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香春 蘇葉
2020-09-04 19:50:07
1963文字
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【Remind】
ルシサンwebオンリー無配
【ルシフェルさまはそんなこと言わない!】の後日談。
「ルシフェルさま、眠くなってしまいましたか」
喫茶室の窓側の席。その椅子に腰掛けて錬金術の開祖が一度読んで図書室に収めた学術書を読んでいたルシフェルは、しぱしぱと目を瞬かせて、こちらを覗き込んでいる青年を見上げた。丁度喫茶室の閉店作業を終えたらしく、エプロンを外しながら気遣わしげに眉根を寄せる彼に、ルシフェルは手の甲で軽く目を擦りながら、もんだいないよ、といつも以上にのんびりとした声音で答える。
「ルシフェルさま、俺も終わりました。目が蕩けて落ちてしまいそうですよ。寝てしまいましょう」
「
……
まいかいおもうのだが、きみはこのすがたのわたしを、しょうしょうこどもあつかいしすぎでなないだろうか」
「
……
そんなことは、」
「そうおもうのならば、いまわたしをだきあげようとしているそのてを、とめてほしい」
本をぱたんと閉じて、腕に抱きかかえると、重たい瞼を必死に押し上げながら、抗議の意味を込めて彼をじっと見つめる。ルシフェルの意図を察したのだろう。椅子の上から小さな体を抱き上げようとするその動きをぴたりと止めて、彼が困ったように眉尻を下げて目元だけで笑った。
「今の貴方は、体の年齢に引っ張られて、元の体とは勝手が違うんですよ。俺がお世話をさせて頂くのは、当たり前では?」
「それはわたしじしん、よくわかっているが、それにしてもいささかかほごではないだろうか?サンダルフォン」
自分の足で歩いて部屋に戻る胸を重ねて伝えると、エプロンを腕にかけて身を起こしたサンダルフォンが、束の間何かと葛藤するように宙を振り仰ぐ。ややあって眉間に拳を押し当てつつ戻ってきた彼は、それはそれは残念そうな顔をしながら、せめて手を、と開いた方の手を差し出してきた。サンダルフォンの掌が自分のそれよりも大きなことに、改めて新鮮さを感じながら、それならば、と差し出された手を取って椅子からぴょんと飛び降りる。
「本、俺が持ちますね」
やはり些か子ども扱いが過ぎるのではないだろうか。彼はこの五歳児ほどの体の中に、いつものルシフェルがいることを忘れてしまっているのではないだろうか。内心、真剣に疑ってしまいつつも、喫茶室を出て食堂を横切り、廊下に出ると、二人並んでのんびり部屋まで歩いていく。遅い時間だからなのか、結局廊下で団員の一人ともすれ違うことなく部屋まで戻る。
扉の鍵を閉めると同時に、サンダルフォンはすぐにルシフェルの寝巻きを出してきて、ご自分で着替えますか?と少し寂しそうにしながら、幼い掌に手渡した。本と共にそれを受け取りながら、君が着替えまで手伝う必要はないよ、と首を横に振れば、サンダルフォンはいまいち納得のいかないような顔をして、その赤い瞳を笑みの形に眇めた。
手早く寝巻きに着替えていると、今度は背後からふわりとエーテルが空気を掻き混ぜる気配がする。上衣のボタンを留めながら肩越しに振り返ると、丁度とサンダルフォンが横縞のシャツからいつも鎧の下に身につける装束に姿を変えている。さて、ベッドに入りましょうか。ボタンを留め終えたルシフェルを、恭しく抱き上げると、サンダルフォンは素肌の爪先で床を進み、天板を直したばかりのベッドに小さな体を下ろす。ぺたん、とシーツに座り込んだルシフェルを、蕩けるような微笑で見下ろした彼は、そっと身を屈めると、白銀の前髪を指先でかき分けて、形の良い額へと唇を押し付けた。
む。ルシフェルの唇がへの字に曲がる。いい夢を、と。そう口にしかけたサンダルフォンの両肩に全体重をかけて彼の重心を自分側へ傾がせると、ルシフェルは憤りのままにサンダルフォンの唇へ噛み付くように己のそれを重ねた。
「む、ぅ
……
んぅっ」
慣れたように彼の口内を好き勝手にすれば、びくりと体を跳ねさせた後に極弱い力でサンダルフォンが抵抗を始める。上顎を擽り、歯列をなぞり、年齢相応のやや短い舌先を絡めてそれを制すと、ルシフェルは彼の体を撫で下ろして、装束の裾からそっと指先を差し入れた。
「
……
!や、やめてください!!」
途中から、ルシフェルの体温と匂いにうっとりしたように身を預けていたサンダルフォンであったが、さすがに直接的な欲を向けられては黙っていられなかったらしく、先程の抵抗よりやや強い力で引き剥がされて、ルシフェルはそれ以上の接触をお預けにされた。不満げに口を尖らせたルシフェルに、真っ赤になった顔を向けて、サンダルフォンが震える声で言う。
「そういうことは!貴方がもっと大きくなってからです!」
そういうや否や、叫んだ勢いのままに、羞恥を隠すかの如く抱きしめられる。どうやら忘れていたことを思い出してくれたようだ。確かな手答えを感じたルシフェルは彼の肩口にそっと顎先を乗せると満足げに微笑んだ。
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