白夜
2015-11-24 18:00:17
1887文字
Public TF
 

お鍋を食べるビグマグ

ビグマグ 自覚してる先生と自覚してないマグ様。お鍋の時期がやってきましたね。

 よく考えればこの状況はおかしいのではないのだろうか、とマグマトロンは思った。

 数刻前、今日は鍋だと合鍵を使い、勝手に部屋へと材料を持って入り込んできたビッグコンボイに簡易キッチンを占領されていた。最近、これが当たり前になりつつあるせいで、文句の言葉は出なかった。せっせと食事の準備をするビッグコンボイの背中をぼんやりと眺める。やはり、おかしい。宿敵であった相手がマグマトロン自身の部屋の合鍵を持っていることも、このように当たり前のように共に食事をとろうとしていることも、そして己がこの状況を受け入れてしまっていることも。

「ほら、出来たぞ」

 おかしい、と思考を巡らせていると、目の前にドンと鍋を置かれた。
 蓋が開けられると同時に湯気が一気に拡散する。そして、それと共に広がる濃厚な出汁の匂い。中には、肉や野菜が煮だっている。
 思わず美味そうだ、とコクリと喉を鳴らした。
 さあ、早速食べようか、と入れ物を渡され、ビッグコンボイに倣って、マグマトロンもその中に具を装った。もちろん好きなものに偏るので肉しかいれない。始めのうちビッグコンボイはそのことを咎めていたが、野菜を食べる必要がない、と頑なに食べようとしないマグマトロンに言うことを諦めた。
 黙ってもぐもぐと食を進める。温かい具材は体温が下がりやすいマグマトロンの身体を温める。また、様々な具材の出汁がしみ出した汁はとても濃厚でマグマトロンの舌にあっていた。美味い、と肉を味わいながらも、やはりおかしい、と思う。
 
 アンゴルモアエネルギーを巡る戦いは終わり、ビッグコンボイとマグマトロンの対立も終わった。元々、サイバトロンとデストロンという立場での抗争だったため、いざ戦いが終わると2人が会うことは驚くくらいになくなっていた。たまに新兵と共にいるビッグコンボイを遠くから見かける程度であった。
 しかし、しばらく続いていたそのような日々は、ある日突然、ビッグコンボイが声をかけてきたことで終わりを告げた。一緒に食事をしないか、と言ってきたのだ。一緒に食事をする理由もないが、それを断る理由もなかった。そしてなにより、細かいことを考える前に、ああ、と承諾してしまっていた。
 始めは外食をしていたら、気付けば家に招かれ食事をしており、更にはマグマトロンの家でビッグコンボイが食事を作るようになった。そして、最終的には何故かマグマトロンはビッグコンボイに合鍵まで渡してしまっていた。
 Dナビに一度相談したことはあったが、別に普通じゃないの?と返された。少し含みがあったような気もするが、その理由は分からない。

「おい、手が止まっているが、口に合わないか?」

 ビッグコンボイの声で我に返った。
 いつの間にか手が止まってしまっていたらしい。入れ物の中の物は若干冷めてしまっていた。

「いや、そういうわけじゃない」

 ビッグコンボイの問いに、美味いぞ、と答えようとしたが、気恥ずかしく感じてしまい言いよどむ。そんなマグマトロンに更にビッグコンボイは訝しげな表情を向ける。

「だがさっきからずっと心此処に非ずって感じだが……、大丈夫か?」

 パチリとこちらを見つめる瞳。
 お前が主な原因だ、と言ってやりたかったが、この様子ではおそらく無自覚である。それに、もしかしたらおかしいと感じているのは己だけかもしれない。

(それに、ビッグコンボイがおかしいと気付いてしまえば、今のように会おうとしなくなってしまうのでは――

  そこまで考えてが至ったところで、一瞬思考が止まる。そして、自分が思ったことを反芻したところで、一気に顔に熱が溜まった。

(わ、わしは一体何を考えて……!)

 己の辿り着いた女々しい思考に歯を食いしばる。
 別にビッグコンボイに会えなくなろうが、困ることはないはずであるのに。
 クソッ、と思わず舌打ちをし、気を紛らわせるかのように、肉を口の中にかき込む。そんな感情とは裏腹に、出汁が染みた肉は腹立たしいほどに美味しい。それが更にマグマトロンを何とも言い難い気持ちにさせた。
 もう余計なことを考えるのはこれ以上は危険である。
 そう判断したマグマトロンはビッグコンボイが調理した鍋を食べることに専念する。

 そして、そんなマグマトロンを見て、ビッグコンボイが愛おしむように笑ったが、今のマグマトロンには気付くことはなかった。






これでも原型のつもり
まだ付き合ってないビグマグちゃん
悶々と悩むマグ様が可愛くて好き
20151124