白夜
2016-01-19 16:54:18
2000文字
Public その他
 

無題

ギロクル

「お前が好きだ……!」
「へー、そうッスか」

 それはギロロが一大決心をして行った告白であった。
 それなのにも関わらず、クルルはギロロを一切見ようとはぜず、あっさりとそう答えた。さらにはクルリと作業していた方に身体を戻し、止まっていた手がカチャカチャと動き始め、すでにギロロには興味がないと言った素振りを見せている。そんなクルルのあまりにも素っ気ない反応にギロロは思わず放心してしまう。

 ギロロは何も考えなしにこの気持ちをクルルに伝えたわけではない。

 ギロロとクルルは正反対と言っても良いくらいの性格をしており、犬猿の仲とも称されるくらいウマが合わないでいた。そして、同じ小隊になって活動するようになった頃は考え方が合わないため、何度も喧嘩をしていた。しかし、長らく共に過ごすことにより、ギロロはクルルの“良い”ところに気付くようになっていった。

 例えば、作戦に対して意外と真面目であったり、ケロロの小隊のことをしっかりと考えているところであったり。さらには、ギロロの色眼鏡であろうが、寝顔が幼くて可愛いだとか、たまに見せる笑顔が可愛いだとか、クルルを見ていると、彼の良いところが次々と分かり、気付けば愛おしいと感じるようになってしまっていた。
 しかし、ギロロがどう考えてもクルルはギロロに対して、ギロロと同じ感情を抱いているとは思えなかった。それでも、このまま隠し続けたとしても、隠すことが上手くはないのでいずれはクルルにばれてしまう。それで、クルルに嫌われるよりも自分から言ってしまって嫌われた方がすっきりする、と言う考えに至り、気持ちを打ち明けることにしたのだった。
 だが、無理だと分かっていたとしても、不安な気持ちがあるのには変わりはない。緊張で汗ばむ手のひらと、乾く喉を感じながら、ギロロはクルルに気持ちを伝えた。しかし、それなのにも関わらず、その返事はたった一言で終わってしまったのだ。

「いや、そのだな。出来れば返事を聞きたいのだが」
「だから分かったって言ってんだろォ」

 クルルはギロロを見ることなくそう言った。全くクルルの真意が見えない。
 どういう意味だと猫背気味の背中を見ながら必死に思考を働かせていると、クルルはノートパソコンを持って立ち上がった。

「じゃあな」

 去ろうとするクルルの腕を慌てて掴んだ。クルルは一瞬驚いたように振り返りかけたが、すぐに顔を背けてしまう。

「おい、待て。お前は俺のことどう思ってるんだ」

 たとえギロロ自身がクルルに抱いているような感情をクルルが抱いていなくても、ギロロはクルルの気持ちを聞きたかった。しかし、クルルは黙って、ギロロの手を振り解こうとする。もちろんそれは許さない。ギュッと逃がさないように掴んでいる腕に力を入れた。
 この頑なな態度を考えれば返事を聞かなくても分かる。クルル自身もギロロの気持ちを適当に流して、何もなかったことにし、いつもと変わらないようにギロロに接するようにしたいのだろう。しかし、それでもきちんと見て欲しかった。掴んだままの手に自然と力がこもる。クルルが痛そうな表情をしているがそれを気にすることなく、ギロロは我慢できず自分の方に引き寄せた。そして、逸らされていた顔を半ば強引に自分の方へと向けた。

「く、るる……?」

 もちろんその顔は不機嫌な表情になっているのだろうと思っていたのだが――

「クッ、み、見んじゃねェ!」

 ――その顔は真っ赤に染まっていた。

 その赤くなった頬にそっと手を添えると、さらにカッと赤く染まった。
 その表情を見てギロロはもしかしてこいつも同じ気持ちなのではないだろうかという自惚れ心が顔を出してくる。そして、そんなクルルに思わず頬が緩んだ。ギロロ自身がした告白に、普段ギロロをからかうことの多いクルルが頬を真っ赤に染めているのである。自惚れないわけがない。

「もしかして、お前も俺のことが好き、なのか?」

 そして、そんなクルルを見て、つい思ったことを口に出した途端、勢いよく掴んでいた腕を振り払われた。

――――ッ!」

 その衝撃に僅かに気を取られているうちにクルルはその場から走り去って行ってしまう。待ってくれ! と引き止めるが、もちろんクルルはその言葉を聞き入れることは無く、あっという間にクルルの姿は見えなくなってしまう。

 そんな時、ふと、最後まで返事の答えを貰えなかったことに気付いた。

(まあ、良い。返事を聞く機会ならいくらでもある)

 しかし、すぐにでも追いかけてしまおうと思ったが、そう思い直した。おそらく今追いかけてもラボにでも籠って中には入れさせてもらいないだろう。
 そして、そんなことを思いながら、ギロロはクルルが走り去って行ってしまった方を見て、ふと笑みを浮かべたのだった。