黒羊ユク
2132文字
Public 一次創作
 

最弱の王のおはなし

 別所にあった、タグ「フォロワーさんからイメージもらって自分を魔王化する」の結果+物語。

-頂いた要素-

オッドアイ
片足が義足
片目が四白眼
二対以上の翼
胴体に顔
ところどころ機械
多眼
紳士
ところどころ溶けてる



「そのような消化速度では仕留め損ねます。こちらの得物を」
「その移動速度では逃げられますな、では補助パーツを拵えましょう」
「動きにくいとあらば特訓あるのみ、わたくしめがお相手つかまつりまする」
「そうですわね。あたくしとしましては、眼光鋭きお顔も、柔和なお顔も拝見しとうございますわ」
「生命力が足りておりませぬか……。我らの力をお使い頂ければと」

「あたしも、みらいを、みたかった、けれどもう」
「あの娘、最早自力では生きられますまい」
「では、私と共生ではどうだろうか。現時点、最も生命に溢れるのはこの体であるし」
「それは……
「駄目な理由を付ける権利は、娘さんにあると思うのだが」

「済まないね、その顔しか残せなかった」
「どうしてのこしたの? あたしは、じゃまにしか、ならないよ?」
「大切な存在を可能な限り残したいと思ってね」
「なく、よ?」
「涙も守れない者には、何も守れないよ」

「魔王の正体は枝でも倒せる低級スライムと聞いたが」
「仰る通りです」
「その体は」
「皆さんからあれこれと賜りまして」
「あれこれ……それもか」
「それとはなによ! あんたなんかにまけないんだから!」
「おやおや。礼節をお忘れなく」
「はぁい」

「お前は……そうか、そうなんだな」
「お解り頂けて何より。従って、負ける訳にはいかないのですよ」







 我らは人間から「魔物」と呼称される。
 「魔物」は決して人間を襲わなかった。
 人間にとって「魔物」とは「獲物」だった。
 「魔物」は考える。あの愚行に同じ手を以て応えるようでは同類であると。
 よって「魔物」の戦いとは、常に防衛戦であった。

 知っての通り、我らの遺伝子は不可解で、複雑だ。
 つがいの間に産まれる子の種は不規則である。
 強力な種同士であれば、子が強力な種として生を受ける可能性が若干増えた。
 此度の世継ぎもそうだ。
 しかし産まれた世継ぎは、我らが種の中で最も脆弱な種であった。

 誰一人として、その子を捨てよ、とは提案しなかった。
 そのような愚行は人間のする事である。
 我らは皆が誇り高き種である。脆弱な命であれ変わらぬものだ。
 今からどうすれば良いのか。答えはすぐさま出た。
 脆弱を補えるよう、我らの力を結集せんと。

 鍛冶に長けた者が、武器を授けた。
 機械に長けた者が、動作補助具を授けた。
 武道に長けた者が、速き武術を授けた。
 造形に長けた者が、表情を授けた。
 生命に長けた者が、源の欠片を授けた。
 そして何より両陛下が、勇の心の名を授けた。

 やがて子は王となった。
 脆弱さは消え、眼はしかと前を見据える。
 ある時にその眼が捉えたものは、まさに尽きようとする若い命だった。
 娘は死の淵で王の提案を聞く。生き長らえる為、己と共生をしないか。
 王の思いは、娘にはあまりに柔らかだった。
 娘は感情の奔流に涙した。その涙を王は守ったのだ。

 娘は魔法石を身に宿す種であった。
 司る力は、未来予知、及び未来改変の可能性である。
 力ある者であれば、未来改変へ手が届くであろう。
 共生する王はその力を授かった。
 そうして王は、迫り来る滅亡がある事を知る。
 王は宣言した。滅亡に抗うと。

 途方も無い研究が開始された。
 滅亡までの秒読みと、人間の急襲との戦いが始まった証であった。
 ある時人間は、少数の精鋭を差し向けた。
 選ばれし人間が辿り着いたのは、奇しくも研究が完成したその時であった。

 この「世界」はいつか滅亡する。
 それに備えて、移住する「世界」を作れないだろうか。
 王の提案は突拍子もなかった。
 しかし「世界」は無数に存在している。何者かが作ったとされる「世界」もある。
 不可能ではないのだ。
 知恵と技術の粋を集め、研究に研究を重ね、遂に我らの為の「世界」は誕生した。

 王は戦う。
 移住する我らを守る為。
 戦いは熾烈を極めた。
 そうして最後に立っていたのは、誰もいなかった。

 立てなかっただけだ。

 王は事前に、体の欠片と、娘の魔法石の欠片を分離した。
 それは二者の意識を内包したものであった。
 戦った王の体は、強大な囮と化していたのだ。
 僅かな体となった王は娘を連れ、無事に移住した。

 人間の手により「世界」は壊れ、最後に何も残らなかった。
 我らは生き延びた。今も平穏に暮らしている。
 我らが王は、人間から「魔王」と呼称されていたようだ。
 そのような事は、今もありはしない。
 我らが王は、誇り高き王である。



……気恥ずかしいものだね」
「なあに、書いてあるの全部ほんとの事でしょ?」
「スウィー。その悪戯っぽいものだけで済まさずにいてはくれないかな」
「これ以上は、式までお預け?」
「それは何とも苦しいな。参ったね」
「んもう、真に受けるんだから。……これも貴方が守ってくれたのよ、イサ」


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