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ながひさありか
2023-09-04 21:19:39
1517文字
Public
FF16-JC
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今度会った時に教えるよ
現パロ・他人同士・運命とか言う言葉でナンパする男は碌でもないのでは? と思っているのに何故か話を聞いてしまう。
あなたは運命って信じる?
初めて会って寝た日にそんなことを言う男は、いくら顔と体の相性がよくても怖すぎる。ホテルを出たらさっき交換した連絡先はブロックして二度と会わないようにしよう。よかった、家から遠いバーまで遊びに来て。
そう判断するのが圧倒的に正しいと頭の隅ではわかっているのに、クライヴは「運命?」と男に尋ね返していた。
彼とは数時間前にバーで会ったばかりで、二、三杯付き合っているうちになんとなくそう言う雰囲気になり、別に今は特定の相手もいないのだし、とホテルに来てセックスをした。週末は大抵そうやって時間を潰しているのだが、クライヴにもどうしてこんなことをしているのか自分でもよくわからない。ただ、物心ついた時から何故か半身が欠けているような感覚がずっとあって、「誰か」を求めて探しているような気がしていた。
冷たい水のボトルを一口飲んでから、彼はクライヴの体に触れながら、「自分でもよくわからないんだけど、ずっと誰かを探している気がして」と笑う。
だからもしかすると、運命の相手を探しているのかも。
笑うと意外と子供っぽい顔になる男に、その感覚には覚えがあるな、とクライヴは考えていた。けれどもやっぱり「運命」なんて言葉は突拍子がなさすぎて、どう答えるのが正しいのかよくわからない。そんな言葉でナンパをしてもお前くらい顔が良ければ成功するのか? と今、まさに自分が彼とセックスしたことを思い出していると「電波だと思ってる?」と少しも気を悪くした様子もなく男が笑う。
まぁ、と答えつつ男の表情をじっと見つめていると、男は何かを確かめるようにクライヴの頬に手を伸ばし、ゆっくりと顔を顔を撫でてくる。
長い睫毛に縁取られた凍った湖のような薄い青色の瞳になんだかんだ見覚えがあるような、と思いながら、男の指に促されるままに唇を開いて、口付けを受け入れる。
唇と舌を触れ合わせて体を撫でられているうちに、だんだんと冷えた体に熱が戻ってくる。さっきまで男のそれが入っていた下半身が疼くような気がし、もう一度するか? と普段なら言わない言葉をキスの合間に口にした。男は少しだけ悩むように眉を寄せてから、笑って首を振る。
そうか、とあからさまに残念そうな声をあげたクライヴに、男は「また会ってくれる? 会って欲しいな」と手を握って、顔を覗き込みながら囁く。宥めるつもりなのかそれとも煽っているのかわからない触れるだけのキスを何度も繰り返す男に、もう一度してくれればいいのに、と思いながら、男の柔らかな声にどこか懐かしさを覚え、「もしかして、前にどこかで会ったことがあるか?」と口にしていた。
初対面の相手に運命を口にするのとどっちがマシだろう、と言ってしまってから気がついたが、男は目を見開き、ぱちぱちと瞬いてから「
…………
ないかも?」と揶揄うように言う。
その言い方はどう考えても会ったことがあるだろ、と思わずにはいられなかったが、クライヴの記憶の中にこの男の姿はなかった。もし以前この男に会ったことがあるのであれば、きっと忘れられなかっただろうと妙な確信があった。
「そういえばあんた、名前は?」
ホテルの前で別れる前に尋ねると、男は不思議そうに「さっき連絡先を教えたじゃないか」と首を傾げる。確かに男は《マルガラス》と名乗っていて、トークアプリにもそう表示されている。けれども、それが彼の本名でないことは何故かクライヴにはわかっていた。
「今度会った時に教えるよ。またね
——
クライヴ」
男は瞳を細めてしばらく考える素振りを見せてから、にっこり笑ってクライヴに手を振ると、背を向けて去っていった。
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