Privatter+
Font
Serif
Sans Serif
Color
Light
Dark
auto
Font size
Large
Medium
Small
Language
Japanese
English
Sign in with Google
Sign in with ID and password
Account ID
Password
Sign in
Forgot password?
Create account
sevendays23
2019-04-22 22:03:13
2739文字
Public
Clear cache
寝落ちの話
がたん。お昼終わって大きな音が、キッチンからこだます。甲板にいた彼らはピクリと背を跳ねさせた。
「敵襲か?」
「昨日の深夜にもあったのに?」
「それの復讐とか?戦ってたのサンジ君でしょ?」
「少人数だから一人で追い払ったって言ってたなそーいや」
「サンジー!どうしたー!!」
一味は顔を見合わせ話し合いながらキッチンの扉の窓をそうっと覗く。大きな音がしたっきり、他の物音はしない。しかし、料理人からの返事もないのだ。心配になって、顔を見合わせる。
「アッ!!?」
「どうしたブルック!!」
音楽家は扉を開けて飛び込んだ。一味は目を見開いて、あとを追う。
「サンジ!?」
途端に、声を翻した。開け放たれた椅子。その側に料理人がぐったりと横たわっている。音楽家は、人差し指を立てた。料理人をゆっくりと抱えあげながら。
「しーっ」
「へ?」
「おやすみになっています」
「え?」
音楽家の腕の中で、すう、すうと寝息が聞こえる。船医がじっと彼を見て、頭をうっていないか等忙しなく確認している。考古学者は、テーブルの上の新しいノートを見て、小さく微笑んだ。
「レシピを書く途中で、寝落ちてしまったらしいわ」
「なんだ、昼寝か」
「みたいね。心配して損した」
船大工と航海士は呆れたように料理人を見つめる。船長はじいと、音楽家によってソファーに横たえられ、狙撃手が慌てて運んできた毛布にくるまれた料理人を見た。すう、すうと穏やかに眠っている、ようにみえる。
「チョッパー」
「なんだ?」
「サンジ、疲れてんのか?」
船長の一言に、一味はぱちくりと瞬きした。船医は心配そうにうなずく。
「うん。寝たら治ると思うけど、疲れがたまってるみたい」
「なんで疲れてんだ?」
「コレだろ」
剣士は呆れたようにピラピラと新しいレシピノートをめくりあげた。あっ、と彼らの視線がノートに集まる。明らかな刀傷で、ビリビリと切り刻まれた別のノートがテーブルに広がる。それと同じ文字がいくつか、彼が開いたまま寝こけていたページに書かれているのがわかる。
「なるほど、彼はレシピを書いてる途中で敵襲にあい」
「大切なレシピノートを裂かれて」
「それの書き直しで」
「アホは疲れている」
「なにー!!!そいつぶっ飛ばしてやる!!」
「いや、サンジがもうぶっとばしたんだろ、たぶん」
「ブチキレて容赦なく蹴りそうだよなァ」
「でもサンジ、怒るけど悲しいんじゃないか?大事なノートなのに」
船医のしょんぼり悲しそうな言葉に、一味は口をつぐむ。確かに、そうだ。いくらきちんとレシピを覚えているとはいえ、改良されたものや出来立てほやほやのものもあったのではないだろうか。それを切り刻まれて、彼が悲しまないわけ、腹が立たないわけがない。そしてそんな悲しいことがあったのに、一味に黙って再生しようとしていたのだ。それはきっと疲れるだろう。
「
……
じゃあ、いい考えがあるわ」
そこで案を出したのは航海士だった。彼女の顔は、柔らかくて優しい顔をしている。その考えを聞いたとき、一味の表情は感嘆符と同じになった。
ーーーー
意識の縁、賑やかな声が聞こえる。わいわいと一味が集まる声だ。まさか、おやつの時間を寝過ごしたのか?焦って、意識を呼び戻す。
「
……
んっ」
料理人はうとりとした瞳を開けた。いつの間にか、ソファーに横になっていたようだ。いや、誰かが横たえてくれたのか。毛布までしっかり肩までかかっているし。
「あ?」
テーブルに一味が集まっている。何やらカリカリ書いているようだ。いやまて。そこには、切り刻まれたレシピノートが。
「お
……
」
「サンジ、まだおやつの時間じゃねぇぞ!大丈夫だ!ウソップ様がちゃあんと時間はかってるからな!」
「ご心配なさらず。ノートは順調に再生中ですよ」
「えっ」
料理人はかちんと固まった。考古学者がふふっと笑って、剣士が難しい顔で書き写していた新しいノートを見せる。ちゃんと料理人がいつも書いているように、でも、彼らなりの字で再生されている。
「いや、そんな、なんで」
「ひとりで一杯書くと疲れるから、みんなでかこうってナミが言ったんだ!サンジはもう少し寝てなきゃダメだからな!」
「そ。わたしが言ったの。あんた10分しか寝落ちてないわ。疲れてんだから寝てなさいよ」
「説教、されてからなァ」
「へ?」
思わぬ回答や状況に料理人はまばたきする。その間にぐいっと目の前につき出された切り刻まれたレシピノート。船長がむすりとして彼の顔のそばにどしりと腰かけた。料理人はぴこぴこと瞬きした。
「なんで黙ってたんだ!」
「そりゃだって、おれのノートだし。ちゃんと蹴飛ばしたし。おれの油断だし」
「お前の大切なもんだろ!!だったらおれたちだってそいつぶっ飛ばしてぇぞ!」
「
……
お前ら、よく寝てたし。少人数だったから」
「関係ねぇ!そーいうときは起こせ!!それかノートきられたってちゃんといえ!!」
船長は自身の大切な帽子に触れながら、きっぱりと言った。
「お前の大事なもんは、おれたちの大事なもんなんだからな!」
その動きで、料理人はわかってしまった。無意識なのから意識的なのかわからないが、きっと。
「おれの帽子が斬られたら、お前だって怒るだろ!」
言葉で想像通り浴びせられて、
「
……
そうだな」
料理人は小さく口許を緩ませた。納得したからだ。彼らの好意に、甘えることに。
「ありがとう、みんな」
毛布の中で頭を傾け、礼をつげる。一味はにっこりと笑った。いいんだ、当然のことだ。そう伝えるように。
「でも、一人寝とくのはわりぃよ」
「いーんだ。サンジは疲れてんだから!!一人が嫌ならおれも一緒に寝てやる!」
「わ、やめろせめぇ」
船長はばふりと毛布に潜ってきた。料理人は焦った顔になる。くすり、と航海士が笑った。
「字が大きいから更迭されたの、ルフィ」
「説教係兼昼寝係にな」
「むー。だって大きい方が見やすくていいだろ!」
「
……
ざまぁねぇな、船長。さっきまでおれに説教かましてたのに」
「もー!!いーからねるぞ!サンジー!!」
「わかったわかった。ウソップ、頼むぞ。ちゃんと起こしてくれよ」
「まかせとけ」
料理人はいたずらっぽく笑って、船長と一緒に素直に目を閉じた。大切なものを再生してくれたお礼に、今日も最高のおやつを作ろう。そう思って、寝ぼけたふりをして、もう寝こけた落ちかけの船長を引き寄せてやるのだった。
<end>
Reaction
If you make a mistake, you can cancel it by pressing the reaction.
Custom color
Reset color
広告非表示プランのご案内