子供のとき、俺とやつは同じ孤児院にいた。一度も話したことはないがあまりにも異質だったから、その背中をよく覚えている。誰とも話さずにずっと積み木ばかりしていた。いい年をして積み木遊びなんて。そんな言葉を許さないくらいに真剣で、彼の積み木はもはや接着剤や釘を一切使わずになされる建築の域に達していた。
遊戯の時間が終わると彼は決まってそれを叩き壊して元の積み木の山に返す。誰がどんなに賞賛しようと、とっておけばいいのにとアドバイスしても同じだった。周りの人間が勝手に糊付けしても、がんとして譲らなかった。
破壊と再構築。それが彼のルーティンだった。
気味の悪いやつだ。その時の記憶を持ったまま大人になったから、やつが反逆者として後を追われることになったとき、内心でいい気分がしたものだ。
大人の監視の目がなかったら、子供のときから殴り飛ばしてしまいたいと思っていたくらいだ。彼のことが嫌いだった。
やつは森に立てこもり、一週間が経っていた。食料を持ち込めば、家で一週間を過ごすくらいはどうということはない。だが寝る場所もない森の中だ。
一週間も放り出されたらもしかしたらもう死んでいるのではないだろうか。
急いで確認してこいという命令が、俺たち実働部隊に降ったわけだ。やつは俺たちとは違う部隊にいる。積み木を組み上げる能力のどこに評価ポイントがあったのか知らないが、もっと上の頭脳労働部隊に配属された。引きこもりだから実践に出してもらえなかっただけに違いない。
森に行くと、奴が作った砦ともつかない砦があった。
まるでクマが寝るときに枝を集めて作った巣穴のような粗末な場所だった。麻酔銃を構えたまま踏み込む。
カチ、と音がした。カチカチとそこら中から音がする。
一体なんだ。
「忘れたのか」
あいつの声だ。
「俺は積み木が得意だし、一度組み上げた作品は崩すことにしてるんだ」
木々が押し寄せてくる。
破壊と再構築。積み木を叩き壊す瞬間の背中を、思いだした。
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