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冬灯夜
2016-03-25 23:34:23
1477文字
Public
オリジナル
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瞬きをその身に湛えて
第89回フリーワンライ参加作品 企画アカウント様(
https://twitter.com/freedom_1write)
お題:星が瞬く間に ジャンル:オリジナル
見えぬか?
……
目が悪いのお、おぬしは。
はあ、自分が悪いのではなく、わたしが良すぎると。
難儀ないきものよ、まったく。
ほれ、わたしの舌の先を見よ。
……
違う、舌そのものではない、その先の空だ。
一際強い光を放つ星が分かるだろう?
そう、それだ。
その星から二つ、わたしの鱗の分だけ左に
――
……
どこって、ああ
……
尻尾の先の鱗だ。
おいくすぐったいぞ。
何が分かりにくいものか。この上なく分かりやすかろう。具体的で。
……
む、ぐ、確かにどことは言い忘れたが、そんなものわたしが見やすい位置のものに決まっておろう。
ほほう。言うたな。
よりにもよって見苦しいとな? 美しき鱗比類するもの無しと謳われたこのわたしを!
……
言い訳? 言い訳なぞきか
――
ん?
言い訳が? 見苦しい?
い、言い訳などではないわ!
大体、おぬしが見えぬと言うから情けを掛けて教えてやったのではないか!
……
ふ、ふん、分かればよい。
ん? ああ、それでわたしの鱗
――
尻尾の鱗二つ分、左に目を動かすのだ。
三つ、星が固まっているだろう。それが季節の終わりに見える三つ子星よ。
次の季節が来るぞと、知らせに来やる。
見えたか?
うむ。あの星を覚えておけば、疎いおぬしでも季節の移ろいをいち早く知ることができよう。
冬眠なぞせぬくせに、ちょっとした温度ですぐ死ぬからの、おぬしらは。よく覚えておけ。
む? またたいている?
……
『またたき』とは何だ?
ちかちか? きらきら?
……
ああ、そうか、おぬしらは目を覆うものを自在に操れるのだったな。
それを、またたきというのか。なるほど。
それがどうして星がまたたくなどと言う?
……
はあ、星が、きらきらしている。それも、またたきという。
よく分からぬな。
そもそも星は常に光を放っておるのに。
……
きらきら。
む? おお、確かに我が鱗は光を宿し煌く。
おぬしらには、星もそのように見えるというのか。
わたしにはやはり、そうは見えぬな。星とは常に光るもの。揺れ、反射するものではない。
……
目が、悪いからか。
面白いことを。
そう、わたしの目は全てを見通す。空の彼方の星まで真っ直ぐに。
おぬしはそうではないのだな。薄雲までもその目に映し、その全てを彼方の星として見る。
それがおぬしの言う『きらきら』か。
まあよい。
所詮、同じものなど見れはしない。
おぬしと同じひとであっても、そうだろう。
……
おい、だから尻尾を引っ張るな。
は? きらきら?
それは分か
――――
――
……
この、煌きか。
我が身を包む鱗の輝きを、映る光を、おぬしはまたたきというのか。
……
そうか、美しいか。
……
。
おぬしがそう言うのなら、わたしも星のまたたきとやらを、見れたということにしてやろう。
またたかぬわたしには、分からぬことよ。
……
いいや、そうではないかもしれんな。
またたきの時間など、つまりは僅かな時のことを言うのだろう。
わたしには、こうしておぬしと語らう時間こそがまたたきなのだろう。
長い、星の位置すらも変わる時の中の、わずかなまたたき。
……
星のまたたきと、わたしのまたたきを、覚えておくがいい。
次にまたたく時までくらいは、わたしも覚えていてやろう。
――――――――
「星の瞬きなど、わたしはきっと気づかぬがな」
くわりと牙を剥いて、美しき錦の大蛇はわたしに笑った。
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