sevendays23
2022-08-21 20:41:44
3964文字
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レッドショート(二本)

フォロワーさんとの約束物。レッドネタバレ注意!

①ウェーブの話

「うーん……

料理人は悩んでいた。本を広げ、しかも珍しく料理の本でも女性のそういう本でもなく、ファッション雑誌を広げて悩んでいた。

「どうしたの、サンジ」

「ロビンちゅわん!!今日も麗しいなぁぁ!!」

「ふふ、ありがとう」

それで、どうしたの?とキッチンに入ってきた考古学者にもう一度繰り返し問われると、料理人はファッション雑誌をパラパラめくりながら、

「いやさ、今度エレジアに行くだろ?」

「あぁ、ウタのライブね」

考古学者は納得したように言った。船長の面白そうだの一言で、行くことに決まったウタライブ。チケットは狙撃手が取ってくれるらしいし、レディが大好きでウタのことも大好きらしい料理人は、狙撃手と船医共々楽しみにしていた。

「おれ、せっかくだからオシャレしようと思ってるんだけど……ライブとかあんまり行ったことなくていまいちきまらなくてさ。ウソップに聞いたら仮装とか言いやがるし」

それで先程からぱらぱらと雑誌をめくりながら、うんうんと悩んでいたらしい。狙撃手はたしかにファッションに詳しいが、今回はライブに行くと粗品がもらえるために仮装をするとのことだったから当てにならないという。

「色々研究して服は買ったんだけど、どう合わせようかな……って」

考古学者はチラと雑誌に目を落とす。フェス服と書かれたその雑誌は、髪型、髪色、身長まで様々な男性がいろいろな場所で様々な格好が提案してある。柄シャツだとか、半パンだとか。きっと彼は目をハートにしたりだとかくねくねしたりしなかったら誰からでも割と何でも似合っているように見えるだろうに。もちろんそれも彼の愛情表現であるから、考古学者的には嫌いではないのだけれども。

「サンジ、提案があるわ」

その雑誌の中で、考古学者は一つ目をつけたものがあった。

「えっ!!ロビンちゃん!おれのファッションを一緒に考えてくれるの!?」

キラキラと目を輝かせながら言ってくる料理人。まるで子供のようだとクスクスと笑って、

「いいえ、服のことではないのだけど」

「え」

「髪型を、私とおそろいにしない?」

「えぇ!!?」

料理人は瞬きした。どういうことかわからない。髪を伸ばすのか?それともウイッグをつけるとか?それとも黒髪に染めるのか?おそろいという甘美な響きに惑わされながらも、彼はぐるぐると頭を回転させた。

「あなたは、髪を触るのが上手だから手伝ってほしいの」

すると、考古学者は料理人の手を取った。目をハートにする。彼女は口元を緩めた。

「それで、もしよかったら、おそろいにして」

「はいっ!!」

手をあげた料理人にふふっと笑いかけると、考古学者は彼を芝生の方に連れ出したのだった。

――――――

「おそろいって、ウェーブのことだったんだ」

「えぇ、サンジのきれいなストレートも素敵だけど、たまにはうねらせてもかわいくていいと思うわ」

「ロビンちゃん!そんなっ!!ロビンちゃんのほうが可愛いよっ!!」

椅子に座らせて、大きな鏡を使って。彼女のきれいな長い黒髪を、白い手が通り、櫛とヘアアイロンをつかってウェーブをかけていく。その手は、レディの髪だからと優しく触れていて、熟れたようだ。音楽家がそういう髪の毛用機材をたくさん持っていたので、道具に困ることはなかった。

「よし、どうかな?」

「ふふ、素敵よ。サンジ」

「極上の幸せェ!!」

考古学者のきれいな黒髪はうねりを帯びて肩にかかり、大人の女性感を演出している。額を出せばさらに美しさがあがるだろう。

「サンジは、どうする?」

「せっかくだから、やってみようかな」

「あら、やってあげるわ」

「えっっ、でも、そんな!手間じゃ」

「私には、やらせてくれないの?」

「い、いえっ」

すると、考古学者はくすりと笑って、顔を赤くした料理人を交代とばかりに椅子に座らせる。考古学者のほっそりとした手のひらが、肩に手をおいたあと、金髪の間を通っていき、撫でていく。

「さらさらね、太陽の光を浴びて、あったかいわ」

「あ、あっ、ロビンちゃんの髪もブラックオパールみたいで素敵だよ!」

「ふふ、ありがとう。私もサンジのきれいなブロンドヘアーが大好きよ」

料理人はドキドキと緊張したように椅子に座っている。ちょっと近づいて話される声に興奮して鼻血を垂らしてしまったが、そこにティッシュが能力でさくっと差し込まれた。抜かりがない。

「実を言えばね」

「え?」

「この間ウソップとサンジが髪の毛を触ったり切りあいっこしてるのが、羨ましかったの」

基本的にこの船では同性同士で髪を切る上、考古学者は能力者。彼女の分は自分で切れてしまうし、髪型は少しなら航海士がしてくれるが、こんなに丁寧にはできない。

「だから、チャンスだと思って、頼んでしまったの」

ごめんなさいね、と言わんばかりの考古学者に、料理人は瞬きした。

「い、いや、おれでよければ!!全然切るよっ」

「え?」

「もっと早く気づいてあげたらよかったなぁ。だって、ロビンちゃん、仲間に入ったときからずっと一人で切ってたから」

料理人と狙撃手は、女性の髪についても考えていたが、考古学者はずっと一人で切っているし、航海士のも切っているからそうしたいのだと思っていたのである。

「ごめんね、ロビンちゃん」

レディの感情をちゃんと読み取れていなかったことに、料理人は素直に謝って、

「今後は、言ってくれたらきるからね!」

笑顔で、彼女にそう言ってくれた。

……ありがとう、サンジ」

考古学者はくすくすとわらった。どうやら、お互いが遠慮しあっていたことがわかったから。

「なら、今度は、サンジのも、ウソップのも、私に切らせてね」

「ぜ、ぜひ!!」

でもハナのはいいよ、なんてお話しながら。考古学者はゆっくりとヘアアイロンを使って、料理人の金髪を柔らかくウェーブさせていく。その口元には、嬉しそうな笑顔が灯っていた。
だが、そんな楽しそうな二人を、羨ましいと思う一味がいるのも然りで。

「ずりぃな!ロビンとサンジ!おれもウェーブさせてくれ!」

「お前はくせっ毛だからウェーブあるようなもんだろ。クソゴム」

「そうなのか!?じゃあおれもサンジとロビンとお揃いだな!」

「おい……

「ふふ、お揃いが増えて嬉しいわ」

勝手に納得する船長。しかもおそろいだとか勝手に楽しそうである。

「おれは」

「短すぎるマリモが呻くな」

「んだと!髪までぐるぐるにしてもらえ、アホ」

「あぁん!?」

「動かないで、サンジ。火傷させたら困るし、ゾロもだめよ」

ちょっかいを出してくる剣士。すぐに考古学者に腕を生やされて止められた、

「おれァ、ボタン一つでウェーブになれるぜぇ」

「フランキーすごいぞ!!」

「でもぉ、たまには他人にしてほしい」

「そこから泣いたー!?」

「わしも……

「私は……

「お前らが出てったらややこしくなるだろ!とはいえ、ライブ終わったらおれにもよろしくお願いします、サンジもロビンも!」

今回に関しては話に入るとややこしくなる組に狙撃手がツッコミを入れれば。

「じゃあ私もこのあとウェーブはいいから2つ編みにしてほしいな。サンジくんとロビンに」

「あー!!ずりぃぞナミー!」

「私は欲張りなの。どう?」

「ナミさん喜んでぇ!!」

「ふふ、もちろんよ。ナミのオレンジの髪も明るくて大好き」

「ふふっ、ありがと」

「むー!やっぱおれもーーー!!」

きれいに航海士が話をまとめて、料理人が目をハートにして喜び、考古学者がくすくす笑って、船長がむくれて、会話が盛り上がって、いつもどおりの一味になるのだった