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冬灯夜
2014-07-14 03:14:23
7284文字
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テイルズ色々
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髪紐いろいろ
TOE ロエアイ TOV レイエス TOG マリヴィク
・髪紐をテーマに小話二つずつ
・ワルフェニ書きたかった(過去形)
【ロエアイ】
付き合う前
「と」
「お」
ノックとほぼ同時に開けた扉の先で、アイラが髪を括り直していた。
緩みかけた手を慌てて制す。
「すまん、続けてくれ」
「はい」
髪紐を口にくわえているせいか、いつもよりも返答が短い。
「
……
今度の合同訓練のこちら側の提案と、モンスター被害まとめだ」
アイラは頷く。
普段はまとめられている前髪も、まだ一部が額に掛かっている。
セレスティア人特有のエラーラが僅か、光ったように見えた。
アイラは基本的には指揮する立場にあるが、前線でも戦えるだけの実力を持っている。
実質事務を取り仕切っている日々の中で、きちんと手入れされてるのが意外でもあり、そうでもないような気もした。
何でもやり遂げてみせる、やり遂げてしまう、そんなことを思わせる女だ。
長い髪。
髪紐をくわえる口元。
そのどれもが、普段は見慣れない光景だ。
先程からアイラと目が合っては、すぐに伏せられる。何度か繰り返した後、髪がいつものように一つにまとめられた。
「お待たせしました」
「いいや」
報告書を渡す。
いささか逡巡してから、アイラは口を開いた。
「あの、ロエン」
「何だ?」
「
……
先程のように、ずっと見られていると、流石に少しやり辛いのですが」
「
……
ああ」
そういえば珍しさに気を取られて、ついじっと眺めてしまっていた。
「女の身支度を見るのは不躾だったな。すまない」
「そういうことでもないかと
……
いえ、いいです」
報告書をめくる。
普段の顔だ。
「インフェリアンは皆、ロエンのようなマナーを教えられているのですか?」
「平民は知らんが貴族はそうだな。母親に、女の身支度は絶対に覗くなとキツく言われた」
「そうですか。そこまで気にしなくてもいいのに」
「さっきはやり辛いと言っていただろう」
「ですから、あれは見つめられているのがやり辛いという意味ですよ」
苦笑して、次の報告書。
「髪を下ろしているのが珍しくて、ついな」
一瞬、手が止まった。
「
……
別にどんな髪型でも似合っていればいいんじゃないか」
「
……
まあ、邪魔にならないのが一番ですよ」
そう言いながらも短くしないのは。
いや、女に髪を切れというのは酷いか。だがセレスティアではそうでもない、のだろうか。インフェリアでも髪の短い平民の女がいたりもする。
「どうぞ。こちらからの報告書です。合同訓練に関しては追ってまた連絡をします」
「分かった」
報告書を受け取る。
理由など、オレが考えるべきことではない。
「ではな」
「ええ、また後で」
部屋を出る。
あのエラーラの輝きと、頬に掛かった髪が、何故か強く、印象に残っていた。
付き合った後
「ロエン? 返して頂きたいのですが」
ふ、とロエンは鼻で笑って何も言わない。
口にくわえた私の髪紐を、挑発的に誇示してみせた。
自分で取れ、と言っている。言っていないけれど。
「
……
分かりました」
一つため息。
近づいて顔を近づける。一瞬、怯んだような表情がよぎったが、私が手を伸ばすとそれは消えた。
髪紐を手で取る。
――
そのまま、唇を寄せた。
唖然とするロエンに、今度は私が笑ってみせる。
「キスをするには、邪魔でしょう?」
「だ、誰がキスしたいと言った!」
「言ってませんけどね。私はしたかったので」
「ふ、ふんっ」
踵を返してロエンは戻っていく。が、途中で振り返って、びしりと指をさした。
「いいか、次はオレからするから、お前は勝手なことをするな! いいな!」
再び踵を返して、ロエンは去っていく。
そもそも挑発してきたのはあなたですよ。
とは、言わないでおいた。
微かに染まった顔が、愛しかったから。
せいぜいポッキーゲームくらいの感覚だったロエン様と、結果に持っていくアイラさん
インフェリア人とセレスティアンだったら、セレスティアンの女の方が積極的だよね
【レイエス】
付き合う前
俺は今、ものすごーく困っている。
休憩の間に髪を結い直そうとしていたら、エステリーゼが「少し貸して下さい」というので渡した。
結い直してくれるのかと思ったら、何故か髪紐をくわえて、きらきらした瞳でこちらを見ている。
何だこれ。
「
……
えっと。嬢ちゃん、そろそろ返して欲しいなー、なんて」
「はい」
これが酒場の姐さんなら、もう意図は明白で、のってしまったりもするんだが。
姫である。
エステリーゼである。
分からん。まさか本当に強請ってるわけじゃなかろうし、というか俺の願望が入り混じって正確な判断が出来ない。
「うん、あのだから、返してくれっかな?」
「はい、取って下さ、ぁ」
言葉を発した拍子に落としかけて、慌ててまたくわえ直す。
結わう気ではなく、だが返す意思はある。
頭を抱えたい。
顔を引きつらせたままの俺に、エステリーゼが手を伸ばした。
俺の手を取り、口の近くまで持っていく。
……
普通に手で取れと、そういうことなのか?
勘違いしたと言い訳してやっちまえばよかったのに、という封じた筈の願望がまた顔を出した。
それとは別の場所で安堵して、そっと髪紐に手を伸ばす。
微かに、唇に指が触れた。
エステリーゼは、嬉しそうに笑っている。
「嬢ちゃん
……
どういうことなんかなー?」
「はい。こうすれば、距離を縮められると本に書いてあったので、試してみました!」
一点の曇りもない、完璧な笑顔である。
「ちなみにその本の題名は」
「えっと
……
『これで気になるアイツもイチコロ! 必殺指南』です」
恋愛指南書か! しかも分かりにくい上に売れてなさそう!
「古本屋さんで50ガルドでした」
「やっす」
投げ売りレベルだ。
「嬢ちゃん、あのね、それ信用しちゃいけない類の本だから」
「え、そうなんです?」
「うん。だから後で俺にちょうだい。処分しとくから」
ウインドカッターで切り刻んでやる。エアスラストの方がいいか?
「古本屋さんでちょっと立ち読みしただけなので、持ってはいないです」
「ならよかった」
焦った。非常に焦った。まあ、これで何事もなく
――
「でも、さっきのは本当でした」
「へ」
「レイヴンがさっき、触れても避けませんでした」
その言葉に、ぎしりと身体が硬直した。
「
……
その、最近レイヴンに避けられているような気がしたんですけど、原因が分からなくて。
だから、たまたま目に入った本だったんですけど、役に立ちました」
そんなことはない、と言うのが正しい。気のせいだよ、と。
本人にバレるほどに、あからさまだったろうか。
それとも、エステリーゼの直感的な感性が、何かを感じ取ってしまったのだろうか。
「
……
嬢ちゃん避けてるなんて、そんなワケないっしょ」
「そう
……
です? 本当に?」
「本当だよ」
「じゃあ、わたしの気のせいだったんですね」
ほっとしたように、さっきとは違う、へにゃりと気の抜けた顔でエステリーゼは笑った。
ごめん、と胸の奥で呟く。
「気のせい気のせい。変な心配かけちゃってごめんね?」
エステリーゼの頭に手を伸ばす。
――
震えるな。
軽く二度、頭を撫でるように叩く。
「はい。わたしこそ、ごめんなさい。ありがとうございます」
もう一度、エステリーゼは俺の手を握る。
「これからもよろしくお願いします」
明るく、憂いのとれた表情でエステリーゼは言う。
今、俺は、上手く笑えているだろうか。
出発するぞ、と仲間たちが呼ぶ声がする。
二人で立ち上がって向かう。彼女は少し前の方へ、俺は後ろの方へ。
……
さっき触れた所が熱い。
エステリーゼから触れるのはまだいい。ただ、俺からは駄目なのだ。
伝わってしまいそうで。
伝わったら、彼女を汚してしまいそうで。
笑ってくれている。ただそれだけで、いい。
付き合った後
公務の合間に廊下を歩いていると、レイヴンが壁に寄りかかって肩で息をしていた。
「レイヴン? どうしたんです?」
「じょ、嬢ちゃ
……
」
レイヴンが顔を上げた。わたしを見るや否や、こちらに駆け寄って来る。
「嬢ちゃん、かくまってっ」
「えっ」
「お願い!」
「は、はい。じゃあわたしの部屋へ」
「ありがとう!!」
いつになく焦りと安堵を滲ませて、レイヴンは言った。
自室のソファに、レイヴンがぐったりと沈んでいる。
最近、常備し始めたお茶を用意して、テーブルに置いた。
「どうぞ」
「ありがと
……
助かった
……
」
のろのろとレイヴンは起き上がり、紅茶を口に運ぶ。
そして大きく、大きく息を吐き出した。
「何があったんです? 今日は騎士団と、希望したギルドとの合同訓練ですよね」
「そそ。で、それがさぁ」
話し始めようとして、レイヴンは一旦言葉を切って、慌てて問うてきた。
「もしかして嬢ちゃん、まだ公務残ってる? 大丈夫?」
「大丈夫ですよ。ちょっと長めの休憩中です」
「あー
……
ならよかったけど。ごめんね」
「いえ。それで、何が?」
「ああ」
紅茶を啜り、改めてレイヴンは話してくれた。
まず、騎士とギルド員を混合で幾つかの組に分け、それぞれの組ごとに教官の指示の下、個別指導を行ったそうだ。
ちなみにレイヴンは教官側での参加だった。
そして最後は組で協力しての団体戦、の筈だったのだが。
「もーいつの間にかチーム関係なしの乱戦になってさー。
俺狙ってくる奴もいやがるし。主に天を射る矢の奴らだけど」
「天を射る矢の皆さんは、レイヴンに恨みでも
……
?」
「ありゃあ面白がってんだって。
……
いやでもあれか? 前にヤツが口説いてた女の子をうっかり口説いたせいか?」
真剣に考え込んでいるけれど、実際ハリーや天を射る矢の方々に会うと、確かに面白がってやりそうだと思えた。
……
ところでその女性を口説いたのはいつの話なんでしょうね。
言わないけれど。
「ルブランなんかはまあ、盾になろうとしてくれたりしたんだけど。
乱戦だし俺も適当にやろうと思ったら
……
フレンが来やがってさ
……
」
「
……
ああ」
なるほど。
フレンも教官側での参加だった。けれど、本人はむしろ指導して貰いたいという気持ちも持っている。
しかも、レイヴン
――
かつて、いや今も憧れているシュヴァーンがそこに居る。
今ならば狙っても誰にも咎められない。
「つまり、今日もフレンとの手合せから逃げてきたんですね」
「逃げるに決まってんでしょー!? 他の奴らと騎士団長同時に戦うとか無理! つかヤダ!」
その必死な答えに、思わず笑いが零れた。
「もう死ぬ思いで抜け出して、そしたら嬢ちゃんが来てくれて、本っ当助かったわ
……
」
ソファに身を沈めて、もう一度レイヴンは深々とため息をついた。
服も髪も、すっかり乱れたままだ。
「レイヴン、髪が」
「ん? あ、そのまんまだった」
「あの、よかったら結い直しましょうか」
「え、嬢ちゃんがやってくれんの? じゃあお願いしよっかな」
「はい」
ソファの隣に座る。レイヴンは解いた髪紐を渡そうとして
――
何故か口にくわえた。
「レイヴン?」
「よろしく」
レイヴンはくわえたまま器用に喋る。一向に髪紐を渡す気配はない。
「髪紐
……
」
「うん、取って」
何故わざわざ口に。よく分からないながらも、とりあえず髪紐を取る。
――
取れなかった。
紐の端はレイヴンの歯でしっかり噛まれている。
「あの」
もう一度引っぱる。取れない。
レイヴンを伺うと、にぃ、と笑う。そして自分の唇を指で示してみせた。
「え」
レイヴンは何も言わない。ただ笑みを深くする。
……
そういえば、旅の途中で似たようなことをしたことを、今思い出した。
悪あがきにもう一度引っぱる。やはり無理だった。
……
。
覚悟を決める。取るだけ、取るだけ。ただ少し距離が近くなるそれだけ。
髪紐の端をくわえる。
目の前に、レイヴンの顔がある。
引っ張って。そのままレイヴンの顔が近づいて、顎を軽く掴まれて
――
「
……
、んじゃ、よろしく」
髪紐を離したレイヴンが、とても楽しそうに笑った。
対するわたしは、髪紐を手に落として、何も言えない。
くつくつ笑い声を耐えながら、レイヴンが私に背を向ける。ああ、そうだ結い直さなければ。
「
……
いじわる」
「そーよ? 知らなかった?」
「いじわるです」
とうとう笑いを堪えきれなくなったらしいレイヴンの髪を、少しキツめに引っぱって、呟いた。
付き合う前でおっさん視点だとどうしても片思い描写をしたくなる
下はその反動
【マリヴィク】
付き合う前
訓練場、途中の廊下、座学講義で使った教場。
あとはこの教官室だけ。
机の下に潜り込む。一体どこで落としたものか。
「何をしてるんだ?」
上からマリクの声が降ってきた。
「髪紐を探してるのよ」
机の間から見えるマリクの足に向かって答える。
ここにもない。
机の下から這い出ると、マリクが怪訝そうな顔をした。
「あるじゃないか」
「これは予備の方。結構気に入ってるのよ、あれ」
一つ結びの髪を軽く流した。
「青いヤツだったか」
「ええ」
マリクが床に目を向ける。手伝ってくれるらしい。
椅子の下、棚と壁の間。
ない。
「ヴィクトリア、これか?」
振り向くと、窓辺でマリクが髪紐を手に持っていた。
「それだわ。ありがとう」
「どういたしまして」
髪紐を渡してくれる
――
が、ふと思い出した。
「他人の髪紐や髪留めを拾うと、その人の不幸も拾うっていうわね」
「おい待て」
「ただのジンクスよ」
「
……
わざとか? わざと拾わせたのか?」
「何、信じるの? 意外ね」
胡乱な目を向けられる。
別にいじわるだのそんなつもりは全くない。
が、お互いにこういう発言をするものだから、どうも生徒には仲が悪いと思われている。
他にも指導方針で論戦することも影響しているのだろうけど、特に訂正することもない。
「信じるというかな
……
拾った後に言われたら気になるもんだろう」
「たまたま思い出しただけよ」
手を差し出す。が、今度は一向に渡そうとしない。
不意にマリクが自分の髪紐を解いた。それを机の上に落とす。
「取ってくれ」
「は?」
「それ」
……
何となくやらせたいことは分かった。
「はい」
「よし。これでお互い様だ」
拾って指で弄る。満足げにマリクが頷いた。
「たまに子供みたいなことするわよね」
「先に言い出したのはお前の方だ」
「たまたま思い出しただけって言ったでしょう」
そういう所が、ギャップがあっていい、などと言う女を増やす一因になっているのだ。
……
別にファンがどれほど増えようが、関係なんてないけれど。
今度こそ、髪紐が差し出された。受け取って、マリクの髪紐を返す。
「これで戻って来たことになるな、お互いの不幸も」
「そうね。
……
そうなのかしら?」
拾った時点で不幸も拾うなら、もう一度落として拾わないといけないのではないだろうか。
まあ、そこまで深く考えることもない。
「そうだ」
マリクはそれで納得しているようなので、私も別に構わない。
「じゃあ」
「ん? ああ、次講義か」
「ええ。
……
手伝ってくれてありがとう」
「気にするな」
教官室の扉を開けて、出る直前。
「
……
俺の不幸を、お前に押し付けるわけにいはいかないからな」
小さな、もしかしたら聞かせるつもりもなかったかもしれない、そんな呟きが聞こえた。
付き合った後
「髪、葉っぱがついてるわ」
ヴィクトリアが手を伸ばすので、動きを止める。
三国の合同会議兼、対魔物用の実戦訓練の帰り道、ちょうど橋の上でのことだった。
ヴィクトリアの指が葉を摘まみ
――
ついでに髪を通り抜けた時に、するりと髪紐が解けた。
「おっと」
「あら。ごめんなさい」
葉を捨てたその指で、肩に落ちた髪紐もヴィクトリアは拾い上げる。
触れられただけで解けるとは、大分緩んでいたようだ。元からきつくは縛っていないから、気づきもしなかった。
「結いましょうか」
「いや、大丈夫だ」
「
……
そう」
心なしか声が低く、というか沈んだ気がする。
「元々緩んでたんだろう。今日は俺達も随分動いたしな」
だから気にするな、と言ったが、ヴィクトリアはやや呆れたようなため息をついた。
何に呆れたんだ。
首を傾げながら髪紐を受け取る為に手を出す。
ヴィクトリアは、そこに書類一式を乗せた。
「ん?」
そして髪紐に唇を寄せ
――
それを俺の唇に押し付けた。
咄嗟に口で受け取る。一瞬、指を挟んだ感覚を残して、ヴィクトリアの手が離れた。
「それ、騎士学校の方に出しといてちょうだい。まだ書く部分あるからそこも」
「お、」
「一応、名誉師範なわけだし問題ないでしょう。わたしは王宮の方に出してくるわ」
言って、ヴィクトリアは踵を返す。
「多分私の方が早く終わるから、先に行ってるわ、タクティクス」
じゃあよろしく。
振り向いて、にっこり笑ってみせて、ヴィクトリアは王宮へと早足で去っていった。
手の中の書類を見る。
それから、口にくわえたままの髪紐をもう片手で取る。
「
……
やられたな」
書類をまんまと押し付けられたこと。
そして、往来で、他人には気づかれずに。
とっとと終わらせて、先にタクティクスで待っていよう。驚く顔がきっと見られる。
騎士学校へ向かいながら、口元が軽く緩んでいるのを自覚していた。
だから天然たらしで鈍感なのは性質悪いってお話ですよ
こう書くと教官がギャルゲの主人公のようだ
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