著者: 雷歌/らいと
2020-08-19 17:53:30
1914文字
Public ツイステ
 

【#twstプラスB / イデ監】料理できますよアピール!

マイ設定有。
監督生の名前はデフォルトの「ユウ」です。

 学園内の夜道、グリムに急かされて寮への帰途を急いでいる時、視界の端に青白い光を見かけた。
 ああたぶんあれは、と思い浮かべると同時に体はそちらの方へと方向転換する。
「また攫われますよ?」
「ひぃぃいいっ」
 過剰なほどに驚いて、イデア先輩はその身を縮こまらせた。
「か、監督生氏! なんでこんな時間に」
「それはこちらのセリフでもあるんですけど」
 問題児という認識からオンボロ寮の監督生という認識にアップグレードさせてからいくばくか。
 あの悲劇を忘れたのか、性懲りもなくイデア先輩はまた夜に独り歩きしているようだ。
「ぼ、ぼ、ぼく、ぼくは……
 口を幾度か開閉させる様子を見せてから、眼前にいきなりタブレットが押し付けられた。
「僕はサムさんにお願いしていた品物を取りに行っただけですし。それに今回は防犯対策はばっちりでござる」
 タブレットを通してイデア先輩の言葉が紡がれる。時折、これだけで授業を受けているようだけど、つまりこのタブレットを捕まえればいつでもイデア先輩とお話できるということだろうか。
 そろーっと手を伸ばせば、気づかれたのかタブレットは頭上高くに持ち上げられた。
「チッ」
「ヒィッ舌打ち怖い!」
「おいユウ! はやく寮に帰るんだゾ! 俺様お腹ペコペコなんだぞ!」
 頭の上でじたばたとあばれるグリムを軽くなだめながら、ごめんごめん、と謝る。
「イデア先輩を見るとつい近寄る癖が」
「嫌な癖だな……それは?」
 ふと、イデア先輩がこちらの手元を見る。音声は変わらずタブレットから聞こえている。
 俺はというと、ある物を包んでいる布巾とツナ缶を抱えているのだ。
「今日の夕食です。オンボロ寮に置いておくと、ゴーストがいたずらしちゃうので許可をもらって学園の食堂にグリムのツナ缶置かせてもらってるんですよ」
「じゃあ、そっち? いい匂いがするね」
「おお! イデア先輩、これがわかりますか!」
 布巾のむずび目をほどいて中を見せる。深い器には、上から蓋替わりの平皿が置かれている。それを取れば、器にあるのは上から見ると肉野菜炒めにしか見えないだろう。しかしその下には、炊きあがったばかりの白米が敷き詰められている。
 そうこれは、
「牛丼です!」
「ぎゅ、ぎゅうどん?」
「俺の元居た世界で、国民食と言っても過言ではないファストフードです!」
 うきうきとした様子で語れば、その勢いに若干引きつつイデア先輩はソウデスカ、と返してきた。
「食べてみますか? 食べてみますか? 簡単とはいえ、俺の手料理ですよ! ぜひ! どうぞ!」
「いやいやいや遠慮しておきます。食べた瞬間何か見返りを求められそうで怖いし」
「一口ぐらいでまさかそんなアズール先輩じゃあるまいし」
 とはいえ、これ以上ねばって時間を食ってしまってもグリムの怒りが爆発しそうである。いったんはここは引き下がり、また別の機会にぜひとも手料理を食べてもらおう。そんなに作れるものはないけれど。
 しょうがないですね、なんて言いながら布巾の結びを元に戻す。
「というか、なんでオンボロ寮で作らないの?」
「文字通りオンボロですよ? 寮のキッチンも使えませんって」
「え、じゃあ今までずっとわざわざ食堂で作ってから寮に」
「なんですかなんですかイデア先輩! ようやく俺に興味が?! なんでも聞いてください、見ればわかることから俺の恥ずかしいところまで全部あますことなく答えますから!」
「怖い怖い怖い勢いが怖い」
「ユウ、さすがの俺様でもそれは引くんだゾ……
 イデア先輩に興味を持ってもらえてるらしいことが知れて嬉しくてつい調子に乗ってしまった。
 そして盛大なグリムのお腹の音で我に返る。お腹をおさえながらグリムがこちらを胡乱げな目で見るし、本当にいい加減、寮に帰った方がよさそうだ。
「それじゃあイデア先輩、何かあればいつでもどうぞ。呼びつけてもいいですからね! また明日!」
 抱えているものは落とさないようしっかり持ちながら、全力で手を振る。それから急いでオンボロ寮へと向かった。
「ユウ、イデアに言えばキッチンぐらい直してくれるんじゃねーのか?」
「そうだね……そこまでイデア先輩と親しくなるのが先か、学園長が直してくれるのが先か、どっちが早いと思う?」
「どっちもなさそうだゾ」
 グリムの客観的な意見に、苦笑を浮かべる。
 タブレットなしで会話できる日を夢見て、イデア先輩へのアプローチ方法を考えねばならない。
「今日は作戦会議しようね、グリム!」
「不毛なんだゾ~」
 グリムの声は聞こえなかったものとする。

end.