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冬灯夜
2018-08-25 23:13:36
2349文字
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テイルズ色々
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意味を変える日
TOS 神子んび
・二人で遠くを見ているお話
「ゼロス、見っけた」
真横からの声に、振り向いた。中空にコレットが浮かんでいる。
「何か用かい、コレットちゃん?」
「うん。皆で探してたんだけど、なかなか見つからないから、高い所じゃないかって」
そしたらいたよ、とコレットは笑う。
元テセアラ、都市部の外れの小高い廃塔。ここを歩いて登るのは至難の業だが、羽を持つものならば容易に昇ることができる。
――
勿論この塔を知っていれば、だが。
「リフィル先生としいなが『煙とナントカは高い所が』って言ってたけど、ナントカってゼロスのことだよね?」
「先生はともかくあいつ」
あとでとっちめちゃる、と決意する間に、コレットは羽を消して隣に座る。
「わぁ、すごい」
「まーこの高さだからね。コレットちゃんだってよく見るでしょ、この高さ」
「うん。でも、何回見ても飽きないよ。それに、わたしはここに来るの、初めてだもん」
俺としては割合、飽きている。
街と逆を向いているから、どこまでも広がる森に大地に遠くに山。海は見えない。
ただ雪が見えないことだけが、ここのいい所だ。
コレットはゆっくり視線を巡らせて、景色を見ている。時折「あっ」だの「わぁ」だの感嘆符が漏れる。
……
俺としては別に、ここから動く気はなかったからいいのだが。
「コレットちゃんさ」
「うん?」
「俺さまに用事あったんでないの?」
「あ。そだった」
動く気はないのに、自分から言わなきゃいけないような気がしてしまう、こう
……
何とも言えない雰囲気よ。
「今日、ゼロスも来てくれるって言ってたでしょ? でも来ないから探しに来たの」
「あー、うん」
やはりそれか、とこっそりため息を吐く。
連絡を取ったり、会ったり、というのは、個々人で見ればそれなりに定期的ではある。が、複数で集まろうというのは、実の所そんなに多くはなかった。拠点も活動もバラバラなのだから、致し方がない。
今日に限っては、その珍しい一例
――
全員で集まろう、という日だったのが。
「具合、悪いの?」
「
……
いんや」
誕生日、とは。未だに喜びで迎えられない日だった。
それを素直に言うのは憚られて、口を濁す。
純粋に祝おうとしてくれてるだろう、コレットと仲間たち。
そんなもの必要ない、どうでもいい、と投げ捨てられる程度の俺だったらよかったのに。そうすれば憚ることなくフケてしまえたものを。
「
……
じゃあ、も少しだけここに居よっか」
いっそ微笑んですら聞こえるその言葉に、思わず目を見張る。
「
……
いーの? 待ってんじゃないの?」
「うん。だってゼロス、待ってたら来てくれるでしょ?」
だから、ゼロスが来たくなるまでは、いいの。
信じて疑わぬ言葉に、穏やかな優しさを込めた表情に。苦笑を返す。
「そっか。じゃあ暫く、俺さまと景観デートでもしようぜ」
「いいよ。あ、ほらゼロス、あそこに荷馬車が通ってるよ」
指差した先には、最近整備された道を通る荷馬車が米粒の如く動いていた。
「空が青いね」
「海は今日、どうかな」
「あ、あそこって花畑になる所だよね」
幾つかぽつぽつと相槌を打って、雲が流れて。
「あのね、ゼロス。ゼロスの好きなもの、いっぱい作ったよ」
同じ響きで、コレットは景色を見たまま続けて。
青い目が遠くを、あるいは今は見えぬ仲間たちを映している。
「タコとかイカとか、新鮮なのを買ってきたの」
「ああ」
「プレゼントもね、皆それぞれ秘密だよって」
「そっか」
「あ、メロンもあるよ」
「うん」
同じく相槌しか打たない俺に、やはりコレットは嬉しそうに、穏やかに語り続ける。
「わたしはね、ロイドとプレセアに教わって、木彫りをしてみたの」
「コレットちゃんが?」
「
……
やっぱり、ゼロスも皆と同じ反応するんだね」
つい声を上げると、少しばかり低くなった声でコレットが言う。
「でも大丈夫だよ、ちゃんと綺麗に出来たから!」
それまでに幾つの木が犠牲になったのだろうか。
いやそれより。
「怪我とかしてねーか?」
「してないよ!
……
今は」
「したんじゃねーか」
咄嗟にコレットの手を取る。
……
確かに今は怪我してないけども。それくらい分かってたけども。
治癒を施すことも出来ず、そのまま手を戻す。
「ありがと、ゼロス」
「なんもしてねーって」
何も出来ない、の間違いだ。
「ううん。心配してくれてありがと。それと、皆よりちょっと先に言っちゃうけど」
戻した手を、今度はコレットが取って握り返す。
真っ直ぐに俺を見て、笑った。
「生れてきてくれて、ありがとう、ゼロス」
じわりと、手が熱くなる。
俺には呪いが掛かっている。ずっとそれを自覚して生きてきた。
たった一言の呪いは、たった一言では解けてくれない。
けれど。
時間を掛けて、何度も、幾つも、幾人も。
掛けてくれた言葉が、声が、手が、段々と俺の中に積み重なっている。
「
……
さて、そいじゃあそろそろ行こっかね。盛大に祝われてやんねーとな?」
熱さを悟られるのがどうにも気恥ずかしくて、そっと手を抜いて立ち上がる。
「うん。皆、いっぱいお祝い用意してるよ!」
羽を広げて二人、空へ歩き出す。
先に飛び始めたコレットの背を追い、ひっそりと喉元に手を遣った。
ありがとう、と。
まだその言葉を返せなくても。胸からせり上がって来た声は、やがて喉奥から口内へ、いつかは外へと出せるだろうか。
陽光に煌めいて羽ばたくそれは、ひどく美しかった。
――
ロイドたちの手により再加工された木工細工が部屋中に飾られていて、爆笑したのはまた別の話。
お誕生日お祝いの代物でした
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