sevendays23
2018-03-17 22:42:43
5832文字
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性癖アラカルト*1 飯ネタ→三強の飲み会

私「誕プレになんか書こうか」
友人「じゃあ……」
ってことです。タイトルは何となくです。
あと二段あります。

「昨日の賭け、覚えてるな」

爽やかな太陽が昇る朝だった。朝食をご機嫌に並べている料理人は、剣士のその一言に口許を歪める。昨日の船番。暇潰しがてらサイコロでした賭けの内容を頭に思い浮かべながら。

……いつだ」

「この島にいるうちにだ。店はお前の感覚でいい」

「わかったよ、じゃあ……

「なんの話だ?」

そこに挟み込まれた声は我らが船長。早々に歯磨きと洗顔を済ませて料理人と剣士の話に割り込んできた。彼らは顔を見合わせて、しかめる。

「こいつのまで払わせる気か?」

「こいつの分はこいつが持てばいいだろ。賭けには関係してねぇ」

「だーかーらー!!なんの話だ!!」

船長は二人の会話が気になるらしくむすっと口許を歪めながらがなった。料理人は仕方ねぇな、と頭をぽりぽりかく。

「ルフィ、今日カジノに行くぞ」

「カジノ?」

「そしたら、話してやるよ」

料理人のため息混じりの言葉。剣士はあくびをこぼしながら話は終わったとばかりに席に向かって行く。船長はようやくそこで顔を明るくしてこくりと頷いたのだった。

「おうっ!」

ーーー

片や赤いシャツに黒いネクタイ。片や青いシャツに黒いネクタイ。前者の船長はその鋭い勘で金を稼ぎながら、台を選んだりコインをいれるのを手伝ってくれる料理人から話を聞いた。船番の暇潰しの賭け。二つサイコロを転がして目の多く出た方が、相手の簡単な命令を聞くと言うものだ。

「一発勝負ってことで、転がしたら」

「ゾロが勝ったのか?」

コインを適当にスロットにいれながら船長が問う。

「いいや、引き分け。11と11。勝負はじゃんけん」

そのレバーをゆっくりと引きながら、料理人がため息混じりに応じた。

「50回くらいあいこして、おれが負けた」

777が三つ揃ってスロットからコインが溢れ出す。周りの観客がそれを見てぎょっと目を剥いた。流石、と呻いて料理人は箱の中にコインを流し込む。

「で、だ。やつが出した命令は」

「めーれーは?」

「美味い酒と美味い肴の店を見繕って奢れって」

船長に箱ごとどさりと渡し、料理人はぱくりと煙草をくわえた。

「おれが作った方が、安くて美味くて早ェのに」

「しししっ、そっか」

その話を聞いた船長は氷解したように嬉しそうに笑って箱を持ち上げた。料理人はむっと口許を歪める。

「なんか、おかしいか?」

「サンジが作ったらダメな理由がわかった!」

……あ?」

「ゾロにはそれ言うの簡単じゃねぇからだ!!」

料理人は訳がわからない様子でぱちくりと瞬きした。船長はコインがぎっしりの箱をつかみあげて換金所に向かう。

「おれもついてくぞ!自分のはこれで払うからな!」

「あ、おい、こぼすなよ!」

勝手に納得した様子の船長に、料理人は半ば飲み込めていないまま、船長が落としたコインを拾いながらついていったのだった。



まだ少し時間が早い夕方。料理人がきちんと夕飯を残る一味に作り終えてから、三人は街へと繰り出した。他の一味も一応誘ったが金銭的な関係やら今日は仕事があるやらで遠慮された。

「いい店見つけたんだろうな」

「一流が見つける店は一流だ、ったくよ。予約の時にいったっきりだから食ってねぇけどな」

「楽しみだなー!!」

カジノがあるからか、この辺りは賑やかな店が並ぶ。洋風のバーや唐揚げやオイスターの専門のバルなど、ライトがチカチカと照らされている店。

「今日はこういう気分じゃねぇ」

「わかってるっつってんだろ、黙ってついてこい迷子マン」

「あァ!?」

「ゾロすぐ迷うからな!おれが後ろからきょーは押してやるぞ」

「それはやめろ」

船長が背中を押してくるのを片手で止めながら、喧嘩混じりに料理人の後ろについて行く。剣士にも流石にわかっていた。いつもの格好でいいと呻いた辺り、きらびやかな店や堅苦しい店ではない筈だ。料理人はその考えの通りそれらの町を通りすぎて、閑静な住宅街に向かう。

「ここだここ」

「え」

「正気かてめぇ」

料理人が指さした家に彼らは顔をしかめる。木の板で組み上がった古い家。看板はなく、酒場とわかるものは外観からしたらなにもない。

「サンジ、迷子か?」

「失礼なこと抜かすのは入ってからにしろクソゴム」

とんとん、と二度ノックをして、がらがらと扉をあける。船長と剣士は顔を見合わせて首を傾げながらそこを開けた。

「閉めろよ、他のやつらにバレる」

料理人はぴしゃりと戸を閉じた。彼らはたちまち瞬きする。中にはまた、扉。ガヤガヤと賑やかな声が聞こえるその空間にはほんのりとだしのにおいが満ちている。

「隠れ家居酒屋、はいでぃ」

「はいでぃ?」

「ここはな」

がらがらと扉をあけると、彼らはその雰囲気に驚いた。

「1日に10組限定。一組にそれぞれ別のコックがついてくれる酒場だ。奇跡的にキャンセル出たんだと」

料理人はその顔をみてくつくつと笑みを浮かべる。入ったら、木の店内に廊下。右と左。それぞれ離れたところに扉が5つずつ。奥にはトイレ。一つ一つの扉からはがやがやと楽しげな声が響く。そして扉からただようにおいは全て違いこそすれ美味しそう。勝手によだれが溢れてしまうくらいに。

「いらっしゃい」

するとゆっくりと目の前に現れたのは、老婆。優しい瞳でこちらを眺め、にこにこと笑顔を浮かべている。割烹着には、5の番号札がついていた。

「5番で予約した者だけど」

「どうぞこちらへ」

手招きされて、廊下を歩く。彼らが入ったところは、一番最初の扉にあった。ゆっくりと戸を引き、開け放たれた光景に彼らは瞳を輝かせる。

「おんもしれぇ……!」

「へぇ」

不思議な形をしてあるそれ。くつを脱いであがると座布団四つにほりごたつがあり、ふすまを隔てた奥には小さいながらしっかりしたキッチンが置かれているのが見えた。思ったよりも広い部屋。暖かさに満ちた部屋。彼らはすっかり感心して、座布団に座る。料理人と剣士が向かい合わせ、料理人の隣に船長。箸とフォークが置いてある辺り、配慮が効いている。

「ほら、メニュー。マリモはまず酒を決めろ。お前はウーロン茶で、あと白飯食うだろ?酒嫌いなんだから」

「おうっ」

「お前は」

「一杯だけな」

彼らはメニューを広げて、思い思いのものを指差しながら食べることにする。船長は白飯をベースに、料理人は一杯だけ付き合ってあとは船長と一緒、剣士は人の金だとがっつり酒ペース。最初の一杯はウーロン茶とジョッキビールにグラスビールだ。いただきますとうめいてから、お通しのきんぴらをつまんで口に運び、胃に少しものをいれる。途端に彼らは顔を見合せた。目を点にして。口許をきゅっと絞って。

「もう、うめぇ!」

「あぁ」

「蓮根とゴボウがしゃきしゃきだな、手間かかってる」

これなら、他の肴にも期待が持てそうだ。彼らは期待を胸に飲み物を手に取った。

「よし、じゃあ乾杯するぞ、ゾロ!サンジ!」

「何に」

「乾杯すんだよ」

「いーだろ!!かんぱぁい!」

「へいへい、乾杯」

「乾杯」

彼らは嘆息しながらもがしゃんと杯を合わせる。それをごくりとひと口して、ふうっと息をつく。きんぴらの甘い後味にきりっとした冷たい苦味がくわわって。

「うまいな」

「な!」

「ほんとにな」

彼らは満足そうに口許を脱ぐって笑い合う。すると、最初に頼んだ料理がいくつか運ばれてきた。

「とりあえず、おつまみキャベツとはんぺん入りとりつくねに、おでん。それと白ご飯を二つです」

「うまほー!!!」

ずらりと並んだ肴もといおかずに、船長はキラキラと瞳を輝かせる。ほかほかと湯気をたてるおでんはおおぶりの具材から入ったときに感じた出汁の匂いをダイレクトに放ち、おつまみキャベツは鮮やかな薄白い緑と和えられた昆布、隠し味のにんにくがほんのり香ってくる。つくねはミニハンハーグくらいの大きさで見た目からして文句なく、焦げ茶色のたれが肉を覆っててりてりだ。白ご飯や酒が明らかに進むだろう食材たちに、彼らはごくりと生唾を飲んだ。

「おれつくねっ!」

船長はフォークでつくねをさして口にはこんだ。口許にたれがまとわるのをペロリとなめとりながら、そのゴムの頬に丸々一個ねじ込んだ。もぐりもぐりと噛み締め、途中で白飯も一口か二口分スプーンで差し込んでぐっと体を震わせる。

「うーっ、うんめぇ!」

「こりゃビールに合うな」

「たれが甘辛くてちょうどいい……ふぅ」

剣士もそれをご機嫌で平らげてジョッキを傾け、料理人もグラスビールを飲み干した。次は、と料理人は白飯を引き寄せる。剣士はその間にニンニクがアクセントのおつまみキャベツをぱりぱりとつまみ、ジョッキをあっという間に空にしようとしている。

「ふぁへいほいへ、ほはっはな」

「稼いどいて良かったのはそうだが口にものを入れたまま喋るな」

料理人は手早く船長に一撃入れた。そして、目の前の湯気をたてたおでんをじっと見つめる。だいこん、ちくわ、こんにゃく、すじ……たくさんの具が食べられるのを待っている。

「サンジ、さきとっていーぞ!」

「いっこずつあんだからとっとと決めろ」

……じゃ、ちくわから」

彼らの勧めを素直に受けながら、ひょいっと器用に箸でとって、ちくわをつまみ上げた。出しを染み込んだちくわはその色にそまり、箸に挟まれてふよふよゆれている。それをふーっと湯気を吹き散らして冷まし、がぶりと白飯の上で噛み締める。 魚の擂り身のぷりぷり感と一緒にしょっぱいこくのある出汁がじんわりと溢れだしてきて、思わず白飯を一口。

「出汁がしっかり染みててうめぇ」

「ししし!じゃおれも肉ー!!」

「おれは熱燗にして大根だ」

お皿に山盛りあったおでんが、つくねが、キャベツが、白飯に酒ももちろん、箸やフォークが伸びて次々となくなっていく。食べ盛り、飲み盛り三人集まれば、あっという間に皿は空になった。



「もっとボリュームあるもんが食いてぇ」

「にーく!にーく!」

「わかったから落ち着けって」

メニューを見ながら、彼らは追加を考える。先程だされたものは全てうまかったから、自然に期待が上がってしまうのだ。

「お待たせしました、唐揚げとだし巻き玉子、おかわりの白飯とワ酒です」

「きーたーー!!!」

「落ち着けバカ」

大声て騒いだ船長は、手早く剣士に押さえられた。皿に盛られた唐揚げはあげたてで、しゅーしゅーと未だに音をたてている。

「すんげぇ、うまそう!!!」

「先に食えよ。レモンかけるか?」

「あー。おれはかける」

「いいのか!かけてくれ!」

船長は待ちきれないように料理人がレモンを絞ってくれるのを見たあと、おおぶりの唐揚げにフォークを伸ばしてかじりついた。さっぱりとしたレモンの味、かりっとした衣を楽しむと、醤油味のぷりぷりとした弾力の鶏肉が顔を出した。じゅわりと口一杯に肉汁が広がってえもいわれぬ。船長の顔は幸せそうにとろけた。

「うめへへ」

「ほんとだ、うめぇな」

「酒にあう」

「白飯にもな」

「あー」

白飯と酒をかっかと放り込む。どちらにもあうおかずは至高だ。特に唐揚げとくれば、ぐいぐい、がつがつと彼らは貪るように酒と白飯を消費していく。

「ちょっと優しい味がほしくなったら」

「これだな」

剣士と料理人はふるりとしただし巻き玉子をつまんだ。柔らかくてふるふるしたそれを、まずはそのまま。柔らかな卵の味とじゅわりと甘じょっぱい温かなだしが口一杯に広がる。ほう、とため息が漏れた。

「あ?どうしたルフィ」

「食わねぇのか」

口の中で幸福のだしの味が残るのを楽しんでいると、彼らはそこでようやく異変に気づいた。船長が、箸でだし巻きをつまもうとして失敗している。むーっとふくれながら。

「何やってんだ」

「フォークは」

「ゾロとサンジがうまそーに箸で食うからやってみたくなったんだ!」

船長はそう主張した。料理人と剣士は顔を見合わせる。先程から頑張ってはいるが、卵焼きは崩れていくばかりだ。

「仕方」

「ねぇな」

同じ台詞と同じため息をはいて、ぴたとかたまった。

「真似」

「すんな!!!」

船長は彼らを見て嬉しそうに笑った。言っていることだけではなく、やってることも同じだった。箸でだし巻きを一つずつ掴み、船長の方に差し出している。

「ありがとうっ!!」

ぱくりと二つ同時に平らげて、幸せそうに身もだえした船長。料理人と剣士は呆れたように口許を緩めて肩を竦めたが。

「ふふっ」

ウーロン茶のおかわりを持ってきた店員兼コックがくすりと笑っている。料理人はキョトンとした。

「悪い、うるさかったか?」

「いいえ、仲がよろしくて楽しくなってしまって」

「だろっ」

船長はぐいっと料理人と剣士を両脇に引き寄せた。

「おれ達、仲間なんだ!!」

「あら、いいこと。もう少し食べていかれる?」

「あぁ!食べていくっ!!まだまだ食えるぞ!な!」

「わかったから」

「引っ張んな」

そう呻きつつも二人の顔は満更でもなさそうで。それは店員の口許をいっそう優しく緩ませるのだった。



「またどうぞ」

「今度は仲間をつれてくるよ」

「あー、食った食った!!」

「こりゃ、いい夢が見れそうだ!」

たっぷり飲み食いして、たっぷり喋った彼らは満足げに夜道を歩いていた。思ったより安くて、料理人の懐は大分助かったらしい。船長も稼いだ残りのお金がいくらか余ってしまうくらいだった。

「とりあえずこれで賭けは終わりだな」

「あー」

「いや、まだだ!!」

「へ?」

「あ?」

まさかの船長の言葉に、料理人だけでなく、剣士も声を裏返した。船長は残ったお金を振ってにっとわらう。

「船まで競争!!」

「あ!まてクソゴム!フライングは卑怯だ!」

「負けねぇぞ!」

「そっちは船じゃねぇよバカ!!」

これからもう一勝負とばかりの、賑やかな声が静かな夜にこだますのだった。