九夏
2017-01-30 23:30:48
2759文字
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お題箱「ほのうみ+こたつとミカン」

お題箱のお題1

「穂乃果、蜜柑持ってきましたよ」
「やったー! ありがとう海未ちゃん! やっぱりおこたに蜜柑は最高だよねぇ」
「全く……。そんな事を言って、自分からこたつを出る気配がいつまでもないんですから

私がこたつの天板に突っ伏していた身体を起こして見上げれば、海未ちゃんは溜息を吐きながらも蜜柑が盛られた籠を天板の上に置いてくれる。
普段は絶対に自分で取りに行きなさいと徹底する海未ちゃんが蜜柑を取ってきてくれたのは、私が蜜柑蜜柑と連呼している間に飲んでいる急須のお茶が切れて台所に行かないといけなくなったから。
今回だけですよ、と念を押して、そしてそれはきっとしばらくは徹底されてしまうだろうから随分と大きな代償を払ってしまった気もするけど……
……まあいっか! 今は難しい事より早く蜜柑が食べたいし、こたつから出たくもないからね!
海未ちゃんが私の向かいに腰掛けてこたつに入ったのを確認して、私は蜜柑に手を伸ばしながら海未ちゃんに声を掛ける。

「海未ちゃん、蜜柑……
「駄目です。自分で剥いて下さい」
「ちぇー。分かりましたよぉ」

今日は甘えさせてくれる日かなと思って口に出した言葉は出す前にぴしゃりと却下されて。
でもその答えを大体予想をしていた私は、唇を尖らせつつ自分で蜜柑を手に取ってから皮を剥き始めた。
本当は海未ちゃんに剥いて欲しかったんだけどな。ちらりと目の前の海未ちゃんを見れば、海未ちゃんは綺麗に蜜柑の皮を剥くと身を一つ摘まんでその薄皮をこれまた丁寧に剥き取っていく。
私があんな風にしようとしても、力加減を間違えて身を潰したりして手がべたべたになっちゃうんだよね。だから薄皮は剥かずにそのまま食べる訳で……
でも綺麗に剥いた蜜柑も美味しいから食べたいな、海未ちゃんから食べさせて貰いたいよーって思いながら海未ちゃんをじっと見つめていた。
海未ちゃんは真剣にかつ丁寧に剥いた蜜柑の身を口に入れると……にこりと、その美味しさに頬を緩める。
うん。普段のキリっとしてる海未ちゃんも、小さな頃と同じ様にふにゃって柔らかい雰囲気で微笑む海未ちゃんも可愛くて大好きだなぁ。
すっかり手元の蜜柑の事を忘れ海未ちゃんを見つめていると、視線を感じたらしい海未ちゃんがこちらを見て私達の目がばっちりとあった。
海未ちゃんはほっぺたを赤くして慌てて口を押さえると、しっかり噛んでごっくんって飲み込んだ後に口を開く。

「んっ……。な、何ですか穂乃果。にやにやして……
「えへへー、海未ちゃんが食べるとこって昔から可愛いなーって思って見てた!」
……っ! も、もうっ! 穂乃果はすぐにそう言う事を……

どう返せば良いのか分からない様子の海未ちゃんはお茶を飲んで落ち着こうとしたけど。まだ熱かったらしく手に取った湯呑をすぐに天板の上に置きなおしてからはずっとそわそわしっぱなしだった。
どんな海未ちゃんも大好きな私は、さっきから沢山の海未ちゃんの表情が見れた事が嬉しくて仕方なくって。
もっと色んな海未ちゃんを。もっと近くで見たいと思ってじっとしていられなくなる。
はっとある事を思いついた私は蜜柑を手に取りもぞもぞとこたつの中に潜り込んだ。こたつの中をほふく前進で進む私に、薄っすらと海未ちゃんの声が聞こえてくる。

「ほ、穂乃果? 一体何をして……きゃっ!?」

海未ちゃんがこたつ布団を捲り上げたと同時に、私はこたつから飛び出て海未ちゃんに抱きついた。
そしてゆっくりと顔を上げると……唇に二つの蜜柑の身を挟み込んだまま、僅かに口を開いて言う。

「ふふふ、私は穂乃果ではない。蜜柑星人だ……。蜜柑を剥いて食べさせてくれないと、海未ちゃんから離れないぞー!」
…………ふぅ」
「あーっ!? 今の深い溜息ちょっと傷つくよ!?」
「貴女が昔と変わらない事をしてくるからでしょう。もう、先程までの熱があっという間に引いてしまいました」
「えぇー。昔は海未ちゃんこれ見てすっごく笑ってくれたのになぁ」
「いつの話ですかっ!」

かつて海未ちゃんが口を開けて大ウケしてくれた蜜柑星人はもう通用しないらしい。
私は笑う海未ちゃんが見られなかった事を蜜柑の唇を尖らせたままぶーぶー言っていると、海未ちゃんは真っ直ぐこちらを見つめて返してくる。

「ほら穂乃果。食べ物で遊んでいないで静かに食べて下さい」
「海未ちゃんが蜜柑剥いてくれたら食べれるんだけどなぁ……
…………

拗ねた風に出た言葉に押し黙る海未ちゃん。咄嗟にしまった、本気で怒っちゃったかなと慌てて海未ちゃんを見上げると……
――垂れ落ちる横髪をかき上げた海未ちゃんは。ゆっくりと私の顔にその柔らかな唇を近づけ……かぷりと。
私が唇で挟み込んでいた蜜柑の身を一つ咥えてから顔を離し、真っ赤に染まった顔でもぐもぐと蜜柑を食べ飲み込んでからその口を開いた。

……なら。穂乃果は蜜柑を食べなくて結構です。ただし、そのままだと”蜜柑以外”が口に出来ませんよ」
「!!」

すぐに海未ちゃんの言葉を意図を飲み込んだ私は、唇に残ったもう一つの蜜柑の身もすぐさまもぐもぐごっくんと噛んで飲み込み海未ちゃんに顔を寄せて言う。

「蜜柑星人終わったよ海未ちゃん!」
「は、早すぎやしませんか!? ……本当に。貴女は単純で、仕方が無い人ですね」
「それもそうだけど、一番は海未ちゃんが大好きすぎる人なんだよ! 海未ちゃん、ほらっ、ちゅーしよっ!」
「も、もう、穂乃果はもう少し言葉をオブラートに包んで、んっ……!」

海未ちゃんの言葉を遮って、唇を強く押し付ける様にキスをした。
舌を伸ばして唇の表面を舐めると、蜜柑の甘みが感じられて美味しいけど……いつもの大好きな海未ちゃんの味が感じられないのが残念で言葉を零した。

「んっ……蜜柑の味、結構残っちゃうね。海未ちゃんの味感じたいのに……あっ、舐めてる内に蜜柑味取れるかな!?」
「なっ!? ま、待って下さい穂乃果! お母様達が戻って来たらどうするのですかっ!」
「えっ? あっ、そっか。うーん、でもこんな所で止めるのはちょっと……そうだ!」
「穂乃果? やっ!? ちょっ、な、何を引っ張って、わっ、あっ、あぁっ……!?」

再度こたつに潜り込んだ私は海未ちゃんを両腕を強く引っ張ってこたつの中へと引きずり込むと、誰にも見られない空間で、他の誰にも味わえないその魅惑の味を。じっくりと堪能していったのだった……


* * * * *


ドラマCDっぽいゆるい穂乃果を出そうとしたら何だか脱線しそうになってしまったと言う。
海未ちゃん逆転できそうでできないほのうみ。
お題ありがとうございました!