白夜
2016-02-15 00:26:56
2101文字
Public TF
 

渡したいもの

バレンタインのビグマグ
若干遅刻してしまった…

 マグマトロンは一歩踏み出そうとしたがその足を踏み出すことが出来なかった。
 目線の先には目的の人物。
 しかし、その人物の周りには新兵がいる。また少し前には別の者が彼の傍に居た。そのためマグマトロンはなかなか目的の人物――ビッグコンボイに声を掛けられずにいた。
 しかし、実は何度か声を掛けに行く機会は存在していたが、マグマトロンはどうしてもビッグコンボイに声を掛けられずにいた。それは手に持っているものが原因であり、その手に持たれているものはやけに可愛らしくラッピングされている小さな箱。
 マグマトロンは手の中の箱を迷いを含んだ表情で見つめた。

 その箱の中に入っているのはチョコレート。

 数日前、ディーナビにバレンタインデーというものの存在を聞き、ビッグコンボイに渡したらどうかと提案された。バレンタインには自分の想いを相手に伝えるための日でチョコレートを渡すのだと聞いた時は、何を馬鹿げたことをあしらったが、その数日後、意気揚々とした表情でディーナビはチョコレートの材料を買って来たのだ。彼女はとても押しが強い。
 初めはとても渋っていたマグマトロンであったが、ディーナビ自身も作るので一緒に作りましょうよと誘われ、結局チョコレートを作ることになってしまった。

 そして、今に至るのだが、それをマグマトロンは渡せないでいる。
 マグマトロンはビッグコンボイに作ったチョコレートを渡そうと思い、ビッグコンボイのもとへと赴いたのだが、そこで見たのは新兵や他のサイバトロンの戦士たちからプレゼント――おそらくバレンタインのチョコレートを貰っているのであろうビッグコンボイの姿であった。
 そのため、チョコレートを渡しても意味がないのではないかとマグマトロンを悩ませていた。
 手に持っているチョコレートを見つめる。

(この儂が渡してもな……

 チョコレートのラッピングはマグマトロン自身がディーナビのアドバイスを受けながらしたものだ。おそらく渡せないのであろうそれを見て、虚しい気持ちになりながらも、ふと、ビッグコンボイがいる場所へと目を向けた。
 するとそこにはすでにビッグコンボイの周りにいた新兵たちも居らず、更にはビッグコンボイもいなかった。
 ハァ、とため息を吐く。それは安堵の溜め息なのか残念な気持ちによる溜め息なのかは己にも分からない。

(部下にでもやるか――

 そして、そう思い、その場から立ち去ろうとした。

「マグマトロン?」
「なッ!?」
 しかし、それは声を掛けられたことにより阻まれた。
 まさか声を掛けられると思っていなかったマグマトロンは思わず可笑しな声を上げてしまう。そして、声を掛けてきた相手を見るとそこにいたのは、ビッグコンボイであった。いつからこっちに来ていた、いつから自分に気付いていた、等と言った疑問が頭の中でグルグルと回る。
「それ、もしかして俺にくれるのか?」
 そんなマグマトロンに気付いているのかいないのか、マグマトロンが手にしている物に気付いたビッグコンボイは戸惑う様子も見せず、率直にそう聞いてきた。そのため異様な羞恥心に苛まれる。
 そう聞いてくるということは、マグマトロンが持っている物がバレンタインのチョコレートであるということに気付いているのだろう。今日がバレンタインであることはすでに貰っている彼は知っている。これはもう言い訳など通用しないとマグマトロンは腹を括った。
「あぁ……、ディーナビの奴が作っていてな、そのついでに儂もお前に」
「そうか、ありがとな」
 緊張と羞恥心のためマグマトロンらしくもなく僅かに震える手でチョコレートを差し出すと、ビッグコンボイは綻んだ表情でそれを受け取り礼を述べた。
「これ、俺からだ」
 そのビッグコンボイの表情にマグマトロンも嬉しくなり、自然と頬が緩ませていると、ビッグコンボイからまさかのものを差し出された。それはマグマトロンがビッグコンボイに渡したものと同じように綺麗にラッピングされた物。カッと頬に熱が走った。
「NAVIから今日は日頃の感謝を伝える日だと聞いてな。良かったら貰ってくれるか?」
「も、勿論だ。感謝する……ッ」
 フェイスパーツが火照って熱い。
 どうしようもない気持ちになり、ギュッと歯を噛み締めた。思わず表情が綻ぶ。勿論、この表情をビッグコンボイに見られるのは気恥ずかしいので、少し顔を背けて見せてはいないが、おそらく今のマグマトロンの表情をディーナビが見れば、舞い上がり過ぎ、と呆れたようにツッコミと入れられてしまう程の表情。

 ビッグコンボイも僅かに気恥ずかしげに笑っている。
 
 そんなビッグコンボイを見て、マグマトロンは密かにディーナビの言うことを聞いてチョコレートを作って良かったと心の中で思ったのだった。








数時間で書いたので短いSSな上に会話が本当に少なくなってしまった。でももだもだと悩んでいるマグ様かわいい。ちなみにこれビグマグが付き合っているかどうかは読む人の解釈で決めて貰えるように文章を書いたつもりです