望月 鏡翠
2023-12-24 13:54:30
846文字
Public 日課
 

#1216 「朝焼け」「大きな」「鐘」

#毎日最低800文字のSSを書く


 その街には四つの鐘楼がある。それには街の成り立ちに関わる複雑な事情が関わっていった。その昔、外敵から守るために四つの街が合併して一つになった。そこには
四つの宗教と四人の権力者がいた。身を守るために協力することには納得したが、自らのアイデンティティを手放すつもりはなかった。
 そして自分たちこそが、統率者としての立場に相応しいと信じて疑わなかった。外敵と戦うのを止めたが、内輪で争いを始めたのは住民たちにとって迷惑以外の何者でもなかった。
 争いへの参加は拒否しても、どうしても拒めないものが一つあった。
 朝夕に鳴り響く鐘の音である。
 権力者ご自慢の四つの鐘楼が同時に鳴り響くと、それはそれは大きな音になる。頭が割れそうなほどだった。どうにかしろと住人の全員から苦情がきて、四つの権力者はようやく和解をした。いや、本当は和解などしておらず、歪みあっていたし競争ばかりだし、ことあるごとに他と比べてどれだけ自分たちの街が優れているかを自慢していた。
 だが本当は四つの鐘が他に負けまいとする大音声に、鳴らす方もうんざりしていたのだ。
 四つの街で、朝と昼と夜と真夜中のそれぞれを分担することになった。どこがどの時間帯なのか揉めに揉めたのだが、それはまた別の話だ。
 一応納得し、そしていつしかその役割を受け入れて各々の名前としていた。
 朝焼けの街の鐘楼の担当者は己の職務に誇りを持っていた。他の街の人間には言えないが、内心では他のどの街よりも一日の始まりを告げ夜明けと共にある己の職務が一番名誉あるものだと思っていた。
 空が明るい紫色になってくる頃に、鐘楼を登る。時間がかかるから急がなくてはならない。足が怠くなるまで階段を登り、天辺に辿り着く。そして太陽が出るのとどうじに鐘を鳴らすのだ。
 人の手で動かすことができる大きさではないから、装置を起動するだけだ。お守りを落とすと、揺れる。
 鐘は弾き飛ばされそうなほどに大きな音を出す。
 それを聴きながら朝焼けを見るのだ。