香春 蘇葉
2021-01-03 18:40:00
1557文字
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【ベッド籠り達の年明け】

現パロルシサン。年末年始の話 中

「あ、目が覚めましたか?」

遮光カーテンの隙間から差した光を目に受けて、小さく唸りながら目を覚まして。一番に昨日よりもかなり元気そうな声音が鼓膜を震わせたので、ルシフェルは思わず口元を緩ませた。もそもそと体を動かして、自らの腕の中を覗き込むと、胸板にぴたりと密着したままの彼がその赤い瞳だけを前髪の隙間から覗かせてこちらを見上げている。まるで小動物のような様相にまたひとつ笑みを深めながら、つむじに鼻先を埋めて深く息を吸えば、くすくすとさもくすぐったそうな笑い声が上がって、彼が胸板を押しながらすっかりと顔色が良くなったそのかんばせをこちらに向けた。

「明けましておめでとうございます、ルシフェルさん。丁度朝日が出てきたところですよ」

「うん。君も大分調子が良くなったようだ。明けましておめでとう、サンダルフォン」

「すぐに朝ごはんを用意しますね」

もそり、と腕の中の彼がベッドから抜け出そうと身じろぐ。ひとつ瞬きをしてそれを見下ろしたルシフェルは、束の間考えるようなそぶりをしたあとに小さな笑みで喉を揺らすと、彼を抱き込む腕に力をこめた。容易に抜け出せると思っていたのか、はたまたルシフェルがあっさりと解放してくれると思っていたのか。構えていなかった不意の力に、んぐ、と喉から妙な悲鳴をあげて、サンダルフォンの頬が胸板に押しつぶされるようにして密着する。

「ん、む……る、ルシフェルさん、放して、」

「君はまさか、多少回復した程度で私が家事を許すとでも?」

「ですが、ほら……もういつもと変わりません」

だとしても、とルシフェルは甘えるように彼のつむじに頬を擦り寄せた。腕の中の痩身が一瞬、驚いたように飛び上がって、胸板に密着した彼の頬がにわかに熱を上げる。付き合い始めてもう数年が経ち、同棲を始めて、抱擁やキスはおろか互いの柔いところを許し、いくつもの夜を肌を重ね過ごしてきたような関係だというのに、サンダルフォンときたらいつまで経っても初々しい反応のままなのだ。それがまたルシフェルにとっては愛おしくて堪らないのだが。

「だとしても、私が君ともう少し寝ていたいと思ってしまった。駄目だろうか」

……っ、そういうの、ずるいですよ!!」

「承知の上だ。それに、君の休息時間が取れるのなら、私はいくらでもずるい男になろう」

胸元に埋まったサンダルフォンの顔を、そっと顎を掬い上げて上向かせれば、真っ赤に熟れた頬が視界に飛び込んでくる。その様に肩を竦めてまたひとつ笑みをこぼしたルシフェルは、上体をゆっくり屈めると、ほんの少し尖った彼の唇を食んだ。何度か軽く開閉して、咀嚼するように唇を刺激すれば、硬く閉ざされていた歯の根が息を求めて薄く開く。そこへ舌先を差し入れて、奥で縮こまっていた舌を捉えて、表面を撫でさすり、舌裏をくすぐれば、腕の中の体がびくびくと跳ねた。彼の口内を余すことなくくすぐって、満足がいった頃に解放すれば、腕に縋り付くサンダルフォンの顔が耳まで真っ赤になっていて、とろんと溶けた表情も相まって朝の空気にそぐわぬほどに扇情的で。いけないとわかっていながら、ここ二週間ほど触れ合いのなかった体がぞくりと震えた。

「朝からなんて顔をされてるんですか」

「これは私も予想外だった。何とか落ち着こう」

苦笑をこぼして、再び彼を抱き込めば、両脚が絡められてさらに体が密着する。軽く息を飲めば、悪戯が成功したかのような笑い声が響いて、サンダルフォンの指先にぎゅうと力がこもった。

「起きたら覚えていてくださいよ」

怖いな、と笑み混じりに口にして、まだ抜け切らぬ眠気に任せて目を閉じる。次に目が覚めて彼の調子が良さそうだったら、二人で初詣がてら散歩にでかけよう。