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出口
2023-08-19 13:46:16
5164文字
Public
原作軸(五悠)
「『結局何だったの?』で終わりそうだな…とか思ってた。」
何となくで五条先生と付き合ってはみたものの、3ヶ月経っても恋人感ないな〜ってなってる悠仁の話。
※ご都合呪い由来のモブ♂→悠仁あります
tetra toxic
五条先生から、
「僕と付き合ってみる?」
言われたその言葉は本当にごく軽いものだった。
告白なんて雰囲気じゃなかったし、どちらかというとからかわれてるみたいな口調。たぶん悪い意味で軽薄とか言われるいつもの五条先生のノリ。
しかもその直前に観ていた映画の途中で、主人公がヒロインじゃない女の子に言われた言葉をもじってた。
どしたの? 突然
……
って戸惑ったのは、そんな軽いノリなのに落とされる先生の視線に思わず笑いが止まっちゃったから。
それも真剣なってヤツでも無かったんだけど、アイマスクの下の瞳はいつも通り見えないのに視線は感じた。
「うなずいて、早く」
穏やかに促され、うなずいたのも訳わかんなかったけど、満足そうな笑みを浮かべた五条先生がまた映画の続きを観始めたからそれ以上何も訊けなくなった。
映画を観るだけ見終わって、まだ任務あるって出掛けて行く五条先生に、
「さっきの本当?」
聞いたら、
「うん」
って返ってきた。
そしてア然としてた俺に、
「本気だよ」
先生は言ったけど、やっぱりそれ以上は何も聞けずじまいだった。
「付き合うって何するの!?」
急な展開にやっと頭追っついた時には俺は1人で叫んでて、なんか流されてよく分からないこと始めちゃったなあ? くらいに思ってた。
みんなに内緒でこっそりとした遊びみたいなものだろうか? って、とても真剣交際始めます! ってノリじゃないのは分かってたけど。
恋人同士のやることって言ったら、あんなことやこんなこと
……
って俺だってそれなりに想像はする。それでも五条先生は先生で、俺は先生の生徒だからガチで妙なことにはならないんだろうけど、デートくらいはするんだろうか? って。
だからそれなりに俺もソワソワとかしちゃって、先生と2人きりになる時は変に意識もしちゃってた。
でもさ、あれから五条先生と恋人らしいこととか特に何もしてないし、今まで通りだと思う。
そりゃ同じ担任生徒でも伏黒や釘崎に比べるとちょっとは距離近いし話す機会も多かったけど、それは今までもそうだったし。きっとこれからもそう。
「付き合うとは?
……
つか、俺って本当に先生の恋人になったのか?」
なんて、言い出しっぺは先生なのに俺の方から思うのは何だか変じゃね? とか思ってたけど、別に変なこと期待してたとかじゃない。そのはず。
結局俺もソワソワしてたのは最初だけで、すぐに付き合うとか恋人とかいう話なんて無かったかのように、フツーの教師と教え子やってた。
だけど時々
……
本当に時々だけど、今までとちょっと違うこともある。
出張に行った五条先生がわざわざ寮の俺の部屋に「ただいま」って言いに来たり。それは、今までは訪ねて来なかったような夜遅い時間になっても構わなくなっていたり。そんな時は俺にだけ買ってきてくれたって言うお土産をこっそり2人で食べたり。2人きりの時はアイマスクじゃなくサングラス姿で会うことが多くなったな、って感じていたり。オフの日とかにも、俺だけご飯食べに連れ出されることもあったし、そんな時は珍しく先生も私服だったり。
今まで無かったことも確かに増えていた。
でもこれが恋人の距離? って考えたらちょっと良く分からない。
出かけた先で「こっち」って促しながら手を繋がれたことはあったけど、それも特別な意味とかなくただのスキンシップと、はぐれないように
……
くらいにしか思えなかった。
軽いハグとかするのも前からあったし、これも特別にギュッてされたりとかそんな空気でもない。
キスとか頬に軽くさえされたことないし、遅い時間に部屋に来ても少ししたら自分の部屋に戻ってっちゃうから、添い寝すらすることはなかった。
やっぱ先生、俺と付き合うとか言ったこと忘れてるか、教師生徒よりもうちょっと砕けた友達みたいな関係で遊びたかっただけかな? ってのが俺の落ち着いた結論。
じゃあ俺は? 俺は先生のこと好きか? もちろん恋人みたいな対象として
――
って自問してみても、元々の恋愛対象が女の子だし。よく分かんねえ。
もし五条先生が彼氏みたいに振る舞って来たら、この先も本当に付き合い続けられるかどうかが分かって来るかな? って思ってたくらいで。
3か月経ってもやっぱり恋愛感情とか
……
たぶん無いかな? ってなってる。
とにかく、少しくらいは仲良くなったけど恋人って感じじゃないしな~~
……
ってなってるし、高専の他のメンツにも言ってないから、「結局何だったの?」で終わりそうだな
……
とか思ってるのが正直なところだった。
◇
そうこうしてたある日、任務先で俺はトチった!
避難が間に合わなかったのかうっかり帳の中に残ってしまっていた非術師の男性が、俺の祓い損ねた呪霊の呪いを被っちゃって、その人が俺のこと好きになってしまう呪いにかかってしまったらしい!
どうやら俺は、彼の恋人だと認識されてしまったようなんだよね。
帳を上げて補助監督さんと合流して、様子のおかしい彼のこと説明して。
解呪できる人に来てもらうまで待ってた公園のベンチでず~っと手を握られてたけど、自分のミスのせいだしそれも「嫌」とは言えないよね。「まあ、手を繋いでるだけだし
……
」って苦笑いしてたくらい。
何となく一瞬だけ先生の顔がよぎったけど、先生と手を繋いでた時はこんなに時間長く感じなかったな
……
とか思ったのに、
――
いやいや、初対面の人だもん! こんなもんだって!
ってつい手を握り返しちゃったら、その人に腰抱かれて手は握り直されたかと思ったら、近くに補助監督さん居るのも構わず顔近づけられたのに、
――
えっ!? え!? ひょっとして
……
このままいくとキスしちゃう!?
焦りながらも俺、固まっちゃってた。
その瞬間だったと思う。急に急に後ろからバリッて剥がされるのような勢いで引かれたかと思ったら
――
そのまま横抱きに軽々と抱き上げられていた。気づけば俺は、彼から奪われるよう先生の腕の中に居て、
「先生!?」
びっくりして思わず五条先生に抱きついちゃいながら、めっちゃドキドキしてて、
「この不愉快な呪いは秒で祓うから、ちょっと待っててね」
抱きしめるみたいに腕に力込めて、頬にキスされるんじゃ
……
って思うほど近づけられた耳元で唸るよう低く言われるのにはうなずいたけど、地面に降ろされたとき足に力入らなくなってて。
先生の呪力に当てられたんだろうか? って見上げたら、アイマスク越しだったけど何となく気まずそうな顔したように見えた先生と目があって、でもそらされて
――
本当に秒で非術師の彼の解呪を終えた。
「解呪できる人って先生だったんだ?」
情け無いほど力入らないまま地べたに座り込んだまま、呆気にとられた状態で呟いた俺は、再び先生の手で軽く掬い上げるよう抱き抱えられて誰も居なくなったベンチに下ろされる。
「俺のことこんな軽く持ち上げられんのさすが先生だな、ははっ、すげぇ
……
」
笑ってしまいながら言ったら、
「変なことされなかった?
――
いや、されたよね? 手を握られてた」
覆い被さるみたいな角度から尋ねられながら、さっきまで知らない人の体温感じてた手を先生に握られて、
「腰も抱かれてたでしょ? いやらしい手で抱き寄せられてた」
隣に掛けた先生の腰がくっつくくらいぴたりと寄り添われたかと思ったら、今度は先生の手に腰抱かれた瞬間
――
ゾクゾクッて肌がざわめくのに、俺の身体は思わず飛び上がった。さっき他の人に触れられた時は確かに何でも無かったのに、先生の触れてくる手つきにゾワゾワ♡ させられるのにはただただ戸惑いながら見上げたら、覆いかぶさる影で視界はいっぱいになってた。
俺の目に先生のことしか見えなくさせられた状態で、
「キスは、されてないよね?」
唇に指先で触れられながら聞かれる。真っ直ぐに刺さる視線が熱いのはアイマスク越しでも分かるくらいで。思わず固まってしまっていたら、
「誰にもさせてないよね?」
真剣な声で届いたのにまたビクッ! てしてから、何度かうなずいたら、
「良かった
……
僕の恋人に手を出したら、非術師だって殺してた」
やっと表情や声はゆるめてくれたけど、言ってること物騒過ぎるのに、
「大げさ
……
」
緊張感を誤魔化すよう軽く言いかけたら、
「大げさじゃないよ、悠仁は爪の先までも髪の毛の先までも、全部、僕のものなんだから」
ちょっと拗ねるように、だけど言い聞かせるよう言われたかと思うと、絡められた指先にキスされて。
俺は今度こそ「ヒェッ!」て声に出ちゃいながら、また足が震えて力抜けちゃった。
その日の任務を全部終わらせた五条先生が、改めて俺の部屋に来た時にはもうすっかり夜になってた。
俺の顔を見るなりアイマスクを外した先生は、らしくもなくバツの悪そうな顔をして見せた。
先生が言うには
――
ただ単に、
「欲望のまま触れたら抑えがきかなくやり過ぎちゃいそうだし、悠仁がまだ僕のこと恋愛の意味で好きになってくれてる訳じゃないってのは分かってたから
……
今はまだ少しずつ距離を縮めていこう
……
って長期戦覚悟してた」
だけの先生が、何の認識もなかったはずの初対面の男にされるままになってるように見えた俺の姿に我慢できなくなった
――
って。
つまり先生は、俺と恋人になって本当は浮かれてたし、時間さえあれば顔を見に来たし、まめまめしくプレゼントするがごとくお土産まで持って来てたってこと。
本当はもっと密着したハグだってしたかったし、キスも、大人のキスもしたかった。俺とイチャイチャしたいの我慢して、ずっと大人らしく振る舞ってただけだったって暴露した!
俺が恋愛の意味で好きになるまでって先生は言うけど、むしろそれっぽい雰囲気感じてなかった俺の思考と結論が逆いってたの正直に話したら愕然としていた。
「
……
嘘でしょ?」
って呟いてたけど、単純な俺にとっちゃいかにもそれっぽい恋人同士のやりとりの方が『意識』させるのには有効だったよ、ってやつ。
先生に掴まれた俺の手ビシャビシャになってたけど、これって俺の手汗なのか先生のなのか分からない。
五条先生は汗とかかかなそうだから、やっぱ俺のか。心なしか顔も熱いし、なんだったら耳まで熱い。
「先生とチューとかすんの、嫌じゃないよ」
先生の手の中でモゾリと指先動いちゃいながら照れ臭く言ったら、汗ばんだ両手をまたギュウと握られた。
「じゃあ、悠仁からキスしてくれる?」
ええっ? 俺から!? って焦ったけど、嫌じゃないと言った手前「できません」とは言えない。そりゃ嫌な訳じゃないけど、照れ臭いし緊張するじゃん? される分には先生のタイミングを受け止めるだけだけど
……
俺から行くのは初心者的に勇気いる。
――
しかもあの五条先生だよ!?
キス待ち顔すら圧の強い先生の眼差しに、
「目、つむってくれる?」
無下限呪術解いてくれてるのイヤってほど手のひらに感じてるのに、心理的な無限ハンパない。だからお願いしたら、先生は黙って目を閉じた。
う~ん、目を閉じても迫力あるなあ。なんつーか、先生の顔って整いすぎてんだよな。ただでもキレイな顔なのに、六眼で、あの呪力で。
今さらだけど俺、とんでもない人を恋人にしちゃった気がする。
だけど、無下限解いて、目を閉じて。
そんなの許されてるって状況に、ハンパなくくすぐられる特別感がたまんないってなってる俺も居る。
この唇に触れられること、唯一許されてるのがもしかして俺だけじゃ無いんだろうか? って自意識過剰っぽい優越感も。
そしたら俺はもう止まんなくて、ドキドキは忙しなく感じてたけど無防備に晒された先生の唇にキスしてた。ハッとするようにすぐ離したけど、気づくともう一度押し当ててた。
「
……
ッ」
微かな息が届いて、3度目にくっついた唇は先生から。先生の唇が俺のに強く押し付けられて、舐められた。反射的に閉じていた目を開けたら、視界いっぱいに澄んだ青が見えた。すぐに角度を変えられたから逸れたけど、『うわ、食われる!』って思って。それでも俺は逃げたりせずに、覆い被さってくる先生の口に食われるまま。
逆上せたようぼーっとした頭で繋いだ手を知覚した時、俺から指先を絡めるよう握ってた。
口の中を舐めたベロが出ていって、唇を啄むよう何度をキスされて、
「悠仁」
名前を呼ばれただけで、好きだよと言われた気がした。
そうして俺は、たぶん本当の意味で
――
五条先生の恋人となった俺を自覚した。
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