「じゃーん! どう、マッキ先輩?」
「おお
……!」
得意げなイェルシィに、マクシムは感嘆の声を上げた。テーブルにはイェルシィが手作りした色とりどりのゼリー菓子が並んでいる。
「これは素晴らしいな。後輩達も喜ぶことだろう」
「えへへ、やったぜ」
年が明け、進級も目前となった冬の日。四人の後輩達の進級を祝いたいから試作を味見して欲しい、とイェルシィに頼まれたマクシムは、ゼリーを目の前に幾度も頷いた。
小さく丸い透明な器に果肉と色付いたゼリーが固められており、それが数種類並んでいて何とも可愛らしい。
「じゃ、早速味見お願いしまーす!」
「いや待ちたまえ、こんなに美しい菓子はなかなかないぞ。もう少しじっくり見てから
……」
「
……」
「
……」
「
……うし。はい、マッキ先輩、あーん」
「ぶふぉ!?」
器の一つを持ち上げて回しながら見ていたマクシムは、危うくそれを落としかける。
イェルシィが別のゼリーを器からスプーンに移し、マクシムの前に差し出していた。大きめのスプーンにゼリーがちょこんと鎮座しており、ぷるぷるとその丸みを震えさせている。
「き、キミねえ!」
「だって味見してって言ったのに食べてくれないんですもん」
ちょっぴり口を尖らせて、次いでイェルシィはにんまりと笑った。
「食べないとは言ってないでしょお!?」
「はい、あーん」
「だから待ちなさいってば!!」
ずずい、と迫ってくるスプーンにマクシムが身を引くと、一転イェルシィは眉根を下げた。
「
……ダメ、ですか?」
「うぐっ
……」
まるで雨に濡れた仔エキュルだ。仔エキュルがうるうるとした瞳でスプーンを近付けてくる。
どうする。断れるのか。いやだが食べないでいることなど
……!
別に自分でゼリーを食べればよいものを、この時のマクシムはその選択肢がすっかり抜けていたのである。葛藤する内にスプーンが迫り
――
「もぐ」
――ゼリーが消えた。
「へ」
「あ」
「おいしい」
マクシムとイェルシィの間で、トトがふわふわと浮きながら幸せそうな笑みを浮かべた。
「そっかぁ〜、おいしいかぁ、トト〜」
「はやくたべたかった」
「うんうん、ありがとね!」
イェルシィはぎゅうっとトトを抱き締めた。トトも笑い声を上げてイェルシィに頬擦りをする。
そこでようやくマクシムは思い至った。自分でスプーンを使って食べればよいのだと。
ささっとゼリーを手に取ると、柑橘類らしき果肉が入っていた。
「いただきます」
「はーい」
イェルシィは何も気にした風なく、トトと戯れている。
……うん、つまり、あの「あーん」も戯れだ。うん。
ゼリーを口に運ぶ。
「
……うむ。美味い!」
「よかったぁ。よく考えたらみんな進級するし、後輩達だけじゃなくて全員に作るのでまた食べてくださいね!」
イェルシィはにっこりと、嬉しそうに笑う。勿論だ、と頷きつつ、マクシムはその真っ直ぐな瞳からそっと目を逸らす。
飲み込んだゼリーは、ほんのりと酸味が利いていた。
貴方はマクイェルで『待て、は得意じゃない』をお題にして140文字SSを書いてください。
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