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冬灯夜
2022-08-09 21:47:48
5975文字
Public
ルミナリア
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獅皇祭ブレイズ作戦会議!
ルミナリア ブレイズ
#ルミナリア版ドロライ企画【イェルシィ】【ダンス】
祭りの準備をするブレイズ 祭りの内容も文化も全部捏造です
「文化祭! だよ!」
イーディス騎士学校、食堂の一角。
ブレイズの一年生四人と二年生二人、三年生二人
――
つまりはブレイズの全員を前に、イェルシィは宣言した。
「もうそんな季節ですねえ。皆さんが入学してから、早いものです」
紅茶を配り終えたリュシアンが着席し、議長役のヴァネッサが眼鏡を押し上げて口を開く。
「では、本年度の獅皇祭ブレイズ作戦会議を始める。第一回目の本日、議題は『ブレイズクラスの出し物』だ」
イーディス騎士学校では、伝統的に学内行事は大切にされている。校長の方針でもあるし、教師陣も協力的だ。更には当日はもとより、準備期間もブレイズへの任務は控えめにされる。騎士学校の卒業生が多くいるからか、そこら辺の認知度と寛容度は高い。もちろん緊急性や重要性の高い任務は振られるが、多忙なブレイズからすれば準備の時間は十分に取りやすくなっている。
今日もリゼットが所用で午後の授業時間を遅らせると連絡があったが、あえて授業時間に被せてくれたのだろう、と二、三年生は理解していた。文化祭が終われば、辻褄を合わせるが如く怒涛の授業と任務が始まるのだが、そのことも一年生には黙っている先輩達なのだった。
そんなわけで、昼休みと授業時間を利用して、九九八年度獅皇祭ブレイズ作戦会議・第一回が開催される運びとなったのだ。
「はい、先輩!」
「何だ、レオ」
勢いよく手を挙げたまま、レオが質問をする。
「そもそも文化祭って何するんすか? 秋祭りみたいな?」
「ふむ、確かにそこからだな」
文化祭なるものは、村落や共同体で行われる祭りとは性質が違う。都市部でも学校以外を主体とする文化祭は稀だろう。
イェルシィも去年はどういったものか分からず、アムル・カガンの奉納のお祭りを想像したものだった。獅皇アグライアに奉ずる、という意味では間違ってはいないが。
「キミ達の想像する祭りとは、さっき言ったように秋祭り
……
豊穣祈願や奉納といったものでいいか?」
マクシムの確認に、一年生はそれぞれに頷く。
「僕達の村で一番大きいのはやっぱり秋ですね。実りに感謝する秋祭り」
「夏の納涼とかもあったよな」
「ミシェルの所はどうだった?」
「春でしょうか。花が咲くことをお祝いするお祭りといいますか
……
冬が終わって、ここから一年が始まる感じですね」
「やっぱミーちゃんのとこもそうだよね! 一年の内で一番お花が咲く、始まりの季節のお祝い!」
はい、とミシェルが嬉しそうに笑った。
勿論イェルシィは夏の陽射しを反射する花も、秋の穏やかな色合いの花も、冬の凛とした花も、どれも大好きだ。
それでも春は花が始まる季節だし、牧草を育て始める大事な季節なので特に春の祭りが重要なのだ。トトと出会ってからはもっと好きになった。
「では、文化祭
……
獅皇祭について説明しましょう」
リュシアンが代表して語り始める。
簡単に言うと、文化祭とは学校行事の一つで、学内にあるクラスや学年の垣根を越えて交流することが第一だ。クラス対抗や学年対抗、或いは同武器種の集いや趣味の集い、とにかく様々なカテゴリで集まって出し物や発表をする。掛け持ちも当然アリ。
その祭りをアグライアにあやかって獅皇祭と名付け、またあなたの学び舎ではこのように学んでいます、という姿をご高覧いただく、ということになっている。
「へえー、すっげえ楽しそうっすね! 食い物もあるんすか?」
「沢山あるな」
きらりとレオの目が光る。食べ過ぎ注意ね、とセリアが呟いて、思わずイェルシィは目を逸らした。ミシェルとヴァネッサも同様である。
「じゃあ例えば、私とマクシムさんが弓使いで組んだりとかですか?」
「その通り! 『ブレイズ弓の集い』だな。一般生徒も含めた『弓矢連合』もあるぞ。ちなみにブレイズ弓の集いは名称を募集中だ」
マクシムが拳を差し出すと、セリアもそれに拳を軽くぶつけ、去年はああだった、その前は、名前は、などと二人で話が始まる。
「僕ならユーゴさんとですねえ。『イーディス長剣会』はユーゴさんを歓迎します」
「あ、ありがとうございます。時々知らない先輩方から声を掛けてもらってたんですが、それだったんですね。なるほど」
「俺は!? 俺だって刀だし、刀剣同盟とかさ!」
「そうなると私も双剣だが剣ということになるので、あまり機能はしてない集団だな。数は少ないが刀使いに声を掛けるといい」
剣の皆が武器の種別に対して話を始めれば、イェルシィはあたし達はブレイズに同じ武器のコいないもんね、とヴァネッサやミシェルに話を振る。
「ミーちゃんは医務室で集まりあるんじゃない? あっ、『アムル・カガンの星』もあるよ! 他にも出身者いるし!」
「なるほど
……
」
「ああ、他には『図書常連部』や『読書連盟』なんかも」
「さて。皆さん、同好会のお話も素敵ですが
……
そろそろ議題の方に戻りましょうか」
「「「あっ」」」
複数の声が重なる。その内の一人、ヴァネッサが咳払いをすると、他の者も乗り出していた身を戻したりそっと姿勢を正したり、会議らしい格好に全員が落ち着いた。
「こほん。では改めて
……
今年のブレイズクラスの出し物に関して議論を行う。意見のある者は述べるように」
「はい、ヴァネッサさん」
「何だ、セリア」
頭の横まで手を上げたセリアをヴァネッサが当てる。
「去年はどんなことを? 被らない方がいいですよね?」
「そうだな。集まりによっては伝統的に同じことをするが、ブレイズクラスは毎年趣向を変えている」
「というのも、ブレイズの皆さんは特に千差万別ですので
……
」
武器も違えば個性も違う。圧倒的実力で合格した者もいれば、一点突破で下剋上して合格した者もいる。同期入学者の個性の煮凝りとも言えるのがブレイズだ。なのでその年その年の方向性が違う。
「去年は企画屋台だった」
「へえ
……
あの、ちなみに先輩方、料理の方は
……
」
「まあ、得意という人は少なかったですね」
果たして大丈夫だったのか、という目が一年生から向けられる。騎士学校以前に触れたことがあるとしても、得意という括りになるかといえば話は別だ。ちなみにイェルシィはお菓子作りにはちょっとした自信がある。
「大丈夫だいじょーぶ。『鉄血☆ブレイズの乱舞料理!~次の料理を決めるのはキミだ~』っていう企画だったから!」
イェルシィが太鼓判を押すと、一年生は目を瞬かせた。
「え、何すかそれ」
「どういう企画なのか、聞いただけではちょっと
……
」
レオとミシェルがおずおずと訊ねる。ユーゴとセリアも密かに頷いていた。
「まあ、分からないよな
……
僕も聞いただけだと分からない」
「ええ!?」
「簡単に言うとだ、食材や調理方法、使うものなどを順番に指定してもらい、そのお題通りに料理を作ったんだ。クジで引いてもいいし、発言者が指定してもいい。これがまたおかしな組み合わせが幾つもあってな
……
」
「なかなか食べるのに苦労するものもありましたねぇ」
マクシムが遠い目をする一方で、リュシアンの口調は内容とは裏腹にのほほんとしている。
勿論、食材を無駄にするなど許されないので、お題の出題者と調理者で完食が義務付けられていた。
「ヴァネッさんが包丁を両手に持って、空中で人参みじん切りするの、カッコよかったぜぃ」
「イェルシィもマクシムが無残に裂いた肉片を見事にパイにしてみせたな」
「言い方!!」
「ははは、まあいいじゃないですか」
「リュシアン、お前も紅茶の茶葉を炙り過ぎて火を出していたじゃないか!」
「とってもカオスだっていうことは分かりました」
僕達はああならないようにしよう、そうね、ああ、そうですね、なんて失礼な囁きが聞こえたが、イェルシィとトトはこっそり目を合わせて仕方ないよね、なんて目と目で話をした。
「
……
まあ、あんたたちも人のこと言えないと思うけど」
「ぐっ」
「うっ」
セリアの言葉とミシェルの頷きに、レオとユーゴが呻いた。調理実習はなかなか大変だったらしい。
「と、とりあえず、今年は料理系は避けた方がよさそうですね」
「だねえ」
ユーゴが顎に手を当てて考え始めると、つられるようにレオとセリアも腕を組んだり中空を眺めたりする。そこにミシェルも加わって、二年生と三年生も改めて頭を捻り始めた。
「今年は一気に人数が増えましたからねえ」
「うむ。やれることも増えたな」
去年は出来るだけ新入生の意見を先に聞きたい、とリュシアンとマクシムが配慮してくれたので、イェルシィとヴァネッサもそれに倣うつもりだ。とはいえ、全員で協力するのが大切なので、全く上級生の意見を入れないなんてことはない。実際、去年の発案はイェルシィが主だが、クジ要素を入れたりその内容を考えたりは全員でやった。
「うーん、何だろ
……
夏祭りだったら肝試しとかあったけど」
「食べ物がいいのなら、何か全員で細工物を作ったりというのも
……
」
「それともやっぱり実演系かな」
「剣舞なんかカッコいいよな! でも見慣れてそうだよなあ」
一年生の間ではこれ! というのはすぐには出てこないようだ。文化祭という概念が初めてなので、それもそうだろう。ヴァネッサが、分かるぞ
……
と小さく呟いていた。去年、意見を出すのに苦戦してたのをイェルシィは覚えている。
「よし!」
パン、とイェルシィは手を叩き合わせた。
「皆、一回外いこ!」
「え、どうしてですか?」
「いきなりで分かんないでしょ? ご飯も終わったし、外で身体動かしながら考えよーよ!」
イェルシィが立ち上がって提案すると、リュシアンが頷いた。
「そうですねぇ。それに本来であればそろそろ午後の授業時間です。リゼット教官を待つのを兼ねて、訓練場に行くのもよいかと」
「なるほど。では、反対意見の者は?
……
全員賛成だな。では移動するぞ」
全員、立ち上がって移動を始める。
「よっしゃ! あの、先輩方、せっかくなんで手合わせしてください!」
「よろしい。かわいい後輩達の為、このマクシム・アセルマン、一肌脱いでやろう!」
そうして訓練場までわいわいと移動して。
「
――
何でこうなってるの!?」
訓練場の真ん中で、マクシムの叫びが木霊した。
それを目の前にして、イェルシィはにっこりと笑う。
「だって、ダンスしたことあるのマッキ先輩だけですしー?」
くるるんと回ってやれば、ひょわあなんて情けない声を上げながら、繋いだ手を軸に支えてくれる。
何で、と言えば、とりあえず身体を動かそうか、ということで、よーしそれならダンスだ! とイェルシィがマクシムの手を引いたからだ。
「はい、1、2、1、2」
「りゅ、リュシアンだって出来るだろう!? ヴァネッサくんだって!」
「いえ、私は花弁を集めるのに忙しいので。頑張ってください、マクシムさん」
「私は
……
剣舞であれば
……
」
訓練場の端や風で舞い込んで来る花弁を拾うリュシアンと、忸怩たる
……
といった表情のヴァネッサ、そして地面に座してそれを眺める一年生達。
「僕だってダンスは苦手だって言ったじゃないか
……
!」
「この前、踊れてたじゃないですかー。大丈夫だいじょーぶ」
「あれはオルタンス嬢が上手いからであってな、どわっ!?」
ステップにアクセントを付けてみても、何とかついてきているのだから決して下手ではないのになあ、とイェルシィは思う。
とはいえ、マクシムの顔がそろそろ可哀そうなことになっているので、イェルシィは一度足を止めた。
「分かりました。じゃ、適当に好きなダンスしよ!」
「へ?」
イェルシィは槍を故郷の祭りで使う杖に見立て、祝詞の代わりに鼻歌を歌いながら摺り足で動き、手をゆっくりと上に返す。花が咲くのを見立てた、奉納の舞の一部だ。
「マッキ先輩、こんな感じでどう? いけるっしょ?」
「今のは
……
何とも敬虔な気持ちにさせられるような
……
」
「春のお祭りの、ですか?」
「そうそう! よし、ミーちゃんもやろ!」
「い、いえ、流石に奉納の舞は私には
……
」
「じゃ、村でやってたやつ!」
ミシェルの手を引いて立ち上がらせる。
「ほらほら、レオレオ達は?」
「あー、あれか? 秋祭りの?」
「それくらいだね、僕らが知ってるの」
促された一年生達が、知っている踊りを再現してみせる。レオ達の所もミシェルの所も、どうやら輪になって踊る類のものらしい。
「あ、じゃあヴァネッサさん、ご一緒に」
「い、いや、私は本当にダンスだのといったものとは無縁で」
「何でもいいんだよ! 剣舞でもいいし、適当に身体を動かすだけでも」
セリアに促され、座ったまま後ずさったヴァネッサだったが、後ろをリュシアンに塞がれ、両手をイェルシィとセリアに取られて観念した。
本当にこれしか出来ないぞ、とヴァネッサは小さく呟いて、徒手のまま勢いよく足を踏み、実にキレのある動きで空を舞った。
「素敵、ヴァネッさん!」
「リュシアン先輩、先輩は何もしねえなんてことないすよね?」
楽しそうに踊っていたレオがリュシアンに水を向ける。勿論です、とリュシアンは微笑んだ。
「では、まずは」
立ち上がったリュシアンは、合わせた両手を振り上げ
――
開いた先から、色とりどりの花弁が風に乗ってブレイズの頭上に広がった。
「わあ」
「綺麗ですね」
そして花弁を撒いた当人は細かく足のステップを刻み始める。
「ほら、マッキ先輩!」
イェルシィは花弁が舞う中、再びマクシムの手を取って身体を揺らす。奉納の舞でもなく社交ダンスでもなく、ただただリズムと気分で動く踊りだ。
「お、おお」
決まった型のない動きに戸惑っていたマクシムも、適当に身体を動かす度にイェルシィが褒めるからか、これでいいのだと悟ったようで、笑顔が出てきた。
誰かが鼻歌を歌い、村ごとに違う踊りが混ざり合い、手拍子が始まればまた新しい動きになる。
手を取ったり離したり、トトはその間をくるくると舞う。
ぶつかったり歌が被ったり、その度に笑いが弾けて
――
ああ。楽しいな。イェルシィは笑う。皆も笑う。
「
……
やれやれ。まだ授業は始められんな」
訓練場の入口でそう呟いたリゼット教官の口許も笑っていた。と、イェルシィはトトから聞いて、ますます笑顔になる。
文化祭の準備とは、こうやって楽しく皆と過ごせることが、イェルシィにとっては何よりも大好きで大切な時間なのだった。
「
……
ところで皆さん。議題は思い浮かびましたか?」
「「「「「「「あ」」」」」」」
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