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冬灯夜
2015-10-10 00:50:13
2666文字
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TOL
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夢の後
TOL セネル+モーゼス
・ED後、ちょっとした日常話
・何となくユナイティアの後っぽい
・エアスケブのお礼に書かせて頂きました
「おはよう」
目を開けると、やたら近くに天井があった。また吊るした舟の上に乗ってしまったか。
起き上がる。
……
違った、天井じゃなかった。床だ。普通にベッドから転がり落ちて、床で寝てたようだ。
伸びを一つ。何だかいつもより寝覚めがいい気がする。
「
……
くぁ」
おはよう、声をかけようとして、誰もいないことに気付いた。はて。
何故、誰かいるなんて思ったのか。
「おう、セの字! 起きんかーい!」
疑問は勢いよく開いた扉に吹き飛ばされた。身体ごと。
「
……
モーゼス、お前
……
」
「お? 何じゃセの字、今日は玄関か」
「その前に言うことがあるだろ」
「相変わらず酷い寝相じゃの」
「吹き飛ばしたことを謝れ!」
「そがあな所に寝ちょる方が悪いわ」
隠す気もなく笑う男
――
モーゼスには一片の謝意もない。
同時に正論でもあるので悔しい。が、腹が立つ。
「何の用だ? 今日は別に皆で会う約束もないだろ?」
「おう、ほうじゃった。セの字、ワレ、ちぃと付き合えや」
「何に」
「魔物退治じゃ」
「ウィルか」
「おう」
保安官(本人は未だに博物学者だと主張するしそれも事実だが)のウィルの所には、街を脅かす魔物の情報がいち早く入ってくる。その討伐や調査に駆り出されるのは、最早日常の一部と言ってよかった。最近では黒い霧の影響も落ち着いているので平和だったのだが。
「分かった。朝飯の時間だけ待ってくれ」
「ワイの分も頼むわ」
「食ってないのか?」
「弟分たちと食ったがの、パンの2、3個はまだまだ入るわ」
窯の前に陣取る姿は遠慮の欠片もない。
「セの字の焼いたパンは美味いからのお」
何故かしみじみと言われて、こういう物言いが本当に全く
……
憎めないと思ってしまうのだから、俺も大概だ。
宣言通り3個を軽く平らげたモーゼスと共に、港の方面へ向かう。
「今日は早いね」
「お、おはよう」
「何だよ天変地異でも起こるのか?」
道中、街の人達に声を掛けられるが最後の奴はちょっと来い。
「ったく
……
」
「普段の行いってのは大事じゃの」
「お前が言うか、山賊」
「今は休業中じゃ」
ウィルに聞かれたら、廃業しろ、と言われるだろうな。
小さくため息をつくと、特に何があったわけでもないのに楽しそうに揺れる髪が目に入る。
やけに青い空と、風になびくくすんだ赤い髪。
珍しい風景ではない。むしろ、見慣れている筈だ。ただ、それが、久しぶりのような
――
そうでもない、ような。
不意にモーゼスがこちらを向く。眼帯に覆われていない片目としっかり目があった。
「なんじゃ?」
「いや」
何となく目が離せなかった、という内心に動揺しつつ、短く答える。
「久しぶり、のような、そうでもないような」
「はあ? やっぱりまだ寝惚けとるんか、セの字」
「
……
そうかもな」
懐かしい、久しぶり、また会えた。
ああ、そうだ。夢の余韻に似ている。
「うっし、なら眠気覚ましに一勝負じゃな」
「は?」
「街の入口まで先に着いた方が勝ちじゃ。いくぞォ!」
「あっこら!」
言うが早いかモーゼスは全力で駆けて行く。
一度屈伸して
――
その背中を追いかける。
「不意打ちで勝てると思うなよ!」
「クッカカカ! 陸の上では負けんぞー!」
……
。上等だ!!
「ぜー、はー」
「は、は、」
「
……
あんたら、朝から何やってんの?」
入口の橋の近くで、二人して身体を丸めていると、上から呆れた声がした。
「おう、シャボン娘
……
帰ったか
……
今、セの字と引き分けた所じゃ
……
」
「何言ってる
……
ズルの分、俺の勝ちだ
……
」
「元気っつーか馬鹿っつーか
……
久しぶりなのに相変わらずだね、セネセネもモーすけも」
余計なお世話だ。
そういうノーマは、暫くトレジャーハントで街から離れていた。こっちは間違いなく久しぶりだ。
ぜえぜえ息を整えていると、ノーマが目の前にしゃがみ込んだ。じっと、というかじろじろと、むしろねめつける勢いでノーマがこちらを見ている。
「何だよ
……
」
「うーん
……
久しぶりだよねえ? セネセネ」
「
……
? ああ
……
?」
顔を上げる。
やたら難しい顔をしたノーマがいる。
「何でかな~、あんまし久しぶりって気がしないんだよねぇ」
「
……
何でだろうな、俺もそんな気がする」
「ワレら、揃って寝言か?」
「セネセネと一緒にしないでよ」
「ノーマと一緒にするな」
不覚にも声が揃った。寝言常習犯が何を言う。
ケッ、とモーゼスが舌打ちした。
「ま、ええわ。シャボン娘も魔物退治、来るか?」
「あたし帰ったばっかだってば。ちゃんとしたベッドで寝るー」
あくびを一つ、ノーマはやる気なさげに橋の支柱に寄りかかる。
「いってらっしゃい」
「おうよ」
「いってくる」
ひらひら手を振るノーマに応え、今度こそ街を後にした。
魔物退治はあっさりとカタがついた。おかげでまだ昼にも早い。
「うまそうじゃの」
「まだ食うなよ」
お礼に貰った海の幸を手に、モーゼスは機嫌よく笑う。
「昼も期待しちょるからの」
「へいへい」
サーモンベーグル
……
いや、魚鍋パンにしようか。
レシピに考えを巡らせていると、横から調子っぱずれな鼻歌が聞こえた。
「随分、機嫌がいいな」
「おう、そうかの?」
「そうだろ」
思えば、家に来た当初からそうだ。いつもうるさいから大して気にもしてなかったが。
「楽しいからの」
モーゼスは機嫌よく、鼻歌の合間に続ける。
「セの字とは、張りあってて一番楽しいんじゃ」
するりと、その言葉は滑り込んできた。
「兄貴同士じゃし、年も同じじゃし、力と力で話し合える。そういう奴は、ワイにはあんましおらんかった。
じゃけん、今日はちぃとはしゃぎ過ぎたかもしれんのぅ」
はしゃぎ過ぎたと言いつつも、それを自重する気はさっぱりなさそうだ。
俺も、そうだ。
同い年は殆どおらず、年下か、ぐっと年上かという場所にばかり身を置いていた。
だから、こんな
――
張り合って、それそのものが楽しいなんて、初めてだった。
じわりと胸が熱くなる。
「
……
ま、俺が勝つけどな」
「言うたな? ほいじゃ次の勝負じゃ!」
素直にそれを告げるのは気恥ずかしくて煽れば、やはりモーゼスは乗ってくる。
街までもう一勝負。
この日常は騒がしい
――
そして、楽しい。
食材を抱えて走りながら、ああ悪くはないさと呟いた。
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