kokokisu
2020-06-29 02:13:20
2187文字
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【ザックラ】The color of the sky 5


 汗でしとどに濡れた額を腕で拭う。腕も同じく濡れていて、大した意味はなさなかった。ザックスは暑いな、と隣にいるクラウドへ声をかけた。クラウドはただ、うう、と小さく呻きを漏らした。
 右を見ても左を見ても、街どころか民家すらない平原だった。丘を避けて大きく曲がった道が地の果てまで続いている。西側には断崖から落ち込むように海が広がっており、その先にはここと同じ大陸の半島が蜃気楼のように見えた。反対の東側には峻険な山がそびえている。朝は近くの丘にまで迫っていた巨大な山の影は時間が進むうちにじわじわと短くなり、昼を迎える前に山に刻まれていた影は消えた。木の根付かない黄土色の峰が日に照らされて光っている。
 二人の進む道は舗装されていないが、車や人が通るうちに道の上だけ草が枯れて、白い地肌を晒していた。その為、太陽の光を反射して白熱灯のように光っていた。上からも下から照らされて、健脚のチョコボでもこの上を走るのは嫌がるだろう、という暑さだった。
 歩いて大陸を横断しながら、無数に湧いてくる敵を倒し、しかもこの暑さでは、さすがのザックスも嫌気が差した。ちくしょう、と大声で叫ぶと、それで気を晴らして再び足に活を入れて歩き出す。
 太陽と汗で沁みる目を細めて、進む先を見通そうとザックスは目を凝らした。ニブルヘイムの周辺ではかなりの数の神羅兵がうろついていたが、この辺りにはいない。選んだルートが良かった。無謀に聞こえる大陸横断だが、最短でジュノンに続くコスタ・デ・ソルに向かっていたら、とっくに二人とも捕まっていただろう。
 ザックスは脇に抱えた親友の様子を伺った。彼は暑さを言葉や表情で訴えることがないが、かなりの汗を掻いていた。抱えている腕が湿り、運んでいると滑り落ちそうになる。顔も少し赤い。
「水でも飲むか?」
 岩陰にクラウドを連れて行き、道からは見えない位置に彼を座らせた。まるで糸の切れた操り人形のように背中を丸めて顔を俯けている。ザックスは彼の傍で膝を付くと、神羅のシンボルの刻印された水筒を取り出した。先に倒した神羅の兵士から拝借したものだった。
 クラウドの顎を軽く上向かせて、水筒の飲み口を咥えさせる。ゆっくりと慎重に水筒を傾けて、少しずつ水を飲ませた。舐めるような速さで注ぎ、彼の様子を見てからまた口に含ませる。焦って飲ませるとむせたり零したりしてしまうからだ。
 日陰で休ませている内に、クラウドの火照りは少しだけ治まった。体温も下がってきている。ザックスも必要最低限の水を飲んで、彼の隣に腰かけた。自分は未だ進めるが、不調を訴えることもできないクラウドに無理はさせられない。ザックスは日が落ちるまで待つことに決めた。

 体力の消耗を抑える為、何もせずに時間が過ぎるのをただ待った。太陽の位置が刻々と変わり、海の向こうに沈んでいく。ザックスはクラウドと潜んでいる岩陰が徐々に長くなっていくのを見ることで、時間の経過を感じていた。
 ザックスはズボンのポケットにしまい込んでいた個包装の固形物を取り出した。水筒を持っていた神羅兵は僅かだが保存食も持っていた。神羅屋敷を脱出して以来、まだ一度も食事を取っていない。空腹は確実に体力を奪う。敵がいない今の内に食事を取ってしまおうと思い立った。
 包装を開けて、一食分の半分を齧る。ただの栄養機能食品なので味気ないはずだが、涎が溢れる程に美味く感じた。しっかり噛んで少しずつ飲み込み、身体に補給させる。水も飲んで食事を終えると、ザックスは満足気に息を吐いた。
 次はクラウドに食事をさせなければならない。だが、彼が同じように固形物を噛み砕けるはずがなかった。
 ザックスが気まずそうに目を細める。
「気持ち悪いかもしんねえけど、我慢しろよ」
 クラウドの分の食事と少しの水を口に含むと、固形物がどろどろの液状になるまで噛み砕いた。それを呑み込まずにクラウドと口を重ねる。水を飲ませた時と同じように、少しずつ食事を摂取させた。
 綺麗な色をした虚ろな目にじっと見つめられてどうにも居た堪れない。半分程飲ませてから、ザックスは一度唇を離した。言い訳か謝罪かをクラウドに言いたいところだが、口は開けなかった。まだ貴重な食糧が残っている。
 もう一度ザックスはクラウドと口を重ねた。彼には気の毒だが、他に食べさせる術がない。舌を使って残りを全て彼の口内へ移動させる。最後は水よりも唾液の方が多くて、泡立つほどに粘ついていた。
 クラウドが最後の一口を飲み干した。ザックスは一仕事を終えた気分で、達成感すら覚えていた。途中で彼がむせたり吐いたりしなくて良かったと胸を撫で下ろす。
 気が付くと、ザックスはクラウドの口の深くまで舌を差し込んでいた。食事を取らせると言う目的が無くなった途端、密着させている唇の感触を意識する。クラウドはザックスをちゃんと認知しているとでも言うように、ぬち、と舌を動かした。食事の為に使う口が、その瞬間に性的な快感を得られるところに変化した。
 久しぶりに休息を取って、気が緩んだのかもしれない。ザックスはクラウドと触れ合いたいという欲を抑えられなくなった。死線で戦い続けて忘れかけていた彼の肉の感触がみるみる蘇ってくる。一度、屋敷でのことを思い出すと、もう抑えられなかった。