著者: 雷歌/らいと
2023-01-20 12:48:57
2163文字
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【#twst / モブランド】モブが推しを語るだけ - 少年たちの葛藤編 -

モブランドに合わせて書いたもの。
フロトレとイデ監前提のお話で、ただただモブくんズが語っているだけのお話です。
七隈さんのお話と同じモブくん→https://poipiku.com/1087285/8182104.html

 それは、いつの日のことだったか。
 人目がつきにくい場所で、この世で最も尊き人物がいつもの道具越しでなく直に人と話している姿を見て、ふと友人が珍しく熱く語っていた姿を思い出していた。
 寮は違えどもクラスは同じで、おそらくオレが一生仲良くできないであろうと思っていた獣人族である友人、ニマ・クレイグ。彼と仲良くなったきっかけはとりまさておき、今では照れ臭くも親友と呼べるぐらいの仲である。どんなことも、わりと包み隠さずいろいろ語り合っている。いや、語り合っているというか一方的に話していることが多いのだが。なんだかんだ言いながら、こちらの語りに付き合ってくれる良い奴なのだ。
 話を戻すと、確かあれはオレの部屋で課題を片付けている最中だったか。そろそろ終わりそうだなと余裕が出てきたときに、そういえばと思い出したようにその話題を口にしてしまった。いやだって、ニマの推しがハーツラビュル寮・副寮長のクローバー先輩だと知っていたから、だからこその話題だったのだ。
「最近、クローバー先輩ってあの人とよく見かけるな。あの──」
「フロイド・リーチ?」
「そうそう、その……って、え?」
 改めてニマの顔を見やると、まるで苦虫を嚙み潰したかのような表情になっていて、おや、と首をひねる。
「仲がいいんだな、と言いたかっただけだが、その顔は、もしや……?」
 ゆっくりと頷くニマに、はは、と苦笑いを返した。どうにも、最近少しクローバー先輩の話題が減ったなと思っていたが、どうやらその事実を消化するのに時間がかかっていたのだろう。
 しかし──
「お前がクローバー先輩を推してるって、そういう意味だったっけ」
「いや違う! そりゃ、あわよくば先輩の猫ちゃんになりたい的なアレはあるけども! それは恋人になりたいって意味じゃねーから!」
「ああ、うん」
 全力で否定された。ひっかかる言葉はあれども、今までのクローバー先輩語りからしても、そういう路線からはそれているな、とは感じていたので間違いないだろう。
「まだ消化不良みたいな顔してんのな。あれじゃねぇの、幸せならオッケーです、てやつ」
「そう、そうなんだよ。でもな、相手は、あの、フロイドリーチだぞ!? 暴虐が服着て足はやして歩いてるみたいなあの! それが? 我が寮の? やさしい副寮長と? なんでだよ〜〜〜!! そも何処に接点があったんだよ〜〜〜!? 話してるとこ見たことねーが!? なのにある日突然隣に収まってたんだよ!は、はあ───??? おいおいそのポジ欲してる奴どんだけいると思って!!」
 堰を切ったように言葉を走らせるニマに、しまったなあと思う。うんうん、と適当に相槌を打ちながら課題の最後の設問に手をつけた。まだ熱い想いが落ち着かないようなら、組み立て中だったガジェットでもいじりながら聞くか、と我ながら非道なことを考える。そうして、ふとトーンが落ち着いたことに気づいて、顔をあげた。
「まあでも、推しが幸せそうにしてんだから、あれが正解なんだよなあ」
 盛大な溜息をつきながら、どうやら心にもそう決着をつけたらしい言葉をもらす。そういうことだよな、うんうん、と頷くもどこか他人事である雰囲気を感じ取られて、じろり、と据わった目で見られた。
「お前はどうなんだよ、イグニハイドの寮長は。まあ浮いた噂ひとつもねぇけど」
「そうだなあ、あの人は恋人とか作らないだろうしなあ。興味なさそうだし」
──それに、あの家にいる以上、普通の恋人は無理なんじゃないかな。
 寮長の家のことは、イグニハイド寮では有名な話である。そちらの分野のことに特化している面々が多い寮生が、寮長の名前とあの家とを紐づけることは簡単だからだ。だからといって、本人が話さないのだから口にする者は誰もいないのだが。
「ま、オレだったら寮長に恋人できたら、心の底から幸せならオッケーです! て言ってやるよ。サムズアップ付きでな!」
「その言葉、覚えてろよ……!」
 そうして冒頭に戻る。
 オレの推しである寮長が直に話している人物、あまつさえ、控えめでありながらも見たことないような笑みを向けられている人物は、入学式から何かと騒がせているあのオンボロ寮の監督生だ。
──いつの間に仲良くなったんだ?!
 もちろん、寮長の動向をすべて知っているわけではない。やたらとあちこちに行くようになったなあとは思ってたし、それにオンボロ寮監督生も一緒にいたことは知っている。だからといって、その監督生以外にも一緒だった人もいるわけで、あそこまで親密な雰囲気を出せるまでになれるだろうか。
 監督生は異世界から来たのではないか、という噂がある。これは一部の、そういうことが好きな人間が口にしたに過ぎない。まさかそんな馬鹿な、と当初オレも聞き流していた噂だ。
 でももし本当だったら? 二人に待ち受ける結末は、どう転んだとしても悲恋なのでは? 馬鹿を言うな、オレはハピエン厨だ。
 衝撃的なことを目にした時は、冷静な判断はできないものだ。足早にそこから離れて、スマホを取り出してニマへ向けてメッセージを早打ちする。
──緊急事態発生、オレの部屋に集合。
 どうやら、サムズアップ付きで言えそうもない。


end.