私たち、カカオ島の市民は、誇らしくて仕方なかった。このホールケーキアイランドのすべてを救い上げたのは、チョコレートシフォンケーキ。そして、それを作り上げたのは、美しい美貌と優しさを兼ね備えたこの島に住まれているプリン様だ。婚約者に裏切られお辛いだろうに、それはそれは見事なケーキを作り上げ、ママの怒りを沈めたのだ。もちろん、プリン様の顔を曇らせたジェルマや魚人たちは、ご兄弟たちやママが仕留めてくれた。今ではどこかに捕らえたままにしているとも聞く。麦わらが逃げたのは腹立たしいけれども、そちらはママが今追いかけているから時間の問題だろう。
そして、カカオ島では、プリン様のチョコレートを求めてこのカカオ島にくる人々は一気に増えた。プリン様も、それに答えるようにチョコレートをたくさん作る。幸せな甘味と優しい口どけのチョコレートを、笑顔でたくさん、たくさん、つくっている。毎日、たくさん、作っている。ただ、ある者が言うには、プリン様がチョコレートをかき混ぜる度に時折表情がくもる時があるとのこと。またある者が言うには、プリン様の作られるチョコレートの味が、前よりずっとずっと優しくなって、前よりもずっとずっと美味しくなったとも。
でもまぁ、そんな噂は関係ない。私たちはプリン様を誇りに思っている。これからも、この先も、ずっとだ。
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どれ程のチョコレートを作れば、あなたのことを忘れられるかしら、サンジさん。1日も満たない至福のような甘い時間。ママからサンジさんの仲間たちを救うために作ったチョコレートシフォンケーキよりも、ずっとずっと甘い時間。
毎日のように見返すわ。あなたとの思い出。チョコレートをかき混ぜる時、なぜあんなことをしたのか、あんな思い出を残しておかなければよかったってずきりと後悔がよぎるのに、仕事が終わるとつい、見返してしまう。そして、フィルムのあなたに、つい毎日のように報告をする。そのときは素直に報告ができるのよ。あなたをバカにしたような態度をとることなしに。
今日は、チョコレートを昔からのファンの方に誉めてもらったわ。プリン様のチョコレートは、以前も美味しかったのに、今はそれよりずっと美味しくなった。甘くて、優しい味になったって。なぜかしら、サンジさん。あなたのチョコレートを、横目で、見た、から?あなたの優しさを、分けて、もらった、から?
「ヴ」
もう、甘い時間は終わったのに。どうして私はあなたを探してしまうのかしら。どうして毎日、この日に日に擦りきれていくフィルムを、涙で埋めてしまうのかしら。
それは、あなたが優しかったから?わたしの醜い心に、本物の優しさを残したから?わからない。けれど、きっと、そう。
「プリン様、どちらへ?」
「今日は少しだけ、散歩に行くわ。チョコレート、つくっておいたからお願いね」
「お気をつけて」
私は今日もチョコレートを作り終えた。前よりも甘くて、前よりも優しくなったチョコレートを。そして、あなたにもらった優しさを今日も胸にひっそりともって。
ーー……どこに、捕まっているのかしら。
ーーサンジさん、の……。
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