冬灯夜
2022-05-06 22:26:00
1178文字
Public ルミナリア
 

「惚れ薬」

ルミナリア ガスリゼ
・飲ませたって言ったらどうする?
・これ以上はまだ書けない

「なあ、それ何が入ってると思う?」
 ガスパルがそう問うてきたのは、酒を一口飲んで眉をしかめた時だった。
 微妙な味の違いこそあったが、痺れや嫌な違和感はなかったのでそのまま一気に呷る。テーブルにグラスを置いた。
「知るか」
「お、おお……リゼットさんてば、おっとこまえー……
 自分で入れておいて何を引いているんだ、お前は。
「で、何を入れた」
「予想ゼロとかつれねえなぁ」
 わざとらしくため息を吐くガスパルを睨めつける。さっさと吐け。
「惚れ薬」
 頬杖をついたまま、ガスパルは宣った。
「は?」
「惚れ薬。目の前の男に惚れちまう薬」
 ガスパルは繰り返した。真顔で。
 沈黙。
…………で?」
「うっわあ、ブリザード」
「馬鹿かお前は。いや馬鹿だったな、知ってた」
「シンプルにひでえ」
 グラスに新しい酒を注ぐ。ガスパルがグラスを向けて来たが酒瓶を押し付けた。自分でやれ。
「一応言い訳は聞いてやる」
「バザールで売ってたんだよ」
 なるほどワースバードの。
「高値で買ったなら笑ってやろう」
「残念、人助けして押し付けられたんだな、これが」
 何をどうしたらそんな怪しいものが礼になるんだ。酒を半分ほど干す。
「で、どうよ」
「何が」
「惚れたか?」
 口元に笑みを浮かべ、頬杖から少し身を乗り出してくる。
 ――もう片手がグラスを置いて、私の顎に指を掛け、
「馬鹿が」
 そのままぱたりと落ちた。
「今日イチの氷……
「本当に馬鹿だな、お前は」
「即更新すんの止めてくれるぅ!?」
 全くもってため息しか出ない。
「あーあ、やっぱパチもんか」
 当たり前だろうが。酒を呷るガスパルの脛を軽く蹴る。
「いって」
「そもそもそんな怪しいものを飲ますな」
「一気飲みしたのお前だろ……って、いた、いててててて! つーか先に自分で舐めたっての!」
 踏み付けていた足をどかしてやる。
 ……飲み始める直前のあれか。というか、それなら飲ませたり感想を訊いたりする必要がないだろうが。
「全くあり得ないが、本物だったらどうするつもりだったんだ」
「お互い惚れてめでたしめでたしじゃねえの」
 投げやりにもほどがある。
「あと任務に使える」
 だろうな。
 ガスパルは小瓶を取り出すと、残りの液体を二つのグラスに入れた。
 ……おい。
「とっとと処分しちまおうぜ」
 はいかんぱーい、とグラスを合わせてからガスパルは中身を干した。
……異変があったら責任とらせるぞ」
「生きてればな」
 ため息を盛大についてやる。残った中身を同じく干した。
「次はまともなものを持って来い」
「そうしますよっと」
 三杯目を注ぐ。
 効果なぞ、あるわけがないのに。
「馬鹿だな、本当に」
 そうだな、なんて呑気に返すガスパルの脛を、もう一度小突いてやった。