古賀峰十一郎
2017-06-12 00:00:04
1361文字
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「今日のこの陽に祝福を」

誕生日おめでとう。三次創作なので細かいところには目を瞑っていただけると幸い。鳥籠2も頑張ってね、楽しみにしてます。
あ、タイトルは誤字じゃないです、一応。

「わぁっ!ねこちゃんだ!」
 色鮮やかな楽園の名を冠する箱庭の花畑、柔らかな日差しを甘やかな香りが彩るその場所を一層明るくするのは愛らしい少女の歓声だった。時刻は八つ時、子供たちが一日の中で最も心躍らせる特別な時間に、花畑の入口にほど近い場所に用意されたのは簡易的だが趣味のいいガーデンテーブルと絵本に出てくるような可愛らしいティーセット、そして本日の主役であるおやつ、生クリームを惜しげもなく乗せフランボワーズの仔猫の描かれた少し大きなフォンダンショコラだ。背の高い椅子に腰かけた少女はご機嫌に脚をぶらつかせ、給仕する青年はそれを優しげに見守りながらカップを差し出す。ふと、いつもより飾り立てられたそれに対し、少女の頭に疑問が浮かぶ。仔猫のようなその好奇心は留まることなく口をついて飛び出した。
「ところで、どうして今日はお外でおやつの準備してたの?」
「そうですね……今日は、特別な日ですから。」
「特別な日?」
 素直に鸚鵡返す言葉に青年はふわりと笑うと、まるで先生が黒板を指し示すように繊細なナイフを持った手を皿へ向ける。
「ええ、理由は分かりませんが、特別な日。祝福するべき日、なんだそうです。ですから、今日のお嬢様のおやつも少しばかり特別なのですよ。」
 そう言って青年がフォンダンショコラにナイフを入れると切り口からとろりと溢れたチョコレートソースからはふわりと薔薇が香り、少女は思わず微笑む、花より華やかな色に頬を染めて。
「わ、えへへ……なんだかちょっぴり大人になった気分だ……。」
「喜んでいただけたのでしたら、ここの薔薇も喜んでいるのでしょうね。どうぞ、生クリームが痛まないうちに召し上がってください。」
「うんっ!……あ、でも、もうちょっとだけ……ねえ、もうひとつお茶って用意できない?」
「もうひとつ、でございますか?」
「特別な日だからね、おめでとうって、乾杯したいの。」
「でも、」
 乾杯、という事はもう一人紅茶を飲む相手が必要になる。それが誰を言っているのかも分からないほど青年も鈍いわけではなかったが、だからこそ青年はその小さなわがままに眉根を下げるしかできないのだ。
「だって、特別な、おめでたい日なんでしょう?だったら、一緒にお祝いしたいの、今日くらいいいでしょう?」
……わかりました。少々お待ちください。」
 青年がぺこりと頭を下げると、少女は声を弾ませた。回れ右をするために上げられた彼の顔は困り顔だった。愛しい小さなレディのわがままに、やれやれと困ったように、それでも嬉しさが隠し切れないといった様子で、痛まない左手に小さな違和感を感じながら、花畑を、幸せな時間を追うように急かすように脚は踊った。

 それから少し後、歪ながらも半分に分けられたケーキを前に楽しげに笑いあう影がふたつ。
「じゃあ、乾杯!」
「乾杯。」
 今日は特別な日。だから、主人と従者がカップを鳴らし談笑しながら少し大きなチョコレートケーキを分け合って、兄妹のように日差しの下でお祝いをする事も、神様はきっと許してくれる。柔らかな風が吹いて、どこか遠くで小鳥の謳う讃美歌が響いている。きっと明日も、いや、いつまでもそれは響くのだろう。君へ福音を届けるために。君へありったけの祝福を届けるために。