冬灯夜
2016-09-22 23:22:30
1976文字
Public TOV
 

拝啓、あなたへ

TOV
・ED後、ジュディスからの手紙


拝啓、忙しそうなあなたへ。


 出だしはこれでいいかしら。
 そういえば私、手紙なんて書いたことなかったの。この文を書くまでに大分悩んでしまったわ。
 作法はよく分からないから、そのまま書いてみようと思うの。読みづらかったらごめんなさいね。
 私は今、凛々の明星の一員として、世界中を周っているわ。
 ……これは知ってるわね、あなたも。
 どうしたらいいかしら。やっぱり難しいわね。


(段落が落ちて筆跡が少し変わっている)
 今は帝都にいるの。思ったことを書くのが難しいと言ったら、見つけたものや素敵だと思ったものを書く所から始めたらどうか、と助言をもらったわ。そうしてみようと私も思う。
 そうね、帝都は人が多いわ。
 幸福の市場がこのご時世でもしっかり手を伸ばしてて、逞しいと思ったわ。
 素敵なもの、かは分からないけれど、帝都の結界はとても大きかったから、その結界が頭上にないと不思議な気分ね。
 私自身は結界がないことの方が慣れてはいるけれど……あれだけ目立っていたから、まだ結界のない帝都は見慣れないわね。他の人もそうなのか、時々空を見上げる人が多くいたような気がするわ。
 それとお土産を預けたいそうよ。あなたの所に行く前にもう一度寄るから、その時に。楽しみね。


(段落が落ちて)
 今日はカプア・トリムよ。
 地上に降りると、海の匂いが全然違うわね。
 海の色もそう。空よりもずっと濃い色で、底が見えない。
 空にはもう、本当に果てがなくなったけれど、海には底があるでしょうに全然見えないの。
 みんなで旅をしていた頃はそんなこと考えもしなかったけれど。海賊さん達のせいかしら、一度考えてみると気になってしまったわ。
 海の底には何があるかしら。
 何があったら、あなたは素敵だと思う?
 私はバウルみたいな、やさしい生き物が住んでいたらいいと思ったわ。


(走り書き)
 もう、今日は砂まみれ。上手く書けないからあとでね。

(段落が落ちて)
 今日はオルニオン。昨日まではマンタイクだったわ。
 オルニオンは物資を運ぶ関係でよく来るの。少し寒いけれど視界は悪くないわ。
 昨日は久しぶりにギルド全員揃って魔物退治をして、それはよかったのだけれど、砂嵐に巻き込まれてしまって。
 あんなに激しいの、私も随分とご無沙汰だったわ。ごうごう音はするし、逃げ込んだ小屋は揺れるし。
 バウルならきっと大丈夫だけれど、わざわざ痛い思いや不快な思いをさせることはないもの。治まるのを待ってから迎えに来てもらって、オルニオンへ。真っ先に水浴びをしてさっぱりしたわ。
 我らが首領はお寝坊さんで、ついでだから今日はお休み。私達は手合わせで気分転換よ。視界や周囲を気にせず槍を振るうのは気持ちがいいわ。
 最初から結界がないせいかしら。ここの人たちは変わらないわね。相変わらず希望を宿して、活気に満ちている。
 首領が起きたみたい。一緒に買い物、行ってくるわ。私もお土産を買おうかしら。


(段落が落ちて)
 今日はちょっと忙しかったわ。近くだったからミョルゾに寄って、ダングレストに行って、別れて、帝都へ。
 人とものを一緒に運搬するのも慣れて来たわね。まあ、人を乗せることはそんなにないのだけれど。
 ギルドと騎士団は、何とか形にはなってきているみたい。騎士団長と、両方を知っている人がいるというのは大きいようね。
 他にも、現場で一緒になる人達の方が早くに打ち解けて……喧嘩しながらどうにかやってるみたいよ。

 何だかあなたに会いたくなった。あの子とあなたの話をしたからかもしれない。
 そう、お土産も預かったの。私のも一緒に入れたから、どちらも楽しみにしていてね。
 でもこれを読むのとお土産を開けるの、どっちが早いかしら。


 研究は順調かしら。ちゃんとご飯は食べているかしら。気になるからって夜更かしはほどほどに。
 手紙を書いていたら、そんなことばかり浮かんでくるの。
 私のことを書いているのに、ね。
 手紙ってなにかを伝えるものだと思っていたの。だからなにを伝えればいいのか分からなくて迷って、私のことを報告していたら、宛先のあなたのことが浮かぶ。
 元気かしら。私とバウルは元気よ。
 そうね、こういうことを書けばよかったのね。
 でも、ここまで書いたのだもの、全部そのまま封をしておくわ。いい香りのする封蝋も貸してもらったことだし、ね。

 ねえ、会いに行ってこの手紙を渡したら、あなたはどんな顔をするかしら。
 読んでいる時、きっと私はその場にはいないけれど、あなたの反応がとても楽しみなの。
 きちんと休みをとって、ご飯を食べて、元気でいてね。


 敬具、親愛なるあなたへ。 バウルの背中からジュディスより