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冬灯夜
2015-12-12 23:16:52
1601文字
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その他
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雪をまとう
#NP版深夜の真剣創作60分一本勝負 お題『雪』
オズの国歩き方 ジャクドロ未満の何か
・ED後
・雪は綺麗だねってお話
「雪だよ、ジャック」
弾んだ主人の声に、ジャックはセンサーを集中する。歩調が緩まった。
「北まで行かなくても降るのね」
「はい、お嬢様。世界の端ほど顕著ではありませんが、エメラルドの都周辺でも、四季は感じとれます」
「もしかして初雪かな」
「いいえ、初雪は四日前の早朝に観測されております。午後になる前には融けました」
「え、うそ、全然気づかなかった!」
嘘ではございません、と言うと、勿論分かってると頷きが返ってきた。
今のは言葉の綾というものだろう、とジャックは記録する。人は驚くと、咄嗟に「本当?」や「嘘?」と口にしてしまうようだ。
主たるドロシーもまた、その例に洩れなかった。むしろ、顕著に表れる方だ。
「これくらいの量ならいいわよねぇ、雪」
何といっても飽きない。
雪壁に囲まれた旅路を脳裏に描いてか、ドロシーの目が一瞬胡乱になっていた。
ひらひら、音もなく降る雪にドロシーは手を伸ばす。手の平の上で、結晶はすぐに融けていった。
雪を見ると、北の魔女を思い出す。
北の魔女だけではない。雨に濡れる若葉は東の魔女を、日差しに輝く水たまりは南の魔女を、巻き上がる砂は西の魔女を思い起こさせる。
柱は今や、数えきれない程になって世界に在る。
だから余計に、四季に触れると四柱を思い起こすのかもしれない、とドロシーは思う。
「お嬢様、外に長居すると体調を崩されるかもしれません」
「大丈夫よ、そんなに心配しなくても」
相変わらず過保護なロボットに笑いかける。
風がないから、雪は静かに舞い落ちる。夕が近くなり、ちらほら点き始めた灯りが雪を照らす。
もう少し、この雪を見ていたかった。
「綺麗ね」
呟いて空を見上げるドロシーを、ジャックは見つめた。
頬の一部と鼻の頭が少し赤い。体温は平常。指先はやや冷えている。
目は湖面のように輝いて、柔らかな金茶の髪についた粉雪は街の灯りを反射していた。
「お嬢様も、お綺麗ですよ」
「はっ!?」
ぐわん、と物凄い勢いでドロシーの頭が振れた。
「ななな、何突然!?」
観察の結果を言葉にしただけだったのだが、とジャックは内心首を捻った。
実際に捻れば(回せば)ドロシーを更に訝しげにさせるだけだろうが、人の頃に覚えた動作の幾つかはジャックの中に定着していた。
「突然というわけでは」
「あっ、そう、そうか、メグ姉さんね!」
遮る
――
というわけではないのだろうが、気付かずドロシーは大声を上げた。まだ落ち着ない様子だったが、あからさまにほっと息をつく。
「ああーもう、本当メグ姉さんてば、厄介なことを
……
」
「いえ、そうではありません」
「へ」
「思ったことを、そのままお伝え致しました」
お気に障りましたら申し訳ございません。
きゅいん、とまるで気落ちでもするような弱いランプの光と、首周りの動作。
答えがない。
やや下げていたセンサーをドロシーに戻す。
おや、とジャックは再び(内心で)首を傾げた。
体温が上昇している。指先も温まっており、これなら風邪をひく心配はなさそうだ。
全身は緊張しているようだが
――
はて。顔が、赤い。一部ではなく、全部が。
「お嬢様?」
「あああああ! もぉぉぉ!!」
性質が悪い!! と叫ぶや否や、ドロシーは早足で歩き始めた。
「メグ姉さんてば! いや違うけど! もう! もお!」
「いえ、今回の言葉は
――
」
「分かった! 分かってるからとりあえず黙ってジャック!」
「はい」
「ああああんもうメグ姉さんのバカあああ!! もおおおお!!」
まるで興奮した時のメグ姉さんのようだと思考するが、無論ジャックにはそれを口にしないだけの分別がある。
早足の主人が転ばぬよう、けれど邪魔はしないよう、斜め後ろからついていく。
二人の周りに雪は、やはり音なく舞っていた。
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