ヴィクトルの方が先に目覚めることは多いので、目覚ましもなしに彼より早く起きられる自信はあまりなかったが、反面、きっと企みに興奮して早く目が覚めるだろうと思ってもいた。
果たして、隣に眠る人が目覚めるような兆しを見せた頃、勇利は寝たふりをしたまま身構えた。
ヴィクトルが寝ているうちに彼の枕元にプレゼントを用意し、そこからは夢うつつのような感じで意識をたゆたわせていた。あたたかいベッドの中は著しく眠気を誘ったが、起きた時のヴィクトルの反応を見逃したくない一心で目を閉じたまま起きていた。
考えることはいくらでもあったので、待っている時間をそこまで長くは感じなかったのは良かったかもしれない。
「……」
微かな吐息とともにヴィクトルが腕をわずかに動かす気配を感じた。
「おはよう、マッカチン」
足元に丸まっていたはずのマッカチンが勇利より先にヴィクトルに挨拶したのを、少しだけ羨ましく…、
「おはよう、俺のかわいいこぶたちゃん」
ちゅ、と頬にキスを受けて、勇利は寝たふりがバレたのかと思った。だがそうではないらしく、ヴィクトルの気配、熱源というか…、それはすぐに勇利から離れてしまった。
ヴィクトル、もしかして毎朝これやってるのかな…と勇利は身悶えしそうになった。全力で耐えたけれど。
「……、ん?」
半身を起こしたらしいヴィクトルの、不思議そうな声がする。どうやら気付いたらしい。勇利が彼の枕元に置いたプレゼントに。
これとは別にプレゼントのリクエストは確認していて、つまりサプライズに当たるのだけれど、ただのサプライズではない。ヴィクトルがどこまで驚いてくれるかはわからないけれど…、
「!? ゆ、…!」
ガサガサと音がしているのは、ヴィクトルがそれに驚いているからだろうか。そしてたぶん今、勇利を起こそうとした。ぐっと踏みとどまったらしいのは、寝ているのを起こすのを可哀相に思ったのだろう。
優しいな、この人。僕に甘い。
勇利はくすぐったい気持ちを抱え、わざとらしく唸ると、今正に起きたようなフリをする。半分寝ぼけた様子で。
「…ヴィクトル…?」
あくびをしながら背中に呼びかければ、ぴくりと肩が震えた。そしてゆっくり振り返った彼は、しっかりと胸にプレゼントを抱えていた。
彼にとっては、きっと何の変哲もない、どころか数ある上等な品々に比べて見劣りするようなものなのではと思う。だがヴィクトルの顔は子どものようで、…初めて自分宛のプレゼントをもらった子どもが、嬉しすぎてどうしたらいいかわからなくなっている、そんな顔で。
勇利な寝癖をつけたまま両手を広げた。微笑んで、ヴィクトル、と呼ぶ。
ヴィクトルは無言で勇利を抱きしめた。むき出しの腕が痛い程強く抱きしめてくる。
パジャマでもよかったかな、勇利は思う。
「サンタさん、ヴィクトルのところにも来てくれたんだね」
ぽんぽんと背中をなでながら言えば、ヴィクトルは少しだけ顔を離して、困ったような顔をする。
「………俺、俺のところにサンタクロースが来てくれたの、初めてだよ」
「ロシアはサンタの縄張りじゃないみたいね。ジェド・マロースに断って、やっとこれたみたいだよ」
「勇利はサンタクロースに会ったの?」
まるで本当に信じているような顔でヴィクトルが驚いたので、勇利は瞬きしてから微笑んだ。
「僕、こう見えてサンタさんと友達なんだ」
ヴィクトルの額に少し不器用にキスをして、そうして勇利はもう一度微笑んだ。まだ薄暗い室内で、そこだけ光があたったように彼の頬は輝いていた。
「ハッピーバースデー、ヴィクトル。メリークリスマス」
ヴィクトルはすっかり固まってそんな勇利を見つめていたが、やがて顔をくしゃくしゃにして笑った。誰にも見せないような、素直な笑顔だった。
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