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ながひさありか
2023-07-10 10:30:51
1534文字
Public
FF16-JC
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水蜜桃と午睡
屋上でする昼寝は最高だって隠れ家の人が言ってたけど、クライヴ自身はあんまりしたことなさそう。あるんだろうか。
『シドならさっき屋上で見かけたけれど、お昼寝でもしているんじゃないかしら』
いつも何かしら慌ただしくしているクライヴの所在をガブが隠れ家で尋ねていると、いつの間にかそばにいたアスタがそう口にした。礼を言って屋上へ上がると、確かにベンチに腰掛けているクライヴの姿がある。
「おーい、クライ
……
っと」
呼びかけながら近づくと、ガブに気づいたクライヴがすっと唇の前に指を立てて、「なんだ?」と囁くような声で言った。
てっきり一人のように思えたが、鶏舎のそばのベンチに腰掛けていた彼の膝を枕にして、金髪の男が眠っている。優しく弟の髪に手を置いて撫でているクライヴに一瞬「邪魔して悪い」と言いそうになったが、「なんだそりゃ」と自分で思い直して耐える。
「ジョシュアが昼寝してたのか」
「昨晩も遅くまでハルポクラテスと文献を当たっていたらしい。会話の途中で眠たそうにしていたから、昼寝をしてもらってるんだ」
穏やかな笑みを浮かべて言うクライヴになんだか落ち着かない気分になりつつ、ガブは「相変わらず仲がよろしいことで」と肩をすくめた。
クライヴがジョシュアの《ナイト》だと言う話はジョシュアを隠れ家に連れ帰ってきたクライヴ自身から説明を受けていたが、ガブには騎士というものがよくわからない。勿論意味としてどんなものなのかは知っているが、それの重みについて真に理解することはできないかもしれないと感じている。
いくらクライヴの弟と言ってもお貴族様なんて好きになれるかどうかわかんないぞ、なんてはじめは思っていたのだが、流石彼の弟と言うべきか、ジョシュアは立ち振る舞いの丁寧さや口調の穏やかさであっという間に隠れ家で受け入れられていた。その一端に、クライヴが弟に対して殊更柔らかに接していたのが物珍しかったから、と言うのもあるだろう。
クライヴは五年付き合っても未だにあまり愛想はないが、時々は笑うようになったし、「死んではいないだけ」を体現したような暗い声をすることもなくなった。そんなクライヴの弟に対する態度は気心の知れたトルガルやジルに対するものとも少しだけ違っていて、それが彼らが兄弟だからなのか、はたまた守るべき主人と騎士だからなのかはガブにはわからない。
「俺になにか用があったんじゃないのか?」
青白い顔で眠っているジョシュアをぼーっと見下ろしていたガブに、クライヴに首を傾げる。
「ん? んー、まぁ、俺じゃなくてオットーがあるらしいんだが、
……
急ぎじゃないって言ってたし、ジョシュアが起きてからでいいだろ」
「そうか」
*
ジョシュア、と声をかけられて目を覚ますと、すでに陽の傾く時間になっていた。兄の膝の上から慌てて起き上がりつつ「ごめん兄さん、ちょっとのつもりだったのに」と謝罪するジョシュアに、クライヴは優しく微笑んだ。
「よく眠れたようでよかったよ」
少しは顔色が良くなったか、と疑問と確信の中間のような声を出しながら、クライヴがジョシュアの頬を撫でる。じっと優しい瞳で見つめてくる兄に気恥ずかしくなり、ジョシュアはふいと顔を逸らした。
「
……
兄さんいつも忙しそうなのに、大丈夫だったの」
「何人かは尋ねて来たが、急ぎの用じゃないと言ってたからな」
「
………………
何人か?」
クライヴのおっとりした言葉にジョシュアは眉を寄せたが、クライヴは特に気づかず、「これから確認するさ」とベンチを立ち、固まった関節を解くように体を伸ばす。
「兄さん、今度からは誰か来たら起こしていいからね。僕も昼寝をしないように気をつけるよ」
手のひらで顔を覆って肩を落とすジョシュアに不思議そうな顔をしながら、クライヴは屋上から階下へ降りて行った。
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