ながひさありか
2023-10-11 00:18:25
1571文字
Public FF16-JC
 

ジョシュクラ現パロ

書いてるうちになんか違うなってなったのでボツ。現パロで「母上」って他人に言うのは違和感あるかも、と思い一部「母さん」呼びになっています。

「結婚」
 外で会っていてよかった、とジョシュアはカップを持ち上げたまま硬直してしまった母親を見返しながら、ほっと胸を撫で下ろした。実家であれば今頃カップを投げられるかカップが床で粉々になっていただろうと想像し、静かに「はい」と頷く。
 母は瞳を見開いたまま時が止まったかのように硬直していたが、やがてカップをソーサに音を立てないように置き、眉間を指で押さえながら深いため息をついた。
……それは一体どこのご令嬢ですか? ロズフィールド家を出たとは言え、私はお前の母親ですよ。一言も相談がなかったと言うのは——
「あの母上、相手は女性ではなく男性で」
「ハ、」
 と、母が息を吐いたまま再び硬直したのを見ながら、ジョシュアは果たしてどこまで真実を言うべきか悩んでいた。
 実のところ、「結婚」と言う報告自体が嘘に近いのだが、結果として外から見た分にはそうなるため、説明を簡略化するために結婚と言う言葉を用いている。
 轟音。
 夕方より天気が崩れると言う予報はあったが、カフェの外は雷鳴が轟いており、まるで世界の終わりのような光と雨風が吹き荒れている。
 ジョシュアは母から視線を外し、窓の外を眺めながら、今日のところは早々に切り上げて母を帰すべきだろうかと考えた。このまま母が帰れず、実家に泊めることになれば、実家で待たせている「相手」に大変な心労をかけることになるだろう。勿論ホテルをとってもいいのだが、母の満足するホテルを探す方が骨が折れる仕事だった。
「詳細が気になるのであれば後日にしませんか。今日は帰りましょう」
 ジョシュアの提案に、母は「それでは一体誰がロズフィールドを継ぐと言うのですか?」と震えた声でこぼす。
 椅子を立ち上がりかけていたジョシュアは、「その話はおじさんが家を継ぐ際に、おじさんの子に任せると決まったじゃありませんか」と小さくため息をつく。
「ご自身で仰った通り、あなたはもう一族とは関係がありません。僕は息子としてあなたにお伝えする義理があると思ったから報告したまでで、反対されても僕の考えは変わりませんし、母親に祝福して欲しいわけでもありません」
 席を立ったジョシュアに数秒遅れて、青い顔をした母がふらふらと歩を進める。カフェの外にジョシュアが顔を出すと、運転手が傘を持って車を降り、「送りましょうか?」とジョシュアに声をかけた。
 ジョシュアは「あちらに迎えが来ているので」と首を振り、傘を差し出された母に「お気をつけて」と声をかけると、足早に迎えの車へと走った。


「車を回すまで店で待っていればよかっただろう?」
 傘もなく濡れたまま車へ乗り込んできたジョシュアにぎょっとしながら、運転席の男が慌ててハンカチを取り出した。
「母さんと早く別れたくて考えが及ばなかった」
 ジョシュアはハンカチを受け取りつつ、濡れた上着を脱いで後部座席へ放る。ハンカチから微かにいい匂いがすることに眉を寄せながら、首の後ろや肩を拭いた。鼻先に彼の香水が残って妙な気分だった。
「タオルを持ってくれば良かったな」
 暖房をつけようとする男の手を止めて、「そんなに柔じゃないよ」と答えながら、ジョシュアは疲れたように深いため息をつく。母親と会った後は、いつだってひどく疲れる。
……こんな嘘をつく必要はなかったんじゃないか?」
 ライトが付き、男がアクセルを踏む。ハンドルを切りながらゆっくりと走り出した車中でジョシュアは「そうかもね」と雨でぼやけた窓の外へ視線を向けた。
「でも、あの人にはそれぐらいの嘘をつかないと効かないでしょ」
「だからって結婚だなんて」
「嫌?」
 運転席へ顔を向ければ、男は難しそうな顔で眉を顰めていた。
 ジョシュアは彼を見つめて、嫌だって言えばいいのに、と小さく溢した。


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