sevendays23
2017-04-08 19:45:42
3747文字
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熱ネタ(巨人が襲ってくるあれ)

前提:一味がみんな熱にうなされている
   兄さんも苦しいけどたまたま見聞が発動して敵がきたと告げたので起きてしまった

「だい、じょうぶ」

料理人はぜいぜいと息を散らしながら、サニー号をちらりとみやった。今、一味は熱で眠っている。彼らを殺そうと襲いくる巨人から守れるのは、たまたま起きている自分しかいない。

「みんな、おれが守る」

体を、炎が包んだ。料理人は、静かに巨人を睨む。たん、と地を蹴り、飛んだ。



「ほぉ、まだ動けるのがいたとはな」

巨人の男はにんまりと笑って飛んでいる料理人を見た。料理人は息を散らしながら、巨人を睨む。

「お前らの……目的はなんだ」

「目的か。簡単だ」

巨人はにたりと笑った。

「おれたちは人が苦しむ顔を見るのが好きなだけだ」

……たちが悪ィ」

料理人は熱い息と共に吐き捨てた。どうやって、この巨体を倒すか、頭の中で必死に組み立てていた。どのくらい、自分には力が残っているか、その采配がまるでわからない。だが、一つだけ策はあった。その策が男を上回れば、勝てるはずだ。

「ほぉ、おれを倒そうってか」

巨人はにたりと笑った。

「悪いが、手加減はできねぇぞ」

手を伸ばしてくる。料理人はまっすぐに男を見て、抵抗しない。

「う、っ」

「くく、やけにあっさりじゃねぇか」

男はにたりと口の端で笑みを浮かべて笑う。料理人を簡単にわしづかみにし、顔の前でさらしたまま。

「安心しろ、仲間全員」

「っ………!!」

そのまま全身絞められる。熱が、ぐうっと上がるのを感じた。意識が、揺らぐ。だが、まだだめだ。時間を、稼がなければ。

「拷問を頂いてもらうまでは殺さない。この、一味ごと」

ひゅんひゅん響く、奇妙な音。知らない敵には有効打だろう。サニーが、獲物が、空を飛ぶことは。

「な・・・!?」

今だ、気を緩めた。料理人は、ニヤリと弱々しく笑った。

「悪魔風脚……

「ぬ!?」

全身を覇気の熱で焼く。巨人の手を。すると巨人は耐えきれなくなって、手を放した。

「首肉シュート!!」

「がァ!?」

渾身の一撃は油断していた首に突き刺さる。焼けつくような痛みは巨人の意識を奪い、料理人をつかむ手を緩めた。巨人はそのまま、海に吸い込まれていく。料理人は、脱出し、とんだ。

「たお……した」

料理人は、安堵の息を吐き出した。自身はまだ何とか空を跳べている。急いで船に戻らないと、落ちてしまう。

「そう、一人はな」

すると、海から声がした。水が盛り上がる音がして、黒い大きな影がやがて浮かぶ。料理人は、舌打ちした。

「まったく、病人相手に何を手こずっているんだ」

新手も、巨人だった。先程より大きく、腕には無数の傷跡があった。あれほど大きな体で、サニーが捕まってしまったらひとたまりもないだろう。

……仲間には、手ェ出させねぇ」

料理人は、力を振り絞るように巨人を睨んだ。巨人はあからさまに呼吸が苦しそうな料理人を見て、そして、遠くに見えるサニーを見て笑った。

「相討ち覚悟か、よかろう。気が変わった」

ゆっくりと空を飛ぶ料理人に近づいた彼の笑みは、怪しく笑っていた。

「仲間は助けるかわりに、お前だけを拷問好きの親方に献上してやる」

……!」

何か呻こうとした。だが、よろ、と視界が揺らぐ。視界を整える前に、巨大な手が彼を軽々と捕まえた。小さな悲鳴。荒い息の動作を巨人の手は感じ取っていたらしい。ぼやけた視界で睨み付ける彼を見て嫌らしく笑う。

「ブリスに痛め付けられて、その熱」

なめ回すように見て、巨人はにたついた。

「口以外は、限界らしいな……!?」

巨人は顔をしかめた。料理人の息の音がいっそう荒くなる。

……勝手に……きめんな……っ!」

足が、手にめり込んでいた。料理人は、さらにそれを食い込ませる。だが、男にダメージは少なかった。額に怒りを浮かべ、彼を掴む手を強くする。

「こさがしい!」

「っ!?」

ふわり、と彼の身体が浮いた。天高くあげられ、彼の瞳には、海が映る。

「頭を冷やせ!!」

料理人を掴んだ手を、男は海に突っ込んだ。ごぼり、と沈む音。冷たい海水が、熱の彼を包むだけでない。今のうちに、ともがけば、絞めると同時に息まで奪っていく。料理人は、息をごぼりと吐き出した。海水が、口内に溢れていく。

……ふん」

海から手を引き上げる頃には、息を苦しげに荒らして、ぐったりとした料理人が力なく捕まれるだけだった。乱暴にふり、ニヤリと笑う。全身から冷たい水を滴らし、苦しそうな彼を見下すように。

「少しは、身に染みたか」

……し、るか」

「まだ、意識があるか」

やっと吐き出された声。ニヤリと笑いまた手を動かした。指が彼に容赦なく絡み付き、ぎりぎりと弱りきった体が絞められていく。瞳を閉じ、歯を食い縛って耐える。ただ、抜け出そうと体を捩っても、さらにきつくしめていく。さらに、容赦なく親指が彼の首に絡み付いてきた。ひやり、と嫌な感触を覚える。

………っ!!」

「安心しろ。殺しはしない」

巨人はゆっくりと歩き始めた。仲間の船から離れるながら。にたついて。

「ただ、道中。たっぷりと苦しめ」

巨人はそう言い放つと力を強めた。強い熱が手のひらに触れるがお構いなしに。めき、と彼の体が生々しく鳴った。呼吸が、酸素が吐き出される。男が船を離れる度、じわじわと。男は料理人が抵抗できないことを楽しんでいた。

……っあ…………

細い身体が、首が、みしみしと痛々しく鳴る。こぼした小さな悲鳴と共に、力無く意識が奪われる。だが、微かな視線は、眠っているだろう仲間の方に。巨人は嘲笑した。

「心配するな、お前の仲間には手をださない」

「ほん……だな……!う……

「あぁ」

ゆっくりと手が開いた。料理人は、手のひらの上で横たわって息を吐き出した。もう、動く力はない。だが少しだけ安堵した。手が開いたからではない。仲間は無事だと言われたからだ。料理人は、覚悟を決めた。この手の動きは、ぶりをつけるためだ。安心させておいて料理人をより苦しめるために。

「そのかわり、いろいろ、遊ばせてもらうぞ」

男の指先に、力がこもった。料理人は風圧を感じ、体をこわばらす。襲いくる強い痛みに堪えるように。だが、指が体に触れめき、と痛々しくなった。

「ぐ………ぁ」

けほり、と息を吐き出した後。それ以上もう、悲鳴もこぼれなかった。さらに指が容赦なく食い込み、体が、心が支配されていく。ぐらっと視界が揺らいでフェードアウトした。くてりと力が抜けた体はただ手のひらで締められるのみ。

「くく、苦しいか?辛いだろう?」

男はさらに手に力を込め、歩みだした。手に入れた玩具を眺めるように、揺らす。

「安心しろ。一思いには殺さん。島まで仲間たちのかわりに、ゆっくりと、なぶってやるからな」

今度は、両手で、彼を閉じ込め支配した。増していく苦しみの中、料理人はぼやけた意識で安堵した。ゆっくりゆっくり、もったいぶるように仲間の船から彼が引き離される。直に、仲間は安全になるはずだ。耐えきれば。意識を、保ち続ければ――

「ゴムゴムの……

だが、頭の中でなにかが揺れた。風の音。軋んだ音が響き渡る。

「ライフル!!」

「ぬうっ!?」

男は声をひっくり返した。握った手のひらから、料理人が力なくこぼれ落ちていく。それを、手の主はそうっと肩で受け止めた。濡れた額に手を当て、ぎりと唇をかんだ。

「仲間の、かわり?」

怒りを帯び、苛立つ声は、力強い。

「サンジも、仲間だぞ」

熱い額。冷たい震える体。痛みの残る体。咳き込むような苦しげな息。全てを受けとめるように背をさする。料理人は、閉じた視界を、困惑したように弱々しく開いた。刹那、熱が全身を倦怠させ朦朧とした意識をさらに蝕んでいく。痛みが、呼吸困難を引き起こす。だが、霞んだ視界は、命をかけて守ろうとしていた筈の仲間を、船長を捉えていた。

…………フィ……

「サンジ、大丈夫か」

咳き込みながらの弱りきった声を、優しい言葉が受け止めた。帽子が、痛む頭を包む。上着が、そっと体にかけられた。

「もう、無茶すんな。あいつはおれがぶっとばす」

……な、んで」

「あとで話すから。もう寝てろ」

その言葉につられるように、ぐったりと弱りきった体がもたれかかる。相当体に鞭打っていたのだろう。相当、痛め付けられたのだろう。息を荒く漏らす仲間の頭を船長は優しく叩いた。

「一人で戦って、しんどかったろ」

船長は、彼を抱えたまま拳を構える。

「暖かいサニーで、みんな一緒に休もうな」

優しく言い、静かに目の前の男に向き直る。

「なにがぶっとばすだ、このしにぞこな」

男の背は震えた。船長の顔から、先程の優しい顔はとうに消えていた。

「失せろ」

腕が、静かに硬化する。あり得ない、と男は呟いた。彼はまだ熱や病気に体をがんじがらめにされてあるはずだ。なのに、なぜ。

「ゴムゴムの……グリスリーマグナム!!」

船長の拳は巨人の横っ面を容赦なくたたき、吹き飛ばした。