sevendays23
2019-03-06 21:31:03
1675文字
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大根の煮物のお話

タグ第4弾。
ありがとうございます!

大根の煮物(いかと柔らか)

それは急に考古学者の瞳に飛び込んできた。大皿の1つ。扇形に切られた大根はたっぷりと調味料を含んでいてつやつやで、イカは煮られてなおその食感を絶妙に残しているのが食べなくともわかる。他にもお刺身やお吸い物、ほうれん草のおひたし、だし巻き玉子などたくさんの美味しいおかずがあるのに、どうしてもそれにひかれてしまう。

「この煮物を出すのは初めてだっけ、ロビンちゃん」

他の一味がテーブルで女性に先に盛り付けられるのをそわそわ待つ間。ゆっくりとお箸が伸びてくる。ひょい、ひょい。大根といかがつまみ上げられて六角形の小鉢へ移されていく。ひょい、ひょい。重ねるように盛り付けられていくそれは、取り分けられてもなお美しい。七味唐辛子を添えられれば、ほんのりとスパイスの効いた香りが立ち込めた。

「美味しいよ」

料理人の子どものように柔らかな顔に、考古学者はありがとうと呟いてふっと口許を緩める。大人びた彼は食べ物のことになるとこうだと、彼女も最近わかってきた。

「じゃあ手を合わせて」

「いただきます!!」

賑やかな食事が、今日も始まった。考古学者が一番に箸を伸ばしたのはその煮物。初めて食べるから、味が気になってしまったのだ。まずは大根。つやつやてりてりの表面を撫でるように箸が掴みあげる。そしてゆっくりと、尖った先端を、ちょっとだけ噛った。

「!!」

びっくりして、お米の上に大根を欠片をのっけてしまった。ちょびっと噛っただけなのに、大根やイカの旨味と共に、調味料の効いた美味しい出汁がじゅわりと口一杯に広がったからだ。

「ししっ」

「旨味の洗礼を受けたな、ロビン」

考古学者は少しだけ頬をかあっと赤くした。気づけば、明るい声を発した船長と狙撃手だけでなく、一味全員がこちらを向いていたからだ。

……恥ずかしいわ」

「いいのよ、もっとそういう顔みたいわ、ロビン」

「いかもやわらかくておいしいぞ、ロビン!」

航海士と船医が続けざまに掩護射撃してくる。剣士はなにも言わずにもむもむとなにかを噛み締めていたが、やがてそれをごくんと飲み込んで、口まわりについた米を指でとりぱくりと入れながら、

「大根とイカを口にいれたあと、米を食え」

とだけいって、またおかずと米に戻る。料理人は偉そうに、と苦々しげに呻きながらも、

「ロビンちゃん、クソマリモが偉そうだけど、本当にお米に合うおかずだからやってみて」

……ふふ、わかった」

考古学者はくすぐったい気持ちがした。仲間との距離が、また少し縮まったような。だから、返事をしてごまかすようにイカと大根を口に入れて、噛み締める。

……!」

するとまたビックリしてしまった。軟らかくて食感が絶妙なイカ。くにくにとした歯応えの中に、すうっと繊維に歯が通り、ピリッと辛い七味や醤油やみりんの甘辛さを口に広げて旨味の洪水を引き起こす。優しい味に、面食らい固まる。

「ロビンちゃん」

「米」

「真似」

「すんなっ」

二人に言われてはっと気づく。そうだ、お米だ。ご飯を一口掬い上げて、口にいれる。噛み締める。甘い。しょっぱい。柔らかい。お米の甘味や食感が、おかずと調和して、美味しいを紐解いていく。口許が、勝手に笑んでいくのがわかる。

「しし、サンジのメシは美味ェし」

船長は一連の様子を見ていたのか、満面の笑みを浮かべていった。

「しやわせだろ、ロビン!」

考古学者は、船長の言葉をも頷きながら噛み締めた。この船に来る前、日々のご飯の時間がこんなにあたたかいものだと知っていただろうか。美味しいご飯と、それを美味しく食べるだけで、幸せだろうと笑ってくれるなんてことが、あっただろうか。

「ええ」

だから、こくんと幸せを飲み込んで、ふっと緩んだ顔を見せる。みんなみんな顔を上げて、美味しい食事に緩んだ柔らかい顔で、言葉を待ってくれていたから、彼女も応じるように答えるのだった。

「ここは毎日、世界一幸せな食卓よ」

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