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伊坂
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a lot of lies(アイマヴェ)
#M右ワンドロワンライ様より お題「キス」で書きました。
私はもともと一次短歌で創作をしていた人間なのですが、キスというお題で作った短歌があり、それをSSにセルフリメイクしてみました。
a lot of lies
そう振舞ってきたんだからしょうがない。
どうせ本気じゃないんだからしょうがない。
マーヴェリックは目覚めて、隣で寝ているのがアイスで、それで、もう、今日という日がどうでもよくなった。だるくて、だるくて、今日の予定を全部キャンセルしてしまいたくなった。だって別に、マーヴェリックにとっては大した用事ではない。
「
……
っ、好き勝手しやがって」
悪態をつきながら、すぐさま、よく言う、と自分で思った。好き勝手されて、いい気分だったのは自分だ。形だけのいがみ合い。お互いの中にある傲慢さ。それを、窘め合うようなキス。
アイスとのキスが好きだった。唇を合わせていると、ン
……
、と普段の表情からは想像もつかない、甘い吐息が漏れるのとか。喉から顎にかけての鋭いラインを、キスをしている間は好きに撫で回せるのとか。なんでこんなにハマってしまったかな。プライドが満たされるのがよくない。ほかでもない『アイス』に求められて寝所を共にする。この優越感。安堵。興奮。背徳感。すべてがたまらなかった。何にも代えがたく、いつの間にか、マーヴェリックの中では、アイスが一番の存在になっている。ただ肌を撫で合っているだけでもすごく癒される。キスをして、好きに身体をむさぼらせるのも最高に気持ちがいい。変に気を使わなくていいのも良かった。格好つけなくていいのも。
「
……
だる」
朝日の差し込む部屋を出て、勝手知ったる自宅のキッチンにたどり着き蛇口をひねる。自宅といっても官舎だが。アイスもまた現在同じ間取りの家に住んでいるが。床に散らばっている物の少なさからここはマーヴェリックの自宅だった。コップ一杯分の水を飲み干し、微妙に足らなかったため二杯目も飲み、だるい身体をゆっくりと目覚めさせていく。ただの水でも、鳴き疲れた喉には心地よかった。
……
股関節の違和感。下半身がひどく粘らない。はあ、とため息をつきながら肩を回し、前屈をしたりしてのそのそとシャワーへ向かった。だるいけれど、すごく気持ちがよかったし、やっぱりアイスとの相性は最高だ。腕の内側にキスマークをみとめて唇がゆるむ。脱衣所でシャツを脱いで唖然とした。鏡に映る自分の身体には、引いてしまうほどの鬱血痕がある。鎖骨にも、胸にも、内股にも。吸いすぎて、きっと今も唇が腫れているだろう寝室の寝坊助のことを思った。
「はぁ~~
……
、ふふ
……
」
どうして予定があるのだろう。出かけたくない。カーテンを閉めたまま、アイスと楽に過ごしていたい。あの綺麗な鼻筋を人差し指で撫でたい。そしたら顎を掴まれて、強引にキスされて抗ったりしたい。
(恋人同士みたく)
馬鹿みたいだ。なれるわけないのに。
好きだと言われて、そのたびに嘘つきと思っている。今日は日曜で、お前は見合いの日。
好きだろ? と言われて、そのたびに首を振っている。今日は日曜で、俺はデートの日。
(一日、部屋の中に居て、お前のことを考えてるのなんかごめんだ)
冷たい笑みを浮かべながらマーヴェリックは全身を洗い、手垢まみれのドッグタグを洗い、シャワーを出た。
「うお。アイス。おはよう」
「
……
起こせ」
「すげー寝ぐせ。早くシャワー浴びろよ」
「
……
マーヴェリック、お前がいい。お前と暮らしたい
……
」
「ばか。アイス
……
、おい、まだ寝てるな? 早くシャワー浴びろよ。見合いに遅れ
…
、
…
っ、ん
………
」
薄く、満足そうに笑って、舌を絡めてくるアイスに腹が立った。腫れた唇。あたたかくぬめった舌。恋人同士みたいなキス。互いに唇を尖らせて切り上げる、朝のキス。情事のあとのけだるさを含んだ、朝のアイスのにおいにくらくらした。
「ったく」
「シャワー借りる」
「てかどうしてくれるんだよ。俺だって女の子と遊ぶのにこのキスマ」
「ん? えろくて最高」
ニヤニヤ言って、シャワールームに消えたアイスに、マーヴェリックは仏頂面のまま中指を突き立てる。「お前なんかはやく結婚しろ」
あーあ。嘘ばっかり。
『別々の場所にデートに行く俺とおまえがキスをする脱衣室』
波箱はここから
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