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sevendays23
2021-08-12 19:51:13
4824文字
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油断大敵
お題を頂いていつもの性癖話を丁寧に書いてみました
「油断大敵だな、麦わらの一味」
森の中。大きな大木のそば。きり、と歯噛みする一人の男。逆さまの視界で、近づいてくる海軍中佐ジェルに対して。
「こんな罠に、引っかかってくれるとは」
散らかる、一端は集められた木々。薪かはたまた何かの開発か。中佐にとっては、どうでもいいことだった。
「っ、きもち、わりぃ」
「お気に召さないかな?お散歩中だった新しい生物兵器はずいぶんお前を気に入ったようだが」
まっすぐと地から空に生える細い円柱状の奇妙な生物の体長は5mほどか。逆Uにくねり、彼の体を上部でぱくりと咥えて晒す。
「木に擬態していたら、ノコノコと現れ勝手に庇って捕まってくれるとは思わなかった」
右手足はずぶりと柔らかな茶色いゼリー状の天面に埋められ動いても抜けず、宙にしなやかな肢体と金髪が溢れ、青いシャツの上のネクタイと共にだらんと垂れている。囚われていない左手と左足は重力任せにだらしなく下がり、中佐の眼前でぷらんと揺れていた。
「こいつに庇われ投げられた長鼻がいません!」
「逃げ足の早いやつだ、まぁ」
「っ、あ!」
「悲鳴でもあげさせてりゃ、くるだろう」
中佐が指を弾けば、ぐっと囚われた手足を強く握られ、ひくと身体をはねさせる。ゼリー状の何かなのに、噛みつきは蛭のようだ。男はにやと笑ったまま、逆さで痛みに潤んだ瞳を見下した。
「バカな男だ。あんな弱そうな長鼻を庇わなけりゃ、こんな情けねぇ姿を晒すことはなかったのに」
「るせ
……
あいつをバカにすると痛い目みるぞ」
料理人は素早く反論した。たとえ自身が情けない格好で囚われてしまい、今からこの身に何をされるかわからないとしても、麦わらの一味は、仲間をバカにすることを許さない一味だ。
「生意気だな、気に入った」
「うわっ」
中佐はその好戦的な態度ににたりとわらった。指を弾けば、逆Uの字が円柱に戻り、ぐわりと細身の体が空高く持ち上がった。
「あいつが来るまで」
「あ
……
!?」
「とことん、虐めてやろう」
一度焦りにはっと息を呑み、目を見開く。捕まった腕から重力に逆らって勝手にぐわりと引き上げられていく。かなり、高い。そして、
「がは!!」
そのまま急降下。強く背中から地に叩きつけられ、首を反らして息を苦しげに吐き出した。つう、と頭が割れ血が滲む。微かにひび割れた地に押し倒された様相で身体を投げ出して、口を大きく開けて、歪んだ視界を整える。
「どうだ、一撃で十分痛ぇだろ」
あざ笑うように、近づく足音。逆さの視界に映る、海軍コート。
「これを、何回してほしい?」
見下して近づいてくる男は、あからさまに優位性を現していた。捕えたこの男のデータはまるでないが、見たところ徒手空拳。強靭な手足を封じてしまえば悪魔の実でもない限り、邪魔が入らない限り、無抵抗だろう。
「っ、何回も、してる暇なんて、ねぇよ」
息をケホと吐き出し、割れて血を流した頭を地面に少し転がして、料理人は煽り返す。
「お前は直に、あいつに度肝を抜かれることになる」
先程の衝撃ですら右手足は放さず喰われ続け、高く掲げられたまま。しなやかな彼には決して苦しい格好ではないが、心地が悪いことには違いない。けれども構わず、口元を嘲るように緩め続け、
「油断大敵は、どっちのセリフだ?」
変わらず強気に、煽る。煽る。ちらと周りの海兵を念の為見やるもふるふると首を横に振った。誰もいない。彼を助けるものなど誰一人。ウソだ。ハッタリだ。そう表して。
「ならば」
中佐はにたりと笑った。優位性をわからずひたすらにこちらを煽る、加虐心をそそる眼前の男を、とことん苛め抜いてやろうと考えて。
「少しだけ、趣向を変えてやろう」
「
……
あ?」
「そいつは、一部形を変えることができる」
ゼリー状の物体は、ぐにゃりと形を変えた。捕らえた彼の右手右足はくいと持ち上げて縛ったまま、側面から分岐した一本の茶透明で平たい触手が、彼の首裏の隙間からつぷりと潜り込んできた。
「な
……
」
ぞわりとした感触に息を呑んだが、遅く。手のひらのごとく彼の口に迫り、ぐっときつく一度塞いだ。心地悪さに体をひくんと暴れるように動かす前にじわじわまた宙にぶら下げられていき、更に焦る。
「あっ!?」
もがき、抵抗しようと左手を動かすも、側面から伸びてきた別の触手が巻き付き止めた。抵抗できなかった細い指は、虚しく空気を揉むだけ。食いつかれた手足から宙吊りにされゆっくりと持ち上げられながら、鼻までしっかりと塞がれ息をも奪われていく。自由なのは強靭な左足のみ。それも微かに宙をひゅっときるだけになる。
「どうだ、冷たくて気持ちいいか?ゼリーの手は」
「
……
っ、く
……
か、ふ」
「まるで溺れてる気分だろう」
観察するように不意に体を糸人形のように宙吊りのまま途中でひたと止められた。垂れ下がる金糸や細い肩口がひくひくと跳ねる。こぼれた白い首をつぷりと回り、口をぎゅっと押さえつける冷たい触手。口をきつく引き結ぶも、酸素を微かに歯の間から零す様がゼリー状のそれに透けて見え、あからさまに顔を青くした苦しそうな様が見える。その様子に中佐は気を良くした。
「もっともっと、いじめてやってもいいんだぞ」
「
……
んっ、ん、くっ
……
」
「想像してみろ。このまま苦しいお前の体に触手をあちこち絡みつけながら這いずってやることも」
口鼻のみ塞がれ酸素をじわじわと奪われつつ、ぐったりとした体を左右にぶらんと脅すように揺らぶられ、そんな脅し文句を耳に吹き込まれる。
「全身をじわじわあの円柱の体に埋めて息を奪うことも容易にできるんだ」
苦しみに耐えるように潤んだ隻眼を必死にこじ開け、また同じ視線の男を逆さのまま生意気に睨み返し続ければ、にやと嘲笑われぎゅうとまた右手足を絞られた。しなやかな無抵抗の肢体はその痺れるような強い痛みにひくんひくんと上下することしかできない。
「だが、まずは」
「
……
っ、んん、ふ」
痛みに喘ぐような苦しい声、はたまた煽るような言葉は全て触手に呑まれ、消えていく。じっくりと観察を終え満足したか、じわじわと空高くまでその身を抱き上げ、攫っていく。
「お望み通り、そのまま叩きつけてやる」
「
……
!!」
「何度、でもな」
男は指を弾いた。ぐわりと彼の細身の体は再度無抵抗に浮き上がる。息を奪われ、時折、きつく手足を締められながら、また、地面へ強く、叩きつけられるだけ。
「必殺!!」
ただ、それは、敵の油断。捉えた獲物ばかりに集中しきったがゆえの。
「3連火薬星ィ!!」
茂みや木々の隙間を縫うように、飛ぶ玉。爆発音が、幾度響く。遮る。遠方より、飛来する援護。
「なぁ!?」
男は、見上げた。ぐにゃり、と熱さと痛みに奇妙な生物は揺れた。幾度と、ゼリーのように揺れた。
「っ、ぷはぁ」
ちゅるんと吐き出す。捉えた獲物を。締め付けと息苦しさから解放され、口を大きくかはりと開けて空で咳き込んだ料理人を。
「はい」
だが、その体が再度重力がまま落とされる前に。
「ナイスキャッチ」
颯爽と現れた音楽家が、ばふりと骨の腕で仰向けに受け止めた。
「大丈夫ですか、サンジさん」
「けほ、っ、はっ、まっ、た、く」
料理人は咳き込み息を整えながら、彼の腕の中で呆れたように呻いた。
「おせぇ、よ、クソっ鼻」
その視線の先には、隠れて弾を放った男。料理人に一度庇われながらも、仲間を呼んで、助けに戻ってきた男。
「ごべぇん!で、でも、お前だって、おまえ、だっでぇ!!!」
「わ、かった、わかった
……
悪かったよ」
ぐちゃぐちゃの言葉を吐き出してくる狙撃手に一度だけ瞳を閉じ、開いて、呆れながら息を整える。
「おい、ありがと、な。ブルック」
「ヨホホ、なんの。お気をつけて」
そして音楽家の肩を叩いて頼んておろしてもらい、ネクタイを緩めて、料理人は眼前の敵を見やる。グニョグニョと揺れながらも、まだこちらをかろうじて狙い来る奇妙な触手。もう弱点はわかった。
「詫びに、もすこし、援護しろ」
「あたりめぇだ!!!」
狙撃手はきりっとカブトパチンコのゴムを引き絞った。料理人はとんとんと靴を整え、足をこすりつけて回転させる。
「だから、っ、言ったろ?」
にぃ、と中佐をあざ笑う。時折未だ咳き込みながら、足を掲げて突き出す。先程捕らえていた右足が、轟々と怒りと灼熱に燃える。
「度肝、抜かれるって」
「くそおっ!!」
中佐はヤケのように指を弾く。料理人に襲いかかる、分岐した触手。もうあのときのように、奇襲は通じない。なぜなら。
「火薬星っ、火薬星っ、火薬星っ!!!」
援護の手が、それをさせない。襲おうとした矢先に、破壊されていく。
「悪魔風、脚」
そして、そちらにばかり気を取られていては、今度はメインを逃すことになる。
「画竜点睛」
先程まで虐めるだの叩くだので優位に立っていた関係は、今や完全に逆転した。
「ショットぉぉ!!!」
悪魔の如き灼熱の脚が、グニャグニャの身を容赦なく叩き砕き、黙らせる。仕返しとばかりに、黙らせる。
「なぁァァァ!!?」
情けない悲鳴。燃えながら、吹き飛ばされていく、生物兵器、彼方。
「あ、あれが」
「負けたァァァ!?」
明らかに海軍の士気は下がった。熱という弱点さえバレてしまえば、攻撃はいくらでも通る。あれはただの巨大ミミズ以下になってしまうのだ。
「く、くそぉ!撤退!!」
「あ、そっちやめといたほうがいいですよ」
二人から離れるように命令を出した中佐とすごすごとついていく海兵に、サラッと音楽家が忠告を入れる。立ちはだかる。バキバキと拳が鳴る音。かちゃんと刀が抜かれる音。
「
……
そこまでやんなくても、いいだろ」
「いーやっ、おれは地獄耳だからなっ。おれとサンジをバカにしたの聞こえたから、ボコボコにしてもらわねぇと」
「する方じゃねぇのか?お前は」
「おれはさっきの援護と庇ったサンジを助けれたのでじゅうぶんですっ」
「そうか」
倒し終えて息をつきながら、
「ありがとな」
「おれもっ」
にひっと笑う二人。音楽家は嬉しそうにそれを見つめる。かたや、海兵たちはひっと息を呑んだ。
「おれの仲間をバカにしたの、聞こえたぞ」
「運動にも、なりそうにねぇな」
強い兵器とやらは倒した。残るは雑魚のみ。虎の威を借る狐だった中佐並びに海兵はひっと怯えるだけ。
「覚悟しろ!!」
「ぎゃぁぁぁぁ!!」
悲鳴を背中で聞きながら、御愁傷様と息つき、煙草をぱくりと咥える。しゅぼっと、着いた火。狙撃手がおずおずと差し出したライター。
「どうも、お前もやるか?」
「おれは煙草より旬の魚のが好きだなー。薪集め直したらBBQだろ?」
「さらっと催促しなくても、今日は元々鮎の串焼きあるぞ」
「やりぃ」
煙草を味わいながら見つめる。バラバラになった木々は、まだBBQにちゃんと使えそうだ。
「あのクソ野郎に襲われて遅くなったが、予定通りやろう」
「あ、チョッパーにみてもらってからな。お前血ィ出てるし」
「ヨホホ、私も木運びとサンジさん運び手伝いますから吸っていいですか?」
「おれ運びはいいよ
……
一本だけだぞ」
「はーい」
「あー!!おれたちおいて楽しそうな話すんな!」
「酒も出せ」
油断大敵だったのは、やはりあちら側だったようだ。断末魔を聞きながら、先に戦い終えた者たちは一服、あるいは一息つき、すぐに終えたものは、彼方に吹き飛ばした海軍を一瞥すらせず、会話にくわわるのだった。
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