納豆
2020-05-05 23:26:24
1860文字
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無題

ベタのダさんと人間のキさんのパラレル話

ベタという闘魚は闘争心でその姿を鮮やかな極彩色に彩り上げる。
彼らはその体一つで戦うことで美しさを増す。
その美しさは、観賞用とするにはあまりにも淑やかさに欠けた。
相手を食い殺さんと争う覇気にこそ、その美しさは宿る。
強さは、美麗にできていた。
今日もまた、闘士を前にベタの青年は闘争心を剥き出しに笑う。
舞台の上に二人は並ぶ。
硝子越しに向き合う両者は、張り詰めた空気の中でいた。
水槽に沈むベタは、鰓から細かな気泡を浮かべ、興奮に鰭をゆらゆらと揺らめかす。
メイズの瞳、バイオレットの髪、そして純白に輝く鱗。
この鱗がぎらりぎらりと色付き変わる瞬間を、観客は今か今かと湧きたちながら待ち構えている。
闘士は構える。
この目の前にいるベタを飾り立てるため、闘争の舞踊をご覧に入れよう。
そうとばかりに、腰をずずずと沈めていく。
闘士の後ろ、笛を構えた女が二人、鼓を構えた男が一人控えては息を吸う。
ぽん、男が鼓を一つ打つ。
始まる音楽に合わせ、闘士は大きく一歩踏み出した。
「ダンデ、踊ろうか」
「あぁキバナ、待ち切れないぜ」
視線がばちりと絡み合う。
二人の間、火花が爆ぜた錯覚を多くのものが見たという。
ベタは、今日もまた美しく色を変えるのだ。

みたいなベタのダンデさんと、ベタの闘争心煽って色付けするのが仕事な人間キバナさんのパラレルのお話

魚の体温は低いから触れることはできないけど、ガラス越しに交流を深めていってるのよね
ベタという魚は本来は繁殖期に雌を奪い合うときに雄同士が戦うと色が鮮やかに染まるんだけど、それを繁殖のためではなく純粋な闘争本能だけ切り取って色付けするのがキバナさんのお仕事で、人間だから水の中に入るわけにもいかず、ベタの争いを模した舞踊で水槽越しに対面する事で色付けするのね、んでダンデさんのお気に入りの闘士だから毎度呼ばれるのよね
お前、オレさま以外とやらないの?
なんだキバナ、浮気を許す気か
浮気って
俺はキミ以上に、この体を美しくしてくれる相手はいないと思ってるぜ
にっかり笑うダンデさんに、あーそーってむにむに唇くっつけて照れちゃうね
そうだぜって笑ってダンデさんはそっと胸の内を隠すのよね
なんで綺麗な色出るかって、元より繁殖のためのものなんだからわかりそうなものじゃないね
でもそれを伝えるには種族も違えばただの職場仲間でしかないから諦めてるのよね
ガラスの向こう側にいる想い人にダンデさんはそっと笑うのよね
キミ以外、いないんだ
熱烈だなぁなんて軽い調子で受け止められてダンデさんはちょっぴり寂しいね
そんなダンデさんの寂しい気持ちは、専属の医師であるソニアさんが聞いてくれてるね
わからないもんかねぇキバナさんも
そもそも闘魚である俺が、彼を慕うって前提がないんだろうさ
ダンデくんの色見たらすごいわかりやすけどね
……そんなにか
うん、そんなに
たとえば、どこが
殆どの鱗や鰭はワインレッドやマゼンダでできてるのにさ、一番大きな尾鰭だけスカイブルーなのよね
うっ
瞳、見つめすぎてるんじゃない?
けらけら笑うソニアさんにダンデさん言葉に詰まるのよね
愛した人が自分を見つめる色を体に溶かしてもっと見てくれとばかりに目の前で体を翻すのちょっと恥ずかしいね
ソニアさん更にけらけら笑うよね
ベタで一番に美しい部位を、私は尾鰭だと思ってる
……そ、にあ、勘弁してくれ
いやよ、黙ってあげない。ふふっそんな一番に美しい場所をあなた色に染めています、なんてとびっきりの告白だわ
楽しそうなソニアさんは叶うならこの幼い頃から一緒にいたベタの青年が報われて欲しいといつでも思ってるのよね
こつんと水槽を叩く指先に、ダンデさん恥ずかしくってぶくぶくぶくぶくと鰓から気泡吹き出しまくるね可愛いね

そいでもって厄介なのが、キバナさんがダンデの検診も終わったかなって部屋を覗きに来た時に聞こえた会話が、ソニアさんのあなた色に染めています、あたりだけの言葉であってキバナさんショック受けるのよね

え、ダンデ、そんな相手いんの?????

厄介なことにこの男もまた片思いだと思ってるんですね。違いますよ。あなたですよ。って話なんですね。
青褪めショックでふらふら帰っちゃったキバナさんが、いやでも相手に告白ちゃんとしてないかもだし、ってもやもやしながら探りを入れてお互いに、何だよぉ!!!!好きじゃぁん!!!!俺もぉ!!!!ってわっとなって仲良しさんさんなるお話が見たいですね