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冬灯夜
2022-08-28 22:17:22
2856文字
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ルミナリア
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恋人の仕事
ルミナリア ガスリゼ
・謎時空で付き合ってる二人
・ナンパされた教官とガスパル
・いちゃついてるのが書きたかったんだよ!!
待ち合わせは大抵、ルディロームのマーケットかどこかの門。
もうそろそろ来てるんだろうな、と脳裏にその様子を思い浮かべる。決して自分が遅れるわけではないが、大体はリゼットの方が早く待ち合わせ場所に着いている。そりゃあルディロームにいることの多いリゼットの方が早いのは道理といえば道理だし、時間を守るのも真面目な性格といえばそうなのだが。
リゼットが俺と会うのを楽しみにしているから、と思えば簡単に浮き立つのだから、俺の中ではそういうことにしておいている。本人に訊いたことはない。
壁に寄りかかっているリゼットを遠目に見つける。
「リ
――
」
「ねえねえ、お姉さん一人?」
手を上げて近づこうとしたら、二人組の男が割り込むようにリゼットに話しかけた。
ナンパか。
まあリゼットだしな
……
という納得と、命知らずな、という同情と、なぁに気軽に話しかけてくれてんだこの野郎、という苛立ちを抱えつつ足を速める。
「人を待っている。去れ」
リゼットはナンパ野郎に一瞥もくれず、腕を組んだまま静かに言い放つ。
「ええー、そんなこと言わないでさ、ちょっとお話ししよーよ」
「そうそう。大体さあ、お姉さんみたいな綺麗な人待たせるなんてロクな奴じゃないって」
うるせえ放っとけ。
「だからさ、オレ達と」
もう少しで辿り着く、という所で、ペラペラと喋っていたナンパ野郎どもが固まった。
リゼットがぎろりと奴らを睨みつけ
――
その周辺の体感温度は一気に下がったことだろう。
「去れと言ったのが聞こえなかったか」
「あ
……
ハイ
……
」
一段低くなった声と圧に、ナンパ野郎どもはそそくさと去っていった。
リゼットは小さくため息を吐き
――
「やれやれ、鬼教官相手に命知らずだよなあ」
俺を視界に映すと、その目が一瞬和らぎ、すぐにいつもの静かな色に戻った。
「見てたのか。遅い」
「悪かったって。時間通りだけど」
歩き出したリゼットの横に並ぶ。
「お前がさっさとくれば絡まれなかった」
「はいはいお待たせしました。
……
まあでもお前、自分でどうとでもしちまうからなあ」
「一般人をあしらえなくてどうする」
それはそうなんだが、何というか。
思いついたままに、リゼットの腰に手を回した。
何だ、と言いたげにこちらを向こうとしたリゼットの耳元に囁く。
「そこは『俺の
恋人
イイひと
に何か用?』っつって腰抱く口実くれてもいいんだぜ?」
リゼットは一瞬沈黙し、胡乱な目を向けた。
「口実なんかなくてもするだろうが」
「そりゃするけどぉ」
そこはちょっとした浪漫というか、一度やってみたいというか。まあリゼットが輩に絡まれて欲しいわけではないので、それ以上は黙っておく。
ぺしり、と腰に回した手が叩き落とされた。
「歩きづらい」
「えー」
「『えー』じゃない」
抗議を流してリゼットは一人さっさと歩いていく。待てってば、と声を掛けつつ、つれない恋人を追いかけた。
さてそれから次の待ち合わせ。今日もルディローム、前回と同じ場所での待ち合わせだ。
いつものように壁に背を預けているリゼットを見つける。今日も俺は時間通り、リゼットの方が早い。
でもまあ、歩いて近付いて、俺に気付いたリゼットの纏う空気が僅かに柔らかくなる瞬間、それが好きだなんて思ってる内はリゼットより早く着きそうにはない。
「リゼ
――
」
「こんちはー、おねーさん」
……
うーん、既視感。
またも二人組のナンパ野郎だが、流石に前回とは別人だ。
「一人?」
「一緒に遊ばない?」
リゼットはちらりと二人組に一瞥をくれて、無言で目を逸らした。
……
ん?
「てかおねーさん、すっげえ美人じゃね?」
「うわ、そんな人が一人とか超ラッキー」
確かにリゼットは美人だけど! 一人じゃねえし! つーか何で何も言わないんだよ!
急いでリゼットの所に向かう。
ナンパ野郎どもはどんどん馴れ馴れしくなる。おいおいおい。引けよめちゃくちゃ無視してんだろ。
「もしかしておねーさん緊張してる?」
「じゃ、とりあえず自己紹介がてら茶でも行こーぜ」
一人の手がリゼットの肩に伸びて、
――
割り込んでその手を腕で防いだ。させるかこの野郎。
「なん、」
手を跳ねさせた野郎どもを後目に、リゼットの腰に手を回して抱き寄せる。
「俺の、恋人に、何か用?」
勿論、にっこりと笑ってやる。野郎どもは軽く後ずさった。
「な、なんだよ最初っからそう言っとけよ!」
「チッ、じゃーな!」
負け惜しみはカッコ悪いぞナンパ野郎ども。
そそくさと去っていくのにため息を吐いて、リゼットを伺う。
「大丈夫か? どっか具合でも悪いのか?」
「別に」
リゼットは素っ気なく言う。確かに顔色も触れた感じも平常だが。
「悪かったな、遅くなって」
「
……
別に、時間通りだ」
リゼットは俺の腕をするりと外して歩き出す。その横について歩くが、リゼットの様子はやはり普段と変わりない。となると、何故追い返さなかったのか。
……
まさかあの野郎どもが好みだったとか言わないよな? ないよな!?
「
……
満足したか?」
ぐるぐる考えていると、リゼットがぽつりと零した。
「え?」
「ああいうの。言いたかったんだろ」
思わず横顔を凝視する。
「じゃ、じゃあ、俺が来てんの見えてて」
「そろそろ来る時間だった」
リゼットは変わりない。
……
ように見えるけど、さっきから一度も目が合わない。今も頑なに前だけ向いている。
つまり、俺が前回言ったことを覚えてて、というか、実は半分本気で言ってみたかった所まで察して? でもって、俺がいつもの時間に来るという前提で、追い返さずに待ったと?
これは。ちょっと。なあ。リゼット。
「っおい」
込み上げてくる衝動のまま、リゼットを抱き締めた。
人前であからさまなことを好まないリゼットは当然の如く抵抗するが、今回ばかりは無理だ。
「ほんっと、お前って奴は」
「おい離せ、歩けないだろうが」
可愛くない言い様の九割が本気なのは分かってる。でも今のは残り一割の方。
とはいえこれ以上は本気の方になりそうなので、一度腕に力を込めてから離した。ため息を吐いてリゼットは再び歩き出す。
「
……
でもやっぱ、次からはいいから。冷や冷やするし。余計なこと言ってすまん」
ちょっと、いや大分、面白くなかったし。
ああ、とリゼットは短く答えた。そのリゼットの右手を取る。そして口を開く前にこちらから畳みかけてやる。
「これなら歩きづらくはないだろ。腕がいいならそっちでもいいぜ」
リゼットは眉をしかめて、前を向いた。
「
……
勝手にしろ」
その耳の先端がほんのり染まっていた。口元がにやけるのを止められない。
でもやっぱり、次からはもう少し早めに来よう。
一人そう決意して、さて今日はどうしてやろうかと浮かれ切った頭で考えながら、左側の体温を享受した。
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