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kokokisu
2015-05-07 16:20:39
1295文字
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若灯さん 7
鬼灯が檎に金を支払っていると、店に別の客がやってきた。その男性を見るだけで鬼灯は反射的に顔を不機嫌に歪める。男はこの店の常連客である白澤だった。
白澤も鬼灯に気付くと同時に苦々しく眉根を寄せる。女遊びを滅多にしない鬼灯と、こんな場所で出くわすとは考えもしていなかった。
「なんでお前がこんなところにいるんだよ
……
」
「言う義理はありませんね。貴方こそ、飽きもせず女遊びに金を湯水のごとく使っているんでしょう。虚しくならないんですか」
二人の視線が交わった所に火花が散るのが見えた。檎は困り顔で後ろ頭を掻いている。
「まあまあ、お二人ともせっかくの休みに喧嘩しちゃつまらんでしょう」
その場を収めようとしている檎だが、二人の剣幕は険しいままだ。そんな中、鬼灯の腕を抱いていた女がはっとしたように白澤の顔を見上げた。
「思い出した。鬼灯様、白澤様ですよ」
白澤を睨み付ける目はそのままに鬼灯が聞き返す。
「何がです」
女は鬼灯の腕を引いて身体を傾かせると、他に聞こえない様声を潜めた。
「さっき聞かせてもらったお話です。前に、白澤様から似たようなお話を聞いたんですよ」
「この極楽蜻蛉もここで会った神様が最初の相手だったと言ったんですか?まさか。こいつの貞操は化石として発掘されていいくらいの大昔に捨てられているはずです。いくら数千年前とはいえ、花街が出来るまで待っていたはずがありません」
鬼灯も女に囁き返した。自分が昔恋焦がれた神様が、選りによって白澤の相手もしていたなどとは信じたくない。
しかし女は手を振って否定した。
「違います。白澤様に聞かせてもらったのは、その神様のお話です。数千年前にここで若い鬼神と神様が契りを交わしたと仰ってました。どなたかは教えてもらえなかったんですが、その神様についてお詳しいようでしたよ」
それを聞いて鬼灯は目の色を変えた。
さっそく店の女と楽しげに話していた白澤を捕まえ、凄まじい剣幕で彼に詰め寄る。
「白澤さん、私にも彼女に聞かせた話を教えてください」
鬼灯の勢いに白澤は少したじろいだ。こんなに必死な姿を見たのは初めてだ。
彼女と呼ばれた女が鬼灯の隣にいるのを見て、白澤も何の話か察しがついた。前に酔った勢いで口を滑らせてしまった、昔話だ。誰にでも教えたいような話ではない。特に相手が苦手意識のある鬼灯となると、口が余計に重くなる。
白澤はそっぽを向いてしまった。
「嫌だよ、僕そんな暇ないし
……
。妲己ちゃんと約束もしてるし」
「彼女とはいつも会っているでしょう。その話を聞かせてもらうだけでいいんです。お願いします」
金のやり取り無しで鬼灯が白澤に物を頼んでいる。こんなに稀有な事はない。いくら嫌いな相手とはいえ、これを無碍に断るには白澤は優しすぎた。
「
……
仕方ないな。話が終わったら直ぐ帰れよ」
「もちろんです。話さえ聞ければ貴方に用はないですから」
鬼灯の殊勝な態度は幻だったのだろうか。可愛げのない余計な一言で白澤の頭に血が上る。
「僕だって、お前に用なんかない!言っとくけど、これ貸しだぞ!」
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