冬灯夜
2018-06-09 22:53:27
1624文字
Public テイルズ色々
 

「夢をみてたの」

TOGf
・文をリメイク&絵から書くタグ、杳さん(@ohayo_hal)から
・ソフィと様々なあれこれ

 寝転がって目を閉じたまま、唐突にヒューマノイドは言った。
「大好きな夢」
 指が大地を撫でる。
「みんながくれたもの」
 ゆるく弧を描いた口はこちらの反応など待たず、歌うように、夢を浮かべるように、言葉を紡いでいく。
 先程まで眠っていたとは信じがたい滑らかさだ。
 接地面積が広いせいか、ぼんやりとしたイメージがこちらにも流れ込む。



       「わたしの背中」

 広い背と、リンゴを取る手と、背中を押す温かさ。


       「わたしの瞳」

 赤の目。茶の目。似ていると眇められる目。


       「わたしの髪」

 多くの優しい味と、髪を梳かす穏やかな手つき。


       「わたしの手」

 横合いから案じての声。転んで、助け起こして、引いてくれる手。


       「わたしの足」

 隣に、前に、いつでもある。歩み、走り、進むその力。


       「わたしの口」

 いつだってはじける笑顔と、自分の為にと開発された数えきれないもの。



 一つ一つに鮮やかな思い出が付随して、一つ一つに遠くなった呼び声が響く。
 ヒューマノイドは、身体を起こした。



       「わたしの涙」

 子よ、と呼びかける声がする。内に残るクイーンが温度を上げる。その紫の瞳が互いを捉え、笑った。


       「わたしの苦しみ」

 流れ込むイメージには、苦味と、だがそれを圧倒する柔らかな繭があった。
 手が伸ばされる。
 かつて、我に伸ばした手のように。よく似てきたと、とうの昔にいなくなったのに、近頃になって思う。



「わたしの名前、わたしの空、わたしの海、わたしの――夢」


 向けられた方角は、今も営みを続ける国境の街がある。
 ゆっくりと、手が我の“端末”を包み込む。その後ろから、フォドラの核たる“端末”が包み込んだ。
 核と融合を果たし、核そのものである我とフォドラのクイーン。共に生きる、永遠の少女。
「だいすきだよ」
 囁いたそのすぐ後、少女を呼ぶ声が遠くからする。
「呼んでいるぞ、プロトス1」
「ソフィだよ。ソフィ・ラント」
 繰り返されるようになったそのやりとりを、何故かやめようとは思わない。時に拗ね、頑なに言い張っていた口調はいつしか丸くなり、今やいっそ楽しげですらある。
「またね、ラムダ、クイーン」
 再度の呼び声に、手を解いて少女は軽やかに歩いてゆく。

「時は、変わる。私のように」
 所在を失った手をそのまま我に伸ばし、フォドラのリトルクリーンは呟いた。
 我らは永遠を過ごす。
 その永遠は、実のところ永遠ではなくすることが出来る。
 やめようと思えば。対になり消滅すれば。眠りにつけば。
 我ら以外のすべては永遠でなく、短く、いずれ別れゆく。傍に在れば在るほど、その軋みは大きくなる。
 それでも尚あの少女が、我らが生きるのをやめようとしないのは――本能だからとだけ言うのは、足りない。
 希望とは裏切られるものであり、祝福とは呪いであり、夢とはいつか消える儚いものだ。
 けれど裏切りたくないものであり、祝福したいものであり、消えるその時まで抱えていたいものだ。
 我らはその想いの一部を共有している。
 かつて掛けられた言葉であり、思い出であり、示された先であり。
 原素を含んだ風が吹く。
 今日も星には原素が巡り、命が芽吹き、潰え、そしてまた巡る。
 ソフィ・ラントを真似て撫でられる温度のない手を、受け入れて目を閉じた。









#ふぁぼした人の文章を自分の文体でリメイクさせていただく の絵ver
はるさんありがとうございます!!