはにっこり微笑む。
わなわな唇を震えさせ、熟れてできあがる俺の頰にキバナは勝ち誇ってそこにいた。
「きっと、ダンデが思う通り、大正解だ」
その言葉に俺の中、ぽこりと生まれた感情はきっとそこらに転がる甘やかさでできていたのだった。
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