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納豆
2020-05-05 00:03:19
3446文字
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無題
過去に告白を受け流したキさんと、そこからトラウマになって感情切り離して物を考えるようになったダさんについての妄言
私のベールを脱がして見せて。
そんなキャッチフレーズで立ち上げられたジューンブライド企画。
チャンピオンユウリが花嫁の純潔を表す純白で整えられたベールを被りマーメイドラインドレスを身につけて悠然と微笑むポスター。
華やかな色彩で整えられた額面の端、イベント当日日程や参加申し込みURLが記載されている。
これは、ぱっと見ると広告塔のようだが違う。
あくまでもチャンピオンはガラルのバトルに貢献する存在だ。
ブライダル業界も随分血生臭い企画を立てたものだ、まぁチャンピオンユウリを扱って宣伝をと考えるならこうする他なかったのだろうが。
要するにチャンピオンとのバトルを目的とする催しだった。
勿論チャンピオンユウリは企業側が用意した一定水準を超えないメンバーでの対応。
見た目重視の可愛らしくも華やかな構成にすると聞いた覚えがある。
それでも、彼女が負ける姿は想像もつかなかった。
道行く人々は振り返る。
可愛らしいね、新しいチャンピオンはアイドルのようだ、微笑ましくなってしまうよ。
そんなガラルの評価を横目に、俺は溜息をつくのだ。
あの娘っこが、そんな簡単な枠組みに入ったものか。
やれやれと肩を竦めて、俺の足はチャンピオン及びリーグ委員長が待つバトルタワーへ向かっていたのだった。
さてはて、元チャンピオン経験者である彼ならばこの事態をうまいことエンターテイメントとして昇華するだろう。
これは確かに見栄えがいいと、了承したのも彼だと思う。
あいつも自分を商品として扱ってきた経験から割り切ればどうとでもできると思っているのだ。
しかして、あの子はまだそこまで至らない。
だから俺に白羽の矢が立った。
すまないキバナ、宥めるのを手伝ってくれとレスキューコールが鳴り響いたのはつい先程のこと。
全く観衆の心はあんなにもうまく掴むくせして、身近な人間になると粗が出る。
そういう仕方のなさが、最近にじみ出てきた。
辿り着いたバトルタワーフロントでは、気がついた職員が早足に俺に近付き促した。
曰く、オーナーでは無理です、との事だ。
全く、女性の扱いくらいいい加減覚えておいて欲しい。
嘆息混じりに頷いて案内された先、執務室のソファでローテブルを間において向き合う二人がいる。
癇癪を起こした幼いチャンピオンはその愛らしい眦を釣り上げてオーナー様に歯向かっていた。
「私言いました。こういう企画はお断りしますって」
「しかし、キミの今の価値を使わないでどうする」
「ダンデさん知ってますか、それセクハラです」
「別に負けなければいい話だろう?」
「持ち出された事自体に腹が立ってるんです」
がるると威嚇する様は幼体のワンパチが噛み付くようだった。
しかしてその実、暴れ出せば彼女の相棒達も姿を見せる。
手がつけられなくなるのは明白だと、向かい合う二人の間にひょっこり入り込んだのだった。
「よぉチャンピオンユウリ、相変わらず元気がいいね」
「キバナさん」
「どれ、このキバナお兄さんに話してごらん」
にっこり微笑む俺にユウリはむぐぐと唇を噛みしめるが、なんとか飲み干してくれたようだ。
ぶすくれた顔をしながらも、一応は落ち着いて背凭れに寄りかかり冷静になる。
それからとつりと俺を見上げた目元は不満でいっぱいだった。
「結婚式モチーフだなんて、私絶対やです」
「うんうん、結婚式ってのは女の子の夢だものな」
「ましてや、負けたらその相手がベールを剥ぐんですよ。耐えきれません」
「そりゃあそうだ、心に決めた人以外は願い下げだろう」
「まぁ、負ける気はないです、けど」
「そういう問題ではないよな、大前提の話だ」
「
…
はい」
よしよし落ち着いてきたな。
静かに諭す俺にダンデが安堵に息を吐く音を聞く。
本当に何でもかんでも自分基準に仕事をとってくる癖をどうにかしないと、本気で問題になる。
心の中では盛大に呆れ果てながら、俺はしゃがみこんで下からユウリを覗き込んだのだった。
不満は残るがこれも仕事だということもわかっている。
聡明な子供だ、だから、俺は言葉を省略したりはしない。
「ユウリは、嫌だけどやらなきゃいけないのもわかってるんだな、偉いぞ」
「
…
はい」
「そうだな、今度からこういう企画物は一回オレさまも提案書を見てから判断する。それならいいか?」
「それなら、今回は」
「よしよしありがとうな。ただ今回は申し訳ないが、頑張ってもらうことになって」
「やります」
うんざりとしながらも頷いてくれた姿にほっとした。
ユウリはそれで話は終了らしい。
失礼しますと席を立ち出て行った。
きっとストレス解消にワイルドエリアへ飛び出したのだろう。
ひらひら手を振って見送り、立ち上がる。
じっとり見つめた先ではダンデがからりと笑っていた。
「助かったぜキバナ」
「お前ねぇ、あの子が好きな相手わかってんだろ」
「ホップのことか、うん、知ってるが何か関係あるのか」
「本気で言ってんなら、オレさまはお前の情緒が心配だよ」
好きな人以外にベールを捲られるなんて、もし負けでもしたら女の子の夢をひどくぶち壊す企画である。
まぁ、あの子なら負けはしないだろうが、チャンピオンと言えど一人の女の子だ。
多少の夢見がちさをどうして汲んでやらない。
深くため息をつき向かいに座って足を組んだ。
睨むよう視線を向けた先のガラルの頂点は、しかし、けろりと笑って返すのだ。
「俺の弟が好きなら尚のこと、自分の大切は自分で守って然るべきだぜ」
「随分な試練を与えるもんで」
実はお前ホップを取られたくないのか。
じっとりした目を向ける俺にダンデは目を丸くして動きを止める。
そうかと思えば、からからと笑って手を叩く。
そうしてうっそり細めた目元は俺を少しだけ、非難していた。
「それをキバナが言うのか。面白い。キミだって、俺の想いを手酷く扱ったじゃないか」
その言葉にぴくっと眉を跳ねさせ席を立つ。
無言で立ち去ろうとする背中に、ダンデは尚も言い募る。
「俺の気持ち何もかも、先に娯楽として消費したのはキバナだぜ」
淡々と投げつけられた言葉。
それを前に逃亡した俺は全く腰抜けの出来栄えだったのだ。
みたいな少年期に、キミに恋をしている、好きなんだって必死に伝えたのにキバナさんは当時恋だの愛だのうつつ抜かしてる場合かよ精神だったので、ふぅんそっかなんて聞き流したのに、世の中が二人が仲良しさんであることに需要があると知ってから撮影で密着したり、プライベートで誘いをかけたり、諸々近くに寄るから、あの告白をキミは流したけどもしかしてってドギマギするダンデさんに、だってお前はオレさま好きってことはこういうのは嫌じゃねぇだろ?じゃあいいじゃんって子供特有の残酷さでみんな喜ばそうとしちゃってた過去からダンデさんが、そうか俺の気持ちはそうやって扱われても仕方ないのかって若干トラウマになってるお話
キバナさんは徐々に惹かれ始めてたけど自分がしでかしたことがまずい事だとわかっているので今更言えないし、未だにダンデさんが自分を好きでいるなんて思ってないので受け流し続けてますね、ダンデさんはまだ絶賛片思い中だけどな
その、キミも俺の事
期待に眩く瞳が、俺に恋をしているのだと訴えかける
はにかみ向かうその柔らかなふやけ顔につと針を刺してみたくなった
傷付けられると思った、俺でもお前を傷付けられるんじゃないかって、だからこの方は勝手に動き出す
だって、ダンデは俺の事好きなんだろ?
あからさまに傷ついた顔に、あぁこいつに残せたんだと喜んだ
それが全て間違いだと気付くには、あまりにも幼かったのだ
好きな子をいじめたいなんて、くだらない加虐嗜好ですね
オレさまも今じゃそう思うんだけどさぁ、あの頃はさぁ
勝負で勝てないからといって幼い相手の気持ちを傷付けてはしゃいだりして、あまりにも幼稚が過ぎますね、救いようがない
ネズ容赦がねぇ
容赦して欲しいんで?
厳しい優しさがしみるぅ
でしょう
素直になってみてはどうです
なりたい、けど
今更なんて言い訳は随分と聞こえのいい逃げ道ですね
うっ
愛情は、水をやらねば枯れ果てる、そう言うものです
うん
いっそ踏み荒らしたお前に何が残ってるのかは甚だ謎ですがね
ねぇ、意地悪なのか優しいのかどっちよ
どっちが都合がよろしいんで?
ネズって怒らすと怖そうだよな
そりゃどうも
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