いつかこうなるということは、最初からわかっていた。仕える君主を喪ったが、戦う以外に生きる道を見つけられなかった。私は市井に降りて、妖怪退治を生業とすることになった。相手は人間から人でない生き物になった。
初めは弱い敵から始め、今までと違う立ち回りを少しずつ覚えていった。
しかし、人と戦うことに関して手練れであっても、妖怪との戦いに対しては素人だ。しくじった。
きのこの形をした妖怪は、切りつけても手応えがなかった。笠の部分に穴が開くやいなや、粉が吹き出した。
私はそれを全身に浴びてしまった。どうやらそれが胞子だったらしい。まずは発熱。倦怠感があり、山道を降りるのに難儀した。野営のついでに粉を浴びた体を清めようとすると、いぼを見つけた。
次の日の朝になる頃には、それが最初の茸になっていた。私は嫌悪と怒りに任せてそれを引きちぎった。だが菌糸はしっかりと私の体に根を張っていた。日増しに増える茸を見て、自分の最後を悟った。
最後にはきっと原木になってしまうのだろう。
しかしそれでも最後の瞬間までは懸命に生きよう。
妖怪を退治した報酬を受け取り、それで人生の最後を如何に楽しめるのかを、試すつもりでいた。私は人生の楽しみを知らない。死ぬ瞬間が迫ってから、私はようやくそれを手にいれる気になったのだ。
依頼をくれた村まで戻る。痛ましい姿に村人は驚きながらも介抱してくれた。手当をしても好転するとは思えなかったが、疲れ切っていた私はともかく身を委ねた。
任された女主人は小刀で、増えた茸を一つずつ切り落としていった。
翌朝、朝食の料理の味と優しさが胸に染み渡った。だが、長居はできない。
「こんな、体の人間を世話するのは君が悪かったでしょう。私は、ここを去ります」
茸が全て削げ落ちたので、着物に腕を通すのも楽ではなかった。
「いいえ。いいえ、ここにずっといてください。とても助かっているのです」
女主人はにこりと笑う。
「あなたから生えたキノコはとっても美味しいのですから」
朝食の汁物と炊き込みご飯を指す。
私のその後の人生の楽しみは、料理に落ち着いた。
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