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ながひさありか
2023-12-01 12:42:25
2155文字
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エスアイ:皇都の雪
データ整理してたら「3.1やったんだけどこの二人最高じゃないか?」というメモ付きの下書き(8年くらい前に書いたっぽい)が残ってたのであまり手直しせずあげます。
皇都イシュガルドは今日も常と変わらぬ雪模様だった。
竜の眼を抱えて各地を飛び回っているエスティニアンは、数ヶ月ぶりに皇都に帰還するやいなや、吐く息の白さに嫌気を覚えながら、彼の友人であるアイメリクが総長を務める神殿騎士団本部を訪れた。陽も随分と傾いた時刻だ。運が良ければ、仕事を終えているだろう。
しかし扉をあけた真正面の執務机に、主人の姿はなかった。別室かと首を巡らせる前に、椅子の傍でなにやら兵士と報告書を見ているのであろう女へ声をかけた。
「アイメリク様は聖レマノー大聖堂です」
そうエスティニアンへ無感動に告げた彼女は
――
ルキアは、アイメリクの副官だ。御無事の帰還なによりです、とこれまた無感動にエスティニアンへと続ける彼女に、あんたも元気そうでなによりだ、と言葉を返しておく。
「それで奴の予定は? 今日はこのまま俺が連れ帰っても構わないか」
「構いますが、おそらく問題はないかと。何かあればアイメリク様がお断りするかとおもわれますが」
部下の私が決めることではありません、と糞真面目な答えを返す女に「どいつとこいつも馬鹿がつくほどの真面目だな」と胸中で嘆息を吐く。あの上司にしてこの部下あり。なんとも気質の分かりやすい奴らだよ、とごちる。
「たまにはあんたもゆっくりしたらどうだ。今夜は俺が奴を見ておく」
「『本当に』休ませていただけるなら有り難いですが」
ルキアに言葉を投げながらさっさと踵を返して本部を出て行こうとするエスティニアンの背中に、妙なニュアンスの含まれた言葉がかけられる。
立ち止まってしばし言葉の意味を考えてみたが、気にするほどのことでもないか、と今度こそ本部を後にした。
察しのいい女は嫌いではないが、それに応えてやる義理もない。
誰にでもひらかれている、と司祭の語る大聖堂は、神学院が併設されていることもあり、人の姿が絶えることがない。
神学生が重たそうな本を抱えながら通り過ぎるのを横目に、エスティニアンは大聖堂へと足を踏み入れる。
聖堂内は勤務後の時間帯だからか、熱心に祈りを捧げるものの姿がそれなりにあった。青いステンドグラスが戦神ハルオーネの像を照らしている。
目当ての人物は、二列に別れて並べられた椅子の右側、ハルオーネに最も近い通路側の最前に立ち、胸に両手をあてて祈っているようだった。
足音をなるべくたてないように近づいて行き、彼から二列後ろ、左側の椅子へと腰掛けると、目を伏せ、祈りを捧げる男を見た。傍の燭台に灯されたろうそくの火が、友人を
――
アイメリクの横顔を照らしている。
果たしていつから祈りを捧げているのかしらないが、随分と熱心なことだ、とエスティニアンは五分を越えても身じろぎしないアイメリクの姿に、かすかに嘆息した。
祈りを中断するほど不信心者ではないし、急いでもいないのでそのまま待つことにする。ついでに友人の幸いをハルオーネに祈っておくが、おざなりな祈りだという自覚はあった。
それからさらに十分の後、ようやくアイメリクが伏せられた瞼を上げ、蒼い瞳をハルオーネへと向けた。長い祈りから顔を上げた男の表情は、眼前の彫像のように硬い。
「相変わらず熱心だな」
「エスティニアン、帰っていたのか」
「先刻な。副官がお前はここだっていうんで待っていたが、お前ほど長く祈っているやつもそうはいまい」
「声をかけてくれても構わなかったのだが」
「別に急ぎの用事があるわけでもなし、そんな必要はねぇだろ。
……
で、これは土産だ」
ほら、とエスティニアンはラッピングもなにもされていない、どこからどうみてもその辺の商店で買ってきました、といわんばかりの包みをアイメリクへ渡す。
「今回はどこへ?」
「グリダニアのあたりをちょっとな」
エスティニアンから素直に包みを受け取ると、アイメリクはかすかに眉を下げた。
「苦労をかける」
「
……
なんだ突然。いつものことだろう」
「いつものことだから、さ。私が皇都に縛られている間に、君に何かあれば、と時折そんな妄想にかられることがあっていけない。無事に帰ってきてくれてなによりだ」
先ほども君の無事を祈っていたのだが、それはどうやら叶えられたようだ、とアイメリクがエスティニアンに視線を向けて微笑む。
純然たる善意しか存在しない友人の素直な態度に、エスティニアンは微かにたじろいだ。
甲冑のままでよかった、と表情の殆ど見えない装備に感謝する。
いつものことではあるのだが、この男の純真さに少しだけ居心地の悪さを感じることがあった。
「蒼の竜騎士がそうそう簡単にやられてたまるか。
……
それはさておき、お前、今日はこのまま帰還だな? 都合が悪くなければお前の部屋で一杯どうかと思ったんだが」
酒瓶をアイメリクに見せるように持ち上げれば、「では君の手土産と一緒にいただこう」と彼は人形じみた美しい口許をわずかにゆるませ、美味しいものを待ちきれない子どものような声を落とした。
「念の為言っておくと、お前を連れ帰ることはお前の副官にも許可はもらってる」
ジト目の部下を思い出しながら口にしたエスティニアンに、手間をかけさせたね、と何もわかっていない声でアイメリクが微笑した。
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