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著者: 雷歌/らいと
2020-11-08 01:15:09
2453文字
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アクナイ
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【akni / 銀博】It’s always darkest before the dawn.
ひとと合わせお題:いくらでもくれてやる
「おはよー」
「変わりはないか、我が盟友よ」
「へ?」
いつもの調子でいつものように執務室へと入ったドクターは、執務室の中にいる人物を見て目を丸くさせた。彼の想定では、そこにいるのは別のロドスオペレーターであるはずなのだ。
それが、なぜかシルバーアッシュがいた。執務室に置いてあるソファへと優雅に座って。
「ええと?」
「今朝、ロドスのリーダーより今日一日盟友を見ていて欲しいと頼まれてな」
「え、アーミヤから? なぜ
……
」
「今日一日、お前は休みだそうだ」
「なぜ?!」
執務室にあるソファから立ち上がって、いまだドアに立ちすくむドクターの前にシルバーアッシュは歩み寄る。ごつり、ごつり、という足音ひとつにドクターの心臓は嫌なものを感じ取って早鐘を打っていた。
「ここ最近、働きづめらしいな? 無茶な働き方をしていると、心配されていたぞ」
そういう様にどこか少し怒りのようなものを感じて、これだ、とドクターは確信する。アーミヤがシルバーアッシュを頼るほどに、ドクターが疲弊している状態に彼自身がわずかな怒りを見せているのだろう。
だから足音にもいつも以上の重みを感じ取った。
ドクターはシルバーアッシュの言葉を否定できない。自身でもわかるほどに酷いことになっていることは自覚しているからだ。
「ええと、悪いけど、アーミヤには黙っていてくれる? 作戦記録の見直し、終わらせないと」
「そう言うことをわかっていて、私に頼んだろうな」
「そう。だから、どいてください」
ドアの前に立ちふさがって、そこから一歩も動こうとしないシルバーアッシュを見上げてドクターは笑みを浮かべながら言う。シルバーアッシュも目線を外さず、力強く言い返す。
「それはできない。お前は休むべきだ」
「だから」
「そんな酷い顔を、他のオペレーターにも見せる気か」
少し乱雑に顎を掴み、親指で目の下をなぞる。誰が見てもはっきりとできている隈に、シルバーアッシュの眉間へと皺が寄る。
顔色もいつも以上に悪く、青みよりも土気の方が強いようにも見えた。
「そんな働き方では、いつか死神にもっていかれるぞ」
「ハハッ、それでここの子たちが死なないのなら、私の命なんぞいくらでもくれてやるさ」
「盟友」
明らかに怒気のこもった低い声に、失言だったとドクターはハッとして顔を歪めた。
「忘れてくれ
……
疲れてるんだ
……
」
「ああ、そうだな。お前は疲れている。だから何度でもいう。お前は休むべきだ」
「けれど
……
けれど。私が休んでいる間に、私の知らない間に、ここの子たちが死んでいくんだ
……
訃報が入ってもすぐに弔いの言葉さえも送れない」
現在ロドス艦のある場所から遠い地ではあるが、そこに送られたオペレーターが何事かに巻き込まれて死んだという連絡が届いた。ドクターに課せられた任務ではないため、自身がそこにいればどうにかなったとは思わない。だが、その連絡が届いて数時間後にドクターは知ったのだ。もちろん休憩に入っていたためであり、オペレーターへの任務責任者ではなかったためでもあるが。
だがドクターはこのことで、改めて自覚した。自分がこうしている間にも、他国へ派遣されたオペレーターたちは避けられない事態により命を落としているかもしれない、という可能性に。
「もちろん、私がずっと起きていようと、死ぬときは死ぬ。わかっている。だが」
眠れないんだ、とまるで独り言かのようにか細く発せられた言葉と泣き笑いにも似た表情に、ドクター自身にも制御ができていない状態なのだと伺い知れた。
「そう、か
……
。だとしたら、ますますここはよくないな」
「え、ちょ、シルバーアッシュ?!」
シルバーアッシュはドクターの手を掴むと、無理やりに歩き出した。ドクターにはそれを止める力などなく、せめて転ばないようにシルバーアッシュに付き合うことしかできない。
やがてついたのは、運動器具の置かれているジム室である。暇を持て余したオペレーターや、軽く体を動かしたい職員などが自由に使っている場所がだ。
「ええ?」
「体を動かせば、疲れて寝てしまうだろう。今のお前には、それぐらい無理にでも睡眠欲を沸かせる必要がある。安心しろ、私も付き合う」
「いや、だからって、ここは
……
」
健康的なみんなと貧弱な自分を比べてへこみそうだ、と零せばシルバーアッシュは不敵な笑みを浮かべつつ顔をぐっと近づけて言う。
「他にも運動する方法はあるのだがな。そちらがいいというのなら、私の部屋かお前の部屋に行くか?」
意味ありげに頬を撫でられ、ドクターは一気に顔を紅潮させた。
「ほう? 少しは顔色がよくなったか」
「か、からうなっ」
とはいえ、頷けば本気でするつもりではあるのだろう。
ドクターは深くため息をついて、ようやく観念した。アーミヤがシルバーアッシュにお願いした時点で、ドクターはすでに逃れられないのだ。
「アーミヤはほんと人選が的確だ」
「さすがはロドスの王、と言ったところか」
「うん
……
わかった。付き合ってもらうよシルバーアッシュ」
「ああ、お前が根を上げるまでいくらでも付き合おう」
「お、お手柔らかにお願いします」
ドクターはその後、運動の途中で気を失った。体力の限界に達したのだろう。寸でのところでシルバーアッシュに抱え上げられ、二人はすぐさまそこから姿を消したという。
もちろんただ手早く支度を済ましてシルバーアッシュはドクターの自室へと連れて行っただけにすぎない。しかし、珍しくジム室に姿を現したドクターとシルバーアッシュであったし、その最後の様子に想像力の逞しい人物たちは大いに盛り上がったという。
翌日、ドクターは秘書オペレーターから自身とシルバーアッシュの噂について尋ねられた。もちろんドクターは否定する。しかし、多少血色のよくなった顔を赤くさせていたため、さらにあらぬ誤解をさせることとなったのであった。
end.
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