「おっさんさー、柄にもなく恋とかしちゃってさー」
「そうなんです!? でも、それならキャナリさんのことは、もう
……」
「あーうん、十分吹っ切れてるよ」
「よかったです。
……それで、あの、どういう方なんです? わたしの知ってる人ですか?」
「んー。かわいいかな」
「かわいい
……抽象的ですね」
「まあ、その子のやることなら何でもかわいく見えちゃうからね」
「す、凄いです
……」
「嬢ちゃんもさ、リタっちが何か危ない薬品開発とかしてても可愛く思えるでしょ?」
「開発は止めますけど、一生懸命なリタは可愛いです。
……!? ま、まさか、リ」
「違う違う! 違うから!」
「び、びっくりしました」
「こっちこそびっくりよ
……」
「ごめんなさい、早とちりを」
「いいのいいの。おっさんも紛らわしい言い方したし」
「それじゃあ、どんな感じの方なんです?」
「そうだねえ。優しくて、笑顔が花みたいで眩しいかな」
「わあ
……」
「って何よ嬢ちゃん、その顔」
「レイヴンから、そんな詩的な表現が出てくるなんて思いませんでした」
「いやこの程度口説き文句じゃ普通に」
「
……好きな人がいるのに、別の人を口説いてるんです?」
「いやいや昔の話ね、昔の」
「
……そんでさ、その子はもう全っ然、俺の気持ちに気付いてないのよね」
「告白したんです?」
「や、してないけど」
「なら分からないのも無理はありませんよ」
「うん、でも空気とかね。あるじゃない? あ、今なんか笑ったな、とか」
「ううん
……分かるような、気もしますけど
……難しいです」
「
……まあ、そうよね。察して、ってだけじゃあね。今、そんな頻繁に会えるわけじゃないし」
「遠くに住んでる方なんです?」
「俺もさ、こうやって帝都来たりダングレスト戻ったり、色々してるじゃない。
その子も拠点はあるけど、色々出回ったりもしてるからさ」
「そうなんですか。すれ違いになると、大変ですね」
「そーね。やるべきことと、やりたいことと、一杯あって大変そうだわ」
「そういう時こそ、レイヴンが支えてあげたらいいんじゃないでしょうか。
あ、でもレイヴンだって大変ですし
……なかなか会えないのなら、難しいですね」
「俺は支えてあげたいなーって思うんだけどね」
「
……素敵です」
「いっつも、ありがとうって言ってくれるんだけど、そんだけなのよねー」
「それだけ、とは?」
「だからね、俺はその子に好きになって欲しいわけよ。下心って奴ね」
「
……好きになった人に好きになって欲しいと思うのは、当たり前のことだと思います。
それに、レイヴンは例えその方がレイヴンのことを好きじゃなくても、好きだと思います」
「
……ん? えっと?」
「あ、その、恋愛じゃなくて、信頼とかです! 相手の方がそういう『好き』であっても、
レイヴンは関係なく支えたいと思うんだろうな、って勝手に思ったんです」
「そーお? 俺様その子と色々したかったりするけどー?」
「でも、支えてるんでしょう?」
「
……支えになってるのかねぇ」
「なってますよ。きっと。だってレイヴンが、こんなに
……」
「こんなに?」
「
……こんなに、一生懸命なんです。ならない筈、ありません」
「
……なーんか、照れちまうね。あんがと」
「ふふ」
「嬢ちゃんはどうなの」
「え?」
「そういうの」
「え? えっと
……特には、ない
……と、思うんですが
……」
「歯切れ悪いね」
「何でしょう
……あの、よく分からないので」
「
……そう。じゃ、今はいいや」
「は、はい。それより、レイヴンの話の続きを聞きたいです」
「続きねぇ。まあ、進展なくてどうしよっかなーってくらいかな」
「進展、ですか
……それならやはり、きちんと気持ちを伝えた方がいいのでは」
「伝わるかね?」
「伝わりますよ。離れているなら尚更、伝えないと、その方が何も分からないじゃないですか」
「でもその子、俺のこと好きじゃなかったら、迷惑だろーし」
「そんなことありません!」
「うおっ」
「迷惑なんて、そんなこと」
「
……嬢ちゃん、何で言い切れるの? 人の気持ちなんて分かんないもんでしょ」
「だって、レイヴンが好きになった人です。
レイヴンが伝えた気持ちを無碍にするような方じゃないでしょう?」
「
…………真剣に悩んでくれるとは思うけど、さ?」
「でしょうっ!」
「じょ、嬢ちゃん、さっきから勢いが凄いんだけど」
「ご、ごめんなさい、つい」
「いや、真面目に聞いてくれてあんがとね」
「いえ、わたしも聞きたかったんです」
「それで、どうするんです?」
「何を?」
「その方に、これから」
「そーねぇ。嬢ちゃんはどう思う?」
「わたしは、やはり一度、その方に想いを伝えるべきだと思います。
キャナリさんのように既に恋人がいらっしゃるなら別ですけれど
……そうでないのなら、気づかないままなんて、悲しいです」
「そっか。そうね、別に恋人がいるわけじゃないみたいだし」
「なら問題ありませんね。
……よかったです」
「うん。っていうわけで
……好きだよ、嬢ちゃん」
「はい、
…………、
……え?」
「伝えるべきって言われたらねぇ」
「え? え? わ、わたし、です?」
「うん。嬢ちゃん」
「え、あ、あ、あの、あ、」
「さて、そろそろ戻んないとハリーがうるせえことになるな。行くわ」
「あ
……」
(こつこつ)
「めっ、
――迷惑なんかじゃないですっ!!」
「
――」
「
……」
「
……やっぱ嬢ちゃんは、優しいね」
「あ、」
「んじゃね」
(ぱたん)
「
……」
「
……っ」
(ぱたん)
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