冬灯夜
2014-06-09 01:25:50
6761文字
Public オリジナル
 

('A`)花夢のようです(後)

花夢のようです(前)の続き
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 だん、と少女が勢いよく足を踏み鳴らす。濁った海から湧き出る花弁が、動きを緩めた。
 同じように少年も足を踏み鳴らすと、澱んだ波が少し引いた。


( ^ω^)「だいじょうぶだお」


 緩んだ顔の少年が、にんまりと笑った。


ξ゚⊿゚)ξ「ほら、しゃんと立ちなさい」


 凛とした顔立ちの少女が、服についた花弁を払う。


('A`)「……お前ら、は」

( ^ω^)「僕たちの声、聞こえてるかお?」

('A`)「あ、……ああ」

ξ゚⊿゚)ξ「……

ξ゚ー゚)ξ「やっと、届いた」

('A`)「ずっと……オレに何か、言おうとしてたよな」

( ^ω^)「だお!」

ξ゚⊿゚)ξ「全く、気づくのが遅いのよ」


 困惑したまま、それでも手を離さずにいると、やはり心が落ち着いていく。


川 ゚ -゚)「そろそろいいか?」

ξ゚⊿゚)ξ「ええ」

('A`)「って待て、何だ何がだ。ていうかてめえ、よくも」

川 ゚ -゚)「ドクオ。海を見ろ」

('A`)「……え」

川 ゚ -゚)「早く。お前の夢の源はそこだ」


 夢の源。さきほど、突き飛ばされる前も同じ言葉を聞いた。
 あの海に浸かり、花弁がまとわりつく感覚を思い出す。ぞくりと芯から震えが走る。
 だが。


ξ゚⊿゚)ξつ('A`)⊂(^ω^ )


 少年と少女が、ぎゅっとドクオの手を握りしめる。
 交互に見ると、二人は黙って頷いた。
 ――腹を括るしかない。


('A`)「……


 昏い、淀んだ波。
 曇って先の見えない空。
 海底からごぽりと湧き上がる紫陽花の花弁。赤。鮮やか。青。くすんだ。
 呑み込まれそうな、空洞を湛えた海。


川 ゚ -゚)「何がある?」


 海。花弁。
 そんな答えを求められているわけではないことは、分かった。
 ゆらり、ごぽり、
 奥深くから這い上がってくるものは。


('A`)「……不安」


 ただその一言でしか、形容できないもの。


川 ゚ -゚)「そう。ではその正体は?」

('A`)「正体?」

川 ゚ -゚)「夢の形をとって、お前を怖がらせるもの。
     いつから夢を見始めた、とお前は言った?」

('A`)「……二週間くらい前」


 口が勝手に滑っていく。
 するりと言葉が抜け出していくようだった。


('A`)「夜、近道に公園を通ったら、街灯に紫陽花が照らされてて」

('A`)「沈んだ色だと思ったけど、綺麗だった」

('A`)「――赤いもんが、そこに散ったんだ」


 何が起きたのか分からなかった。
 咄嗟に茂みにそのまま身を隠した。
 重い音がして、葉の合間から横になった足が見えた。
 赤い、紅い血が、地面を濡らしていく。

 ずる、ずる、何かを啜る音がした。


('A`)「逃げなきゃ、オレも。だから」

川 ゚ -゚)「だから?」

('A`)「逃げた。でも枝踏んじまって」


       「見たな」


       「――決して、逃がしはしないぞ」


 背後からの声。
 遠くの筈なのに、反響して聞こえるようだった。

 そして次の日、公園を覗いてみたら。


( A )「……あじさいが、赤く、なってた……


 まるで血を吸ったみたいに。


川 ゚ -゚)「――十分だ」


 強く両手を握られて、自分が震えていたことに、ようやくドクオは気付いた。
 少年と少女から、伝わってくる。
 「だいじょうぶだ」、と。
 ドクオは二人の手を握り返した。強く。


('A`)「そうだ、あの日から夢を見だしたんだ。何で、今までオレ……

川 ゚ -゚)「お前を守る為」

('A`)「え?」

川 ゚ -゚)「そうだろう?」

ξ゚⊿゚)ξ”

( ^ω^)”


 クーの問いに、二人は頷いた。


( ^ω^)「だって、怖がったら呑まれちゃうお」

ξ゚⊿゚)ξ「でも抑えてたら、今度は全部抑えなくちゃいけなくなっちゃって」

( ^ω^)「それで忘れちゃったんだと思うお」

(*^ω^)「あ、でもでも、ドクオが久しぶりに僕たちを見れたのは、嬉しかったお!」

ξ゚⊿゚)ξ「でも全然、聞こえてなくて、……それはちょっと、ちょっとだけよ、悲しかったわ」

('A`)「お前らが、オレを助けてくれてた、のか」


 夢の中では、二人の足元から花弁が湧いていた。
 だがさきほど、二人が足を踏み鳴らすと、波も花弁も動きを緩めた。
 あの声も顔も分からない状態で、二人は、あのうねりを押し留めていたのだ。
 でもどうして。


('A`)「……久しぶり?」

( ^ω^)「だお!」

('A`)「前にも、会ってた?」

ξ゚⊿゚)ξ「そうよ。あんたは二週間前の出来事よりずっと前から、忘れちゃってたけど」

('A`)「……


 記憶の隅にひっかかる。
 昔も、こうして手を繋いでいたような。この奇妙に温度のない、柔らかな感覚を、知っている。


('A`)、「……

川 ゚ -゚)「来るぞ」


 記憶を手繰り、口を開こうとした時、クーが低い声を出した。
 視線を追って海を見る。
 海底からぽつぽつと花弁が浮き上がり――泡立って波立った。


【+  】ゞ゚)


 黒い棺を担いだ、青白い顔の男。
 ――あの日、公園で見た。


【+  】ゞ゚)「……ようやく入れた」


 反響する声は、低く、喜びに満ちていた。
 身体の奥に響いてくる。
 青い花弁と赤い花弁が、目の前をよぎる。


(;'A`)「あ、」

ξ゚⊿゚)ξ「ドクオには指一本触れさせないわ」

( #^ω^)「ぜったい、守るんだお!」


 反射的に足が後ずさる。それと同時に、ドクオの前に少年と少女が進み出た。
 二つの背中。
 ドクオの半分ほどしかない、小さな背丈。
 一瞬、その背中が大きく見えた。――既視感を伴って。


【+  】ゞ゚)「私が来ることを遅めるしか出来ぬ、矮小な者どもに何が出来る」

( ^ω^)「できなくたって守るんだお」

ξ゚⊿゚)ξ「ぜったい、よ」


       『ぜったい、まもるお』
     『やくそくするわ。ぜったいよ』

         『「だって」』


ξ゚⊿゚)ξ「ともだちだから!!」(^ω^ )


 小さな手。大きな手。
 笑い声。
 いつも傍にいた。


('A`)「――ブーン! ――ツン!」


 その単語は、雷光のような閃きをもたらした。


 目の前に迫っていた長い爪を、二人は押し留める。
 舌打ちが聞こえる。


【+  】ゞ゚)「だが所詮、この程度では」

川 ゚ -゚)「やあ、吸血鬼。ところで誰かお忘れじゃないか?」


 剣呑な空気の中でのそれは、随分と間延びした声にも思えた。


【+  】ゞ゚)「……何? 貴様、何故他人の夢に」

川 ゚ -゚)「さあて、どうしてだろうな?」

【+  】ゞ゚)「――魔女か!」


 初めて男――吸血鬼の声に焦りが混じる。
 にたりと、吸血鬼よりも凶悪に、クーは笑った。


川 ゚ー゚)「大人しく退くなら、見逃してやらんこともない」

【+  】ゞ゚)「……


 ――花弁が吸血鬼の周囲に集う。青と赤の紫陽花が幾つも幾つも。
 うねりをあげる波と共に、押し寄せる。
 クーが本を開く。
 少年と少女が同時に足を鳴らした。
 ばちばちと激しい音を立てて、ドクオに襲いかかる花弁が逸れていく。
 同時にそれは、二人の頬や手を切り裂いていった。


(;'A`)「っや、やめろ!」

( ^ω^)「だいじょうぶだお、ドクオ」

ξ゚⊿゚)ξ「こんなの全然平気なんだから」

(;'A`)「馬鹿言うなよ、こんなのオレは――!」

川 ゚ -゚)「大丈夫さ」

('A`)「! お前、ちくしょう何なんだよ、無責任にそんなこと――

川 ゚ -゚)「大丈夫さ」


 クーは繰り返す。
 開いた本から、ばらばらと白いページが舞い踊った。


川 ゚ -゚)「お前がその二人の名を思い出したのと同じように」


ξ゚⊿゚)ξ ( ^ω^)


川 ゚ -゚)「お前がまた、信じるのならば」

('A`)「――――


 紫陽花が渦を巻く。
 少年――ブーンを見る。ブーンは、満開の笑顔を見せた。
 少女――ツンを見る。ツンは、大きく頷いて見せた。
 二人の間に足を踏み出す。
 手を、握った。


(*^ω^)

ξ*゚ー゚)ξ


 赤と青の花弁、真っ新なページ、握った手から溢れてくる、ひかり。


【+  】ゞ )「―――ー!!」


 花弁の向こうの吸血鬼が叫ぶ。
 視界が真っ白に塗り潰されていく。
 だがもう、怖くはなかった。繋いだ手が、そこにあるから。


     「――さあ、お前の悪夢を解き、消そう」


 確かに聞こえる声が、そこにあるから。






 目を開くと、穏やかな海が広がっていた。
 透明ではないものの、あのごちゃりと濁った色ではない。
 空は明るく、高かった。


川 ゚ -゚)「何だ、ここも暑くなってしまうな」


 クーが肩を竦める。
 我に返った。


('A`)「な、なあ、あいつ、消え――


 両脇の二人に問いかけようとして、言葉が詰まった。
 半分ほどの背丈しかなかった二人が、同じくらいの背になっていた。
 ブーンに至ってはドクオよりも背が高い。


('A`)「」

( ^ω^)「お?」

(;'A`)「んなあああああああ!?」


 思わず手を振りほどいて後ずさった。


ξ゚⊿゚)ξ「ちょ、うるさいわよドクオ」

(;'A`)「だっ、なん、おま、うおあお」

ξ゚⊿゚)ξ「人語喋ってちょうだい」

(;'A`)「何でお前らでっかくなってんだよおおおお!?」

( ^ω^)「あ、ほんとだお。ドクオよりおっきくなってるおー」


 のほほんとお気楽に笑い、ブーンは身体を曲げ伸ばしし始めた。
 一気にドクオの身体から力が抜けた。
 と同時、目の前が霞がかっていく。


川 ゚ -゚)「そろそろ時間切れか」

('A`)「え」

川 ゚ -゚)「夢は覚めるものだろう?」

('A`)「でも、まだ」


 二人が何なのか。
 記憶の底にある。もう少しで分かる。


('A`)「オレ、オレは」 


 視界はもうかなり揺らめいて、白くけぶっている。
 手探りでブーンとツンに手を伸ばす。


(  ω )「ドクオ」

ξ ⊿ )ξ「だいじょうぶよ」


 手が届いた。
 優しく握り返してくれる手。


     「だって、思い出してくれたから」

     「だから、また」


 ああ、待って、少しだけ。
 これだけは言わなきゃいけないんだ。


('A`)「――ありがとう!!」


 もう何も見えない。
 けれど、きっと、二人は笑っていた。 






 ――次に目を開けると、そこは既に時計塔の二階だった。


('A`)「……ブーン。ツン」


 呟くと、その名前はすとんと胸に落ちる。
 思い出した。


川 ゚ -゚)「ふう。喉が渇いたな」

('A`)「……なあ」

川 ゚ -゚)「何だ」

('A`)「知ってたのか? あの二人のこと」

川 ゚ -゚)「知らんよ」

('A`)「やっぱりとか何とか言ってたろ」

川 ゚ -゚)「お前の話を聞いて、予想はついていた」

('A`)「……


 クーは台所へ向かう。
 魔法瓶からケトルに湯を移し、火をつけた。


('A`)「友達だった」

川 ゚ -゚)「ああ」

('A`)「初めての。オレにしか見えない」

川 ゚ -゚)「イマジナリーフレンド」

('A`)「何ていうのかは知らないけど、あいつらは居た。幻なんかじゃない」

川 ゚ -゚)「空想の果てにしては、質量があったからな。実際そうなんだろう」

('A`)「オレを助けてくれたんだ……それから見えなくなった。忘れた」


 いつも一緒に居た。
 寂しくなかった。
 昔もそうだったのだ。怖がるドクオの手を握り、だいじょうぶだと約束した。
 ぜったいにまもる、と。


('A`)「ずっと、忘れてたのに」


 ブーンもツンも、また助けてくれた。


川 ゚ -゚)「義理堅いんだろう、あいつらは。それか」


 湯がドリップに注がれる。
 コーヒーの香りが立つ。


川 ゚ -゚)「お前のことが、よっぽど好きなんだろうさ」


 ――ああ。
 そうだったら、それはどんなに得難く嬉しいことで。


('A`)「……もっと……大事に、したかった、のに」


 後悔してもしきれない、大切な出来事だったか。


川 ゚ -゚)「まあ、飲め。私も疲れた」

('A`)「……おう」

川 ゚ -゚)「今日は特別なんだぞ。わざわざ夢の中に繋げてやった」

('A`)「あれ何だ、って聞くだけ無駄だな」

川 ゚ -゚)「そうだな。ああ本当疲れた」

('A`)「じゃ、何でその疲れることやったんだよ。特別ってことは、別の方法もあったんだろ?」

川 ゚ -゚)「涼しそうだったからな」

('A`)「は?」

川 ゚ -゚)「予想通り、海辺で曇ってて涼しかった。一時のことだったが」


 この女。
 あまりのくだらなさに脱力感を覚える。
 じとりと睨んでみるものの、当然の如く堪えた様子はない。あるわけがない。
 クーがコーヒーを啜る。ため息をついて、ドクオも啜った。


('A`)「……なあ」

川 ゚ -゚)「何だ。占い料か? それなら――

('A`)「やっぱマズいって、このコーヒー」

川 ゚ -゚)「なに?」


 もう一口啜って、クーは首を傾げた。


川 ゚ -゚)「……そうか。これはマズいのか」

('A`)「マズいな」


 あまり美味くない、が正確だが、あえて断言してやる。
 そうか、ともう一度クーは呟いた。


川 ゚ -゚)「お前は美味く淹れられるのか?」

('A`)「お前よりはな」

川 ゚ -゚)「ならこれから来る時は、お前が淹れろ。そうすれば解決だ」

('A`)「何だそりゃ。そうそう占い頼むことなんかねえぞ」

川 ゚ -゚)「だから、修行だ修行」

('A`)「はぁ?」

川 ゚ -゚)「また会うんだろう? なら見えるようにならないと」


 一瞬、聞き違いかと思った。


('A`)「……え?」

川 ゚ -゚)「別料金を取るつもりだったが、お前がこれより美味いコーヒーを淹れられるならば、少しは考えよう」

('A`)「会える? ブーンとツンに?」

川 ゚ -゚)「ああ」

('A`)「本当に? 本当か?」

川 ゚ -゚)「居るんだから会えるだろう。お前さえ、見えればな」


 身体が震える。
 クーはまた一口コーヒーを啜り、やはり首を傾げた。


川 ゚ -゚)「……ううむ。これ以上の味を知らんからな。お前の出来次第だな」

( A )「……ああ」

川 ゚ -゚)「期待してるぞ、ドクオ」

( A )「……クーよりマズくなんて、淹れらんねーよ」


 震える声を、クーは聞き流す。
 ぽたりと、コーヒーに波紋が一つ出来た。



(了)





元は2ちゃんねるVIP発祥のSS
現在はVIPおよび、したらば掲示板を中心に作品が公開されている

興味のある方は「ブーン系」「ブーン系 まとめ」などで検索を
→参考:ブーン系小説をはじめて読む人へ(仮)

改訂版をまとめて頂きました
短編とかの保管庫@ブーン系さま