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古賀峰十一郎
2017-01-03 23:24:28
2486文字
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グループ1、文字れとりかと民皆つたゑは『ハグしないと出られない部屋』に入ってしまいました。 40分以内に実行してください
お正月なので茶番を書きました
「
…
ここは、」
文字れとりかは目覚めた時、まだ夢の中にいるのだと錯覚した。なぜなら彼女が目覚めた場所は彼女の私室ではなく、真白い、一つの大きなディスプレイと重そうな扉、そして二つの簡易なベッドだけの置かれた小さな部屋だったからだ。
「寝ている間に婦女子をこんな場所ヘ運ばせるとはな、小生はこの学園を信じすぎていたようだ。兎角、まずは隣の呑気な阿呆を起こすことにするかな」
言うが早いか行動に移した文字は、隣人の布団を捲ると同時に顔を顰める。
「民皆殿か
…
最悪だな」
「
…
ぅ?
…
んー
…
?」
布団を奪われ、寒さに半分だけ覚醒したような民皆つたゑは心もとなさげに自身の寝ている隣をまさぐる。こんな異常な状況下でよくもまだ眠るつもりでいられるものだ、文字は呆れを通り越して半ば感心するほどだったが、しかしながら状況のハッキリしない以上戦力は多い方が良い。早いところ目を覚ましてもらおうと腕を引こうとしたその時であった。
「まくら
…
」
「ぎぃやぁぁぁあ!!!」
恐らく民皆が先程から探していたのはお気に入りの抱き枕か何かだったのだろう、がばと布団へ引きずり込まれた文字は奇声をあげて手をあげる。なかなかにいい音を頬で鳴らし、民皆はやっと意識のはっきりした様子だった。
「
…
誰かと思ったら時代錯誤な文豪様か。まあ、あの地味子には夜這いなんぞする勇気もないだろうがな」
「誰が夜這いだ自意識過剰も甚だしい。生憎と小生は貴殿のような三下をそのような対象とは捉えられんでな、また虫ケラを脱したらお声かけ願いたいね」
「あっそ
…
で?ここはなんだい?」
どこまでも呑気な民皆に、呆れたように肩をすくめると文字は役目を終えたとばかりに自分の寝ていたベッドへ腰掛ける。
「先刻までぐぅすかと呑気にしていた人間の台詞とは思えんな
…
。小生もこの部屋についてはまだ知らん、これから調べるところだ」
「はっ!じゃあさっさとあの扉でも開けてしまえばいいじゃないか!愚鈍だな、その袴は何のためだ」
「あの手の罠のありそうな扉を無理に開くのは、貴殿の役目だろう?三下が」
「なんだよ、先に起きていたくせにその程度も働いてないのか。怠け者め」
「その言葉そっくりそのままお返しするよ」
「は?意味わかんないんだけど」
「はん?そんなおつむで仕事が務まるとは楽な世界であるな?」
これ以上口を開けばレベルの低い単語が口をつく、そんなプライドを傷つけることができるかと睨み合う2人のベクトルを、無理矢理引っ張りこんだのは扉の上のディスプレイだった。
「仲睦まじきことは良きかな〜ってヤツぅ???」
陽気なファンファーレに悪意を煮詰めたような機会音声、痛めそうな勢いで捻った首筋を嫌な汗が伝う。
「!!」
「まったお前の仕業か性悪熊!!!」
「はー???なーに言ってるか聞っこえっませーん!なぜならこれは録画だからねぇ!」
「お前これ絶対聴こえてるだろ!!」
「聞こえてないったら聞こえてなーい!さて、今回はある条件を満たさないと出られない部屋にオマイラを閉じ込めてみたよー!うぷぷぷ!」
「ぐっ、何のために
…
!」
「何の為???そんなこと分かりきってるでしょ???そ、れ、は〜!」
「どうせまた絶望がどうとか言うんだろ
…
」
「新年の茶番でーーーーーす!!!!」
おめでたいものを詰め込んだような画像に切り替わるディスプレイに、文字はぽかんと口を開け、民皆は憤りが限界を越えたようだ。
「は?」
「チッ!!何が条件ださっさと帰せゴミぐるみ!!」
「まあまあそう焦らない焦らない、すぐに条件は教えてあげるから〜!ディスプレイに注目〜!」
『40分以内にハグをすること』
あのクマの出すお題だ、五体不満足もあり得うるだろうと飲み込んだ唾はあまりにもあっさりと簡単なお題に詰まる。
「は?」
「さぁ〜!それではスタート!ちなみに、時間を過ぎたり無理矢理部屋から出ればオシオキがまってるからね〜うぷぷぷぷ〜!!」
ーーブツン。流れていたはずのBGMはいつの間にか消え、残されたのはディスプレイに映るカウントダウンのみ。
「
…
消えたな」
「おい、書生!」
「どうにかして他に出る方法は無いものか
…
」
「無視してんじゃねぇぞガキ!」
「
…
小生は嫌だぞ。貴殿のような人間と接触すれば格が落ちる」
「何のだよ!!ていうかこんな時じゃなきゃこっちだって願い下げだねこんな硬そうな幼児体型!!」
「は!あたかも年上の女性と抱擁した経験のあるような発言は一層童貞臭に繋がるぞ?それとも民皆殿は高校生にもなってママとおやすみのハグが無くちゃ眠れまちぇ〜んなどと抜かすタイプか?」
2人の才能を鑑みれば拙い罵りに、それに対して顔を真っ赤に憤る民皆もレベルの低いことこの上ないが、それを指摘する他人はここにはいない。
「ば、ば、ばバカにするなよ!その程度の経験なんて蝶ネクタイのコレクション以上にあるわ!」
「ふん!ママの件は反論出来んのか!」
「そういう意味じゃない!!そもそも、ママはずっといないんだよ!!」
「
…
!は、あはあそういえば貴殿の父上は
…
そうかそうか逃げ、」
文字の言葉が詰まったのは、単に絞められた襟で息が苦しくなったからではなかった。振り上げられた民皆の腕が、力無く体の横に落ちる。それを見てまだ察せないほど、文字もまた幸せな人生は歩んできてはいなかった。
「これ以上家族を貶めるような発言は、たとえ女でも許さないぞ
…
ママは
…
ママはパパを捨てたわけじゃ
…
!捨てるわけがないだろう!!」
「
…
すまなかった。貴殿の触れてはならん場所に小生は触れた
…
あ、謝るからこれを使え」
「ハンカチ
…
」
「この年の男子がそんなに泣くのはみっともないからな」
頬に当てた柔らかい絹には、丁寧に名前が刺繍されている。そこそこに使い込まれたそれは、大切な思い出を物語ったのかもしれない。
「
…
洗って返すよ」
「ここを出たらな
…
」
「そうだね」
文字れとりか&民皆つたゑペア
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