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著者: 雷歌/らいと
2023-04-08 22:00:39
2149文字
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戦セバシリーズ
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【戦セバシリーズ / デイⒷ】モーサリアンワンドロライ#4月8日
お題:確かな希望を胸に
その日、俺は少しの期待を抱いて目が覚めた。
何を隠そう、本日は旦那様が泊まりも含めた他家へのパーティーに招待されたからだ。それにセバスチャンも付き添っている。セバスチャンはいいとして、旦那様がいないということは屋敷内での爆発騒ぎが起きないということである。もちろんこの屋敷には旦那様以外の騒動の元がいるにはいるが、今や強力な使用人がそろっているのだから、なんとかなるだろう。
ということは、ゆっくり仕事もできるはずだし、あの人とティータイムする時間ぐらいなら取れるかもしれない。
──そう思っていた。
「うおら、ヘイヂ! 止まれ!」
『ヒャッハ─────!!!』
朝から余計なものを摂取したヘイヂが、血走った目で屋敷中を爆走している。時には廊下に出て、時には壁をもぐって。追いかける俺たちをおちょくるように走りまくっていた。
「なんて、こと、マイヤーさんもいないのにッ」
マイヤーさんから託されている薙刀を手に、ツネッテが悔しそうに言う。Ⓐはすでにへばっているようで、力ない足で歩いてきている。
頼りにしていたヤンさんは、こういう事態だからこそお前らだけで対応できた方がいいだろ、といって手を出さないようだ。クラリスさんは再び厨房にさえ手出しされなければ我関せずだし、エルさんは言わずもがなだろう。
「いやー、悪いな。まさか試作中のホウサンダンゴを食われるとは」
カウボーイさながらの綱を手にしたデイビッドさんが、へらと笑って言う。実は、また元気になったヘイヂ対策にとホウサンダンゴの改良を重ねていたらしいのだが、中でも今日作ったのは特別にヘイヂのエネルギーになってしまったようだ。
「というか、今日はデイビッドさんはお休みするのかなあと思ってました」
昨日の夜会をしていたところ、デイビッドさんも明日はいるという報告を受けて驚いたものだ。コックが休めるのは屋敷の主人がいないときぐらいだろうに。それに、普段からセバスチャンにあらゆる雑用も任されているのだ。今日はそういうこともないのだから、本当の本当にチャンスだったのではないか。
「まあそれも考えたんだがなあ。一緒にオフを楽しめる子がいないんじゃな!」
そう言いながら笑顔を浮かべてこちらを見る。
「ええと
……
すいません」
「まあ、セバスチャンから屋敷の留守を託されたんだから、しょうがいないなー」
緊急時にはヨハンさんを頼るのだが、通常時であれば一番勤務期間の長い俺にセバスチャンは任せたぞ、と言った。屋敷の執事から言われる重みたるや相当なものではあったが。
いまやこのざまだ。
「留守、見事に預かれてませんね
……
」
「いやこれは俺が悪い! 帰ってきたら俺から説明しておくな」
「いや、でも」
「いやいや厨房で油断してた俺が悪いんだ」
「俺もヘイヂのことを油断してたわけですし」
「いーや、Ⓑくんは悪くない!」
「緊急事態にいちゃいちゃするのやめてもらって良いですか」
呆れた目をしながらツネッテがそう突っ込む。二人して苦笑して、それもそうだと頷いた。まずはヘイヂを捕まえて、それから身動きできないように簀巻きにしなければ。
数十分後、ホウサンダンゴの効果がきれたのか、電池が切れたかのようにいきなりパタリとヘイヂは倒れた。ぴくりぴくりと痙攣する様は、正しくホウサンダンゴを食べたアレのように見えなくもない。
油断はもうしないので、その状態で簀巻きにしておいた。
「あの様子だと、遅延性だったのかもしれないなー。どの材料が良かったのか
……
」
「しばらく試作はなしですからね」
厨房の片付けを手伝いながらそう釘をさせば、少ししょんぼりした様子のデイビッドさん。それから仕方ないかーと笑った。
「でも、厨房にヘイヂを入らせるなんて、すごく久しぶりのことですね」
「そうだなー、元気のなくなったヘイヂは対処簡単だったし、最近はクラリスさんもいたしな」
「そいつは君のことを考えて油断していたそうだよ」
被害のないものを運びながらクラリスさんがさらりと言って厨房から出て行った。しばしの静寂。それから、
「へ?」
間抜けな声が出た。
「んん、いや、今日はのんびり仕事ができそうだから、Ⓑくんと一緒にいられるかなあって考えてたんだ」
デイビッドさんを凝視していれば、かの本人は少しだけ目線を逸らして照れた様子で言う。
「まあなんだ、少し浮かれていたというか」
デイビッドさんの言葉に、おかしくて笑い出した。
「なんだ、俺たち同じこと考えていたんですね」
朝の目覚めが良かったのも、俺も同じ気持ちだったからだ。何事も起きなければ、デイビッドさんとのんびり過ごしていても咎められないだろう、と。
「まあ、バタバタな午前中になっちゃいましたけど、午後は時間取れるかもですし」
「それもそうだな。その時用に茶菓子作っておくな!」
「はい、楽しみにしています」
ある程度片付いたところで、今度は他の場所の片付けをしてきますねと言って厨房から出た。
楽しみな約束があるというのは、この先に待っている大変な仕事も苦にならない気がする。約束を無下にしないためにも、さあてがんばるか、と気合を入れた。
end.
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