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著者: 雷歌/らいと
2022-02-23 20:56:31
1858文字
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アクナイ
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【akni / 傀博】「縛る」
ノアの休日2に合わせて書いたもの。
「これは一体どういう
……
」
ドクターの執務室に入室したアーミヤは、中の様子を一目見てそう零した。
執務室にいるのはドクターと本日の秘書を務めているファントムだ。それは問題ない。問題ないのだが。
「ファントムさんが、何かされたんですか?」
なぜか、ドクターがファントムを後ろ手に拘束していた。ファントムが抵抗をしていない──彼がドクターからされることに抵抗をする様子は想像できないが──様子から察するに、無理やりそうなったわけでもないようだが。
「ちょっと手伝ってもらってるんだ」
「お手伝い
……
?」
「そう。さっき、作戦記録の録画を観てね」
その録画には、敵を拘束する様子が映っていたのだと言う。前線に自分が出ることはないから早々にそういう場面には出くわさないだろうが、万が一拘束の必要性ができたら出来るかどうか。そう考えたら知的好奇心が沸いた、とでも言うべきか。
ともかくやってみよう、ということに成ったのだという。
「よし、今度はどう?」
最後にロープを軽く引っ張って締め上げる。何度か縛っては、その具合をファントムに聞いているのだろう。彼の顔を覗き込みながら聞いたが、ファントムは軽く首を横に振った。
「まだ緩いようだ」
「そうか。見よう見まねではうまいこといかないものだね」
「ドクター、そろそろにしないと今日の分終わりませんよ?」
「あと一回だけ試していい? コツは掴んだ気がするから」
それでは後一回だけですよ、とアーミヤは頷く。ファントムの方にも念押ししてから、彼女は別の仕事があるため執務室を後にした。
一度縛ったロープを解き、もう一度調べた通りにファントムの手首へと巻いていく。最初の頃よりも手際がいいな、と自画自賛しつつ手順を進めていく。緩まないように常に軽く引っ張りながら。そうして先ほどと同じく最後の手順で締め上げた。
「うまくできた、と思うけれど。どうかな?」
そう問われたファントムは何度か後ろにある手をもぞもぞと動かし、それから軽く頷く。
「悪くない」
「おお、やったね」
「だが」
ファントムがそう言葉を続けると、目の前の姿に違和感を覚えた。なんだこの感覚は、と頭を傾ぐと
「私のような者には、意味がないだろう」
背後から声が聞こえた。驚いて振りむこうとすると、目の前の姿が煙のように消える。後ろには、先ほどまで目の前にいたはずのファントムの姿。
「いつの間に虚影と入れ替わって?」
「私がここに在るその時から」
そうか、とひとつ頷き床に落ちたロープを拾い上げた。
確かに変わった能力を持っているものには意味ないだろう。アーツを使えばこのようなロープも簡単に切れてしまうだろうし。
「まあ、ちょうどいいや。今度は、ファントムが私を縛ってみてくれるかい」
「私が
……
?」
「どのように動けなくなるのか、そしてどこまで動けるのか知っておきたいから」
そう言ってファントムにロープを渡し、背を見せて手も後ろへとやる。さあどうぞ、と言わんばかりに軽く手を動かした。
しかし、少し待ってみてもロープが手に巻かれることはない。不思議に思って背後へと視線をやると、ファントムはロープを見ながら何か思案している様子で。
「ファントム?」
「君が望むなら容易いことだ。しかしそれによって私から何かが現れるかもしれない。それでも構わないか?」
「君から、何が
……
?」
「それは分からない。知りたいと思うのなら、続けよう」
伽羅色の角膜にある黒い瞳孔が縦長に細まる。それはまるで獲物を射すくめるかのような目で、ゾワリと肌が粟立つのがわかった。
ファントムから何が現れるというのか興味がないわけではない。しかし、彼の言がまるで警告のようにも聞こえて、ドクターはゆっくりと両の手を上げた。
「そろそろ仕事を始めないと、アーミヤの言う通り終わらないかもしれないからね。やめておこうか」
「そうか。それは残念だ」
「えっ」
そうなの、と驚いてファントムを見やれば、彼は冗談だと微かに笑む。めったに魅せない笑みに心臓が跳ねるが、次の瞬間にはいつもの無表情に戻っていた。
何やら遊ばれているような気もするドクターだが、苦笑を浮かべ返す。そうして、執務用チェアに座りながら、またこういうのにまた付き合ってくれるかいと問うてみればファントムはひとつ頷いて。
「仰せのままに」
その言葉がとびきり甘く聞こえたのは、気のせいにしておこうとドクターは心の中で呟いた。
end.
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