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古賀峰十一郎
2018-02-15 05:06:27
1301文字
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多伽羅華生糸オシオキ
キンギョロンパさんで2章クロをいただきました/一応モツでてる
暗くなったはずの世界がパッと明るくなる。
視界を取り戻した生糸はぬるりとした粘膜の感触と生暖かい何かの上にいることを把握した。まるで人間の体温のような、ような?否、それは人そのものだ。
豊満で、柔らかで、暖かくて、乳のようなにおいのする、仮面だけを身に着けた女たちの重なり合う上に生糸は座っていた。ぞわりと、背筋に冷たいものが伝う。
するりと、白く滑らかな、蛇のような女たちの腕が頬に伸びる。ぐちゃりと、艶かしく濡れた、熟れた実が潰れるような音が耳に届く。普通の男なら喜ぶべき光景だろう、しかし彼にとってそれは、自らを食い散らかさんとするおぞましい暴力の食指だ。
泳ぐように腕を振り回し、勢いよく床に転がりだせば容易くハエトリグサの叢は彼を手放した。これ幸いと、抜けた腰でどうにか前へ、前へ、怖い物の無い場所へと、怖いこわい恐いよともたついた足で逃げだす。
しかし絡まった足じゃあそう遠くへは行けないのもまた現実だ。簡単に彼を手放したハエトリグサの群れは同様に易く脚へと絡まった。曳かれ再びつんのめるも、しかし彼が口づけるは冷たい床でなく暖かで派手な布。
いつかの独特なテントの臭いが鼻をくすぐった気がした。ああ、嗚呼、僕はこれを知っている、忘れもしない、僕にとっての暴力の、恐怖の象徴だ。
足に力が入らない。柔らかく微笑む頬だけでは、深緑の髪とモノクロの仮面に隠された目は感情を伝えない。優しく腰を抱いて支える腕の意味が理解できない。脂汗が冷たい。口の端がひきつる。胃から何かこみあげてきそうだ。
なァ離してくれヨ、僕はもう小さい子供じゃないんダ、ねェ何とか言ってヨ。なんて、喚いて無理やり引き剥がそうとすればほら、軽い体は突き飛ばされて、アスモデウスの玉座に逆戻り。
がっちりと腕で腕を留められて、蚕は蜘蛛の巣を逃げ出せない。右頬に涙を描いたピエロが俄に取り出したナイフに喉の奥がひりつく。背に感じる硬い感触に意識を回す余裕すら霧散する。
『さぁ、悪い子を治すためにオペを始めなくちゃ』
下腹部に響く何かをかき消すように冷たいモノが腹をかすったと思えば次の瞬間にはベストがシャツごと切り裂かれた。
たすけて、と手を伸ばしたって誰にも届くわけがなく、
露わになった肌は夢みる処女のように真白く、そんな何も知らない胎を刃物で拓くのは赤子の手を捻るよりずっと楽で。
内臓を直接握られる感覚に、胃を絞られ腸を撫でられ肝臓に手を這わされるその感覚一つ一つに吐き気を催すも、何が出てくるわけじゃない。
熱くて鋭くて冷たくて鈍い痛みに、あーあーと白痴のように、いやいやと言葉も知らぬ子供のように、激しく首を振り体を捻るも、内側を掻き回す手は止まらない、止まるわけがない。
ぐちゃぐちゃ、ぐちゅぐちゅ、にちゃにちゃ
粘着質な音が耳にこびりついて取れなくなった頃、細い体がひときわ大きく痙攣してそれきり、動かなくなる。
白い肌に赤い腹、垂れた涎に汗で張り付いた髪。幻想を追った少年の、醜く穢れた殻だけが残された肉の山が、照明の落ちるその瞬間こちらを見て微笑んだ、そんな気がした。
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